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もっと稼ぐためには

 2億円を稼ぎ出すにはどうするべきか。

 もちろんサイレントストーン狩りでは到底間に合わない。一日に600万円のペースで稼がなくてはならない以上、もっと効率の良い狩場を探さなくてはならない。


 凜音に威勢よく『俺がなんとかする』なんて、言わなきゃ良かったと後悔しはじめていたが、言った以上はやっぱりなしというわけにもいかない。


(メタトロン、どうすれば良いと思う?)


<他のダンジョンから手探りで効率の良い狩場を探す他に無いでしょう。運が良ければ、サイレントストーンのような魔物を見つけることも可能かもしれません>


(その可能性は、どれくらいある?)


<なんとも言えませんが……確率は低いでしょう。サイレントストーンの発見は奇跡的だったと考えるのが妥当かと>


(……そうか。でも、もしも現代人が誰も入ったことの無いダンジョンなら?)


<まさか、古文書に記されていた『禁区』に侵入するつもりですか?>


(そうだ)


<禁区が危険だとおっしゃったのは、二宮様ではございませんか?>


(分かってる。けど、誰も知らないダンジョンなら、何か途方もない価値のあるものが眠っているかもしれないだろ?)


<二宮様、無礼を承知で忠告させて頂きますが、凜音様のお知り合いのために自らの命を掛けるのは愚行に他なりません>


(命を掛ける気はない。メタトロン、お前がサポートしてくれれば、命を落とすようなことは無いと信じてるからだ)


 俺がはっきり断言すると、メタトロンは少しの間黙り込んで、こう答えた。


<賢治様……わかりました。あなた様の命は私が保証致します。ただし、危険を感じたら即座に撤退することを約束していただけますか?>


(もちろん。ありがとう、メタトロン)


@


 現在の地図データ比較して見ると、禁区と呼ばれるダンジョンの一つは、埼玉県の西にあることが分かった。そしてどうやら、神社の境内にダンジョンの入口があるらしい。


 そして凜音にはリスクを十分に説明した上で、同行してもらうことにした。

 なんせ、勝手に俺が命がけで戦ったりしたら、後で文句を言われるだろうからだ。それに、戦力としては、俺よりも凜音のほうが期待できるというところもある。

 

 目的地の神社の名前は忌呪怨念神社。あからさまにやばい名前にたがわず、外観もおどろおどろしい。神社は山の(ふもと)にあって、誰にも手入れされていないらしく、鳥居は黒ずんでいた。


「すみませんっス、こんな危険なことを手伝わせて」


 鳥居の前で、凜音が突然頭を下げた。


「良いんだよ。どうせ俺も新しい狩場を探したかったし」


「……でも、幹人のことが無ければ、こんなリスクを背負ったりはしなかったっスよね?」


「それは……そうだな」


「やっぱり、ウチが一人で禁区に行くっスよ」


「一人じゃダメだ。メタトロンのサポートもできなくなる」


「死ぬかもしれないことに、巻き込めないっス」


 短い付き合いだが、凜音は頑固だということはもう十分知っている。

 だから普段なら彼女の言葉に逆らうつもりは無いが……今回ばかりは承知するわけにはいかない。 


「だめだ、絶対に俺も行く」


 俺が断言すると、凜音は納得した様子で頷いた。

 それに、心なしか顔が少し赤くなっている。


「幹人が治ったら、絶対に二宮先輩のことを言って聞かせるっス」


「ぜひ、そうしてくれ」

 

 そして、ようやく俺たちは鳥居をくぐった。

 首の取れた狛犬二匹が俺たちを迎えてくれたが、


<次元の歪みを確認しました。ダンジョンへのゲートです>


(どこだ?)


<本殿らしき建物の地下です。地下への入り口は、建物の床下にあるようです>


(分かった)


 手入れがされていない以上、当然のことながら本殿もまたボロボロだった。

 柱は腐って、屋根には枯れ葉が降り積もっている。

 俺の一歩後ろで、凜音も顔を強張(こわば)らせている。


「行こう」


「……了解っス」


 本殿の畳の下に、地下への通路があった。そして階段を降ると、恐ろしく古い時代につくられたことのわかる、寂れた(やしろ)があった。


<ゲートはこの中です>


 メタトロンの言う通り、社の戸を開くと、そこには光の渦があった。

 俺と凜音は小さく頷きあってから、そのゲートに足を踏み入れた。

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