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凜音の願い

 結魂を終えた後、少し物事を性急に進めすぎたかもしれないな。と、後悔していたが、凜音は俺のしたことをさほど重要視していないようで、直ぐに順応してくれた。


<凜音様、右手前の岩がサイレントストーンです>


「了解っす!」


 凜音がメタトロンの声を聞けるようになったことで、俺がわざわざ口で指示を出さなくても良くなった。当然、それで俺の手が空いたので、凜音の狩りと並行して俺もサイレントストーン狩りを出来るようになった。


 そして狩りを始めて五分ほどで、別のメリットが効果を示した。


「おおっ! 夢にまで見たマナトリウムっす!」


 凜音が地面で輝いているマナトリウムを見て、驚きの声をあげた。


 運の平均化がきっちり作用しているらしく、今まではさっぱりドロップしなかったマナトリウムがドロップするようになったらしい。


 まあ、その分俺が倒した際にサイレントストーンがマナトリウムがドロップする確率は下がっているが、別にそれはどうでもいい。


「良かったな、凜音」

 

「先輩のおかげっス! 一生ついていくっス!」


 凜音も嬉しそうだ。これなら恩義せがましい態度を取ること無く凜音の懐に金が入るし、良かった良かっただな。結魂バンザイだ。と、そう思った時、


幹人(みきと)、あと少しだけ待ってて)


 凜音の心の声が漏れ聞こえてきた。


 幹人ってやつが何者なのかは気になったが、心の中を覗き見てしまった罪悪感から、俺はそのことを質問せずに、そのまま狩りを続けた。



「いや~大量っス」

 

「だな」


 昼過ぎになって俺たちは狩りを終え、仲良く3つずつマナトリウムの結晶を集めていた。


 そして狩りを終えたあと、結魂によって、凜音のステータスポイントとスキルポイントの割り振りが可能になっていることも判明した。


 凜音はその割り振りを俺にまかせてくれたので、俺はさらにそれをメタトロンに任せた。


 結果、ステータスポイントは相変わらず素早さに全振りし、スキルポイントは防御的なものを重視して上げることになった。ちなみに彼女が取得したスキルは『煙幕LV3』と『変わり身LV5』だった。

 

 そしてダンジョンを後にすると、マナトリウムを換金するために、俺と凜音は一緒に宝石店に向かった。が……


「マナトリウムの取引価格が暴落した?」


「そうです。ダンジョンでマナトリウムが発掘されるようになったので、取引相場が急落してしまったんですよ。グラム4000円が、今じゃ500円ですよ。だから今は売らないで、値段がいくらか戻るまで待った方が良いかと思いますよ」


「そんな……」

 これじゃ稼ぎが今までの八分の1じゃないか……まあ、それでも1日で15万円の稼ぎならそう悪くないが……


「ついてないっス……」

 凜音の顔に明らかな落胆の色が見えた。がっかりと肩を落としているし、顔も暗いし、本当にひどく落ち込んでいるらしい。

「……二宮先輩、ウチ、ちょっと用事があるんでこれで失礼しますっス」


「そうか、また明日な」

 俺は凜音の小さな背中を見送ってから、会社に戻った。

 ただ、その夜は凜音のがっかりした顔が頭から離れなかった。

  

 ……よく考えてみると、彼女はなんとしても金が必要だからダンジョン協会にやってきたらしいし、もしかすると、のっぴきならない理由があるのかもしれない。そうじゃなきゃ、あそこまで落胆する理由はない。


 そう思って、翌日ダンジョン協会で凜音と会った時、話を切り出した。


「いくら必要なんだ?」


「……え?」


「金が必要だからダンジョン協会に来たんだろ? 目標があるなら、聞いておきたくてな」


 俺が言うと、彼女は気まずそうにこう言った。


「……2億っス」


「2億!?」


 2億円って、普通のサラリーマンの生涯年収と同じくらいだ。当然、芸能人やらスポーツ選手でも無い限り、短期的に稼ぐのは不可能な金額だ。


「いつまでに必要なんだ?」


「可能な限りはやくっス。できれば、1ヶ月以内に」


 ……1ヶ月で2億。1日15万じゃ、とてもじゃないが間に合わないな。

 

「どうしてそんな金が必要なんだ」


「幹人のためっス」

 

 ……”幹人”か。


「幹人っていうのは?」


「ウチにとって一番大切な存在っス。けど、今は心臓の病気で入院していて……」

 凜音の顔が今まで見たことの無い表情になった。俺は、なんと言って良いのか分からなくて、しばらく彼女の側に棒立ちしていた。


 だが、彼女の暗い顔を見ているうちに、なんだか我慢できなくなって、口が勝手に動いた。


「そうか、分かった。俺がなんとかする」

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