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凜音とケッコン

 結局、今日もサイレントストーン狩りをすることにした。

 他の狩場を開拓したいのはやまやまだが、大きなリスクを負って他のダンジョンを開拓するのは、もう少しくらい後でもいいだろう。死んだら元も子もないしな。


 そう思って『小さなダンジョン』にタクシーで移動している最中のこと。メタトロンが急に話を切りだした。


<二宮様、先程得たデータの中で、試してみたいことがあるのですが>


(なんだ?)

 

<昔、人々がダンジョンで戦う際に、『結魂(けっこん)』という技能を駆使していたようなのです。それを使えば、より効率的に稼ぐことが可能かもしれません>


(……ケッコン? なんだか、意味深な響きのワードだな。どういうものなんだ?)


<複数人でダンジョンに挑む際に使われていた儀式のようです。文字通り、互いの魂を接続することによって、ダンジョン内で様々な恩恵を得ることができるそうです。その恩恵の一つに『結魂した者同士は運が平均化される』というものがあります>


(へー……てことは、凜音の負運と俺の幸運が平均化されて、普通になるってことか)


<どうやらそのようです。他には『獲得マナの均等分配』『思念会話』等が可能になりますので試してみてはいかがでしょう>


(解除は可能なのか?)


<若干面倒な手順を踏む必要がありますが、可能です>

 

 若干面倒ってのは気になるが……


(分かった、試してみよう)


<今からその方法を説明致しますので、その通りに行動してください。

 はじめに手のひらの生命線を切ってください。凜音さんも同様に生命線を切って、そのまま手を合わせて頂ければ、それ以降の処理は私の方で進めます>


(右手? 左手?)


<どちらでも構いません>


(じゃあ左手にするか)


 俺はそう決めて、タクシーから降りてダンジョンに入ったところで、凜音に声を掛けた。


「凜音、剣を貸してくれないか?」


「……? 良いっすけど、何に使うんスか?」

 凜音は首をかしげながら、俺に剣を渡してくれた。


「ケッコンするんだ」

 言いながら、俺は自分の左手に剣の刃を押し付けた。そして左手を動かして、切り傷を作る。

 するとすぐに血が滲み出した。少し深く切りすぎたみたいで、ポタポタと地面に血が落ちる。


「な、何を……?」


「ちょっと手を借りるぞ」


「え? ちょっ! 何を……イタッ!」

 凜音の左手の生命線を、同じように切った。女の子の手に傷を残すわけにいかないから、なるべく浅くて、ほとんど血が出てこないくらいの傷を作ると、俺の左手と彼女の左手をぴったり合わせた。


(よし、これで良いか? メタトロン)


<問題ありません。では、結魂の儀を執り行います>


 メタトロンのがそう言うと同時に、俺と凜音の体がわずかに光った。同時に、奇妙な暖かさが自分の中に流れ込んでくるのも感じる。奇妙な感覚だが、気分は悪くない。


(……で、これで完了か?)


<はい。結魂は無事に完了しました>

 

(ちょっと、頭の中で声がするんスけど!? 二宮先輩! 何したんスか!?)

 ……あれ? 頭の中に凜音の声が聞こえてくるな。

 ああ、そういえばさっきメタトロンが『思念会話』が可能になるとか言ってたけど、こういうことか。


(ああ、それはだな)


<凜音様、あなたと二宮様はたった今互いの魂を接続するしたのです。その影響で、思念会話が可能となりました>


(え? アンタ誰っスか?)


 あれ? 凜音にもメタトロンの声が聞こえるようになったのか。

 となると話が早いな。


(こいつはメタトロン。俺のユニークスキルだよ。何が起きたか詳しく説明してやってくれ)


<了解いたしました>


 そしてメタトロンが、たった今行った結魂の儀式について、混乱している凜音に説明をした。


(……よくわかんないっスけど、わかりましたっす)

 話を聞き終えると、凜音の声に落ち着きが戻った。

 やっぱり聞き分けが良いな、凜音。

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