1話
短いですがどうぞ。よろしくお願いします。
朝早くから一人の少年が、学校の廊下に立っていた。
少年は廊下の掲示板に目を向けていた。
「総合成績、11位か」
上から11番目の所に、ユウと自分の名前が書かれていた。
ユウは溜息をついた。いつも同じ順位なのだ。
入学してからずっと。変動しない自分の順位。
ユウ自体、上がらない、変化しない順位の原因はわかっていた。
歴史関係のテストのせいだ。
国語に数学までは高得点を取っている。
だが、どうしても歴史とモンスターについてのテストで点数を落としてしまっていた。
勉強はしている。だが、どうしてもこれじゃないっというモヤモヤが邪魔して集中できないのだ。
そして、そのモヤモヤも説明できなければ、答えることも表現することもできない。
何となく、違うとしか言えない。
誰かにこのことを言ったことはない。
誰も信じてもらえないだろうから。
ユウは次に、順位の隣の点数を見る。
ユウの点数は、900点。
自分の点数を確認した後、10位の人の点数を見る。
920点。
20点の点差があった。
「20点か。遠いな。……ま、次頑張るか」
立ち去る前に、少年は1位が誰なのかと点数をちらりと見る。
ルイーズ。点数は1000点で満点だった。
「流石だな」
不動の1位。入学してから頂点に立ち続ける女性だ。
1年飛び級して入っており、年は一個しただ。
それで、1位を取り続けている。天才と呼ばれるのも頷ける。
周りの人からの評価も絶大だ。
容姿端麗で気さくな人だという。
いうことなしの完璧な女性らしい。
ユウは用事が済んだため、自分のクラスに戻ろうクラスの方に体を向けた時、後ろから声が聞こえた。
「おはよう。自分の順位の確認ですか?」
透き通る綺麗な声だった。
ここにいるのは少年一人。少年はすぐに誰に声をかけているのか気が付く。
ユウは振り返り、声の主を見やる。
そこには、黒目黒髪の麗しい女性が立っていた。
ユウと同じ目の色、髪色をしている。
「ああ、そうなんだ」
「で、順位に変動はありましたか? 11位さん?」
茶化すよな響きを含まれた声音だ。
それに、ユウは肩を竦めてみせた。
「ルイーズあんたも自分の順位の確認か?」
「そんな感じね。ま、結果はわかっているのだけどね」
ルイーズは自分の長い髪を横にかきあげる。
その仕草が様になっていて、ユウは少し見惚れる。
「……凄い自信だな」
「ん? なんか言った?」
いや、っといってユウは首を横に振る。
ルイーズは掲示板の方に目をやる。
「やっぱり今回も同じ順位なのね」
「……うるせぇ」
目を反らす。
ルイーズは総合成績の方から目を離し、そのあと隣の方に目をやる。
「実技の方は高いのにね」
「お前には負けるよ。ほんと」
「惜しいじゃない。こっちは2位よ」
ユウの実技の成績に目をやる。
ユウの名前はルイーズが言った通り、上から2番目にあった。
1番は言うまでもない。
1位と2位の点差は僅差。
だが、この僅差が縮まらない。
「前回と何ら変わらない」
これまでと変わらない。自分の順位。
総合順位も実技の順位も毎回同じ。
もはや才能なのではと思ってしまう。
「そうね。変わらないわね。次は勝てるといいわね。”補欠”さん」
そう言い残して自分の教室へと戻っていった。
「”補欠”ね」
ユウもまた、ルイーズに言われたことを繰り替えし、自分の教室に戻っていった。