プロローグ:夢
初めまして。
どうぞよろしくお願いします。
また、同じ夢を見た。
見た。ではないか。見ているが正しい気がする。
何もない真っ白な世界に、ポツンと一人立っている。
立っているのかすら曖昧だ。浮いているのかもしれないし、座っているのかもしれない。
もしかしたら、体という概念すら、この世界にはないのかもしれない。
この夢を見るたびに考えるが、結論は出てこない。
そして、今ももう思考を放棄したくなっている。
いつまでここにいればいいのだろうか。
何度も同じ夢を見ているが、それはいつになってもわからない。
夢とわかっていながら、自分でこの夢から出ることはできないのだ。
誰かに縛られたような感じだ。
だが、そろそろいつものように現れるだろう。
そんな気がする。
目の前に、一人の女性が現れた。
顔はわからないし、体だってぼやけていて曖昧だ。
だが、なぜだろう。この目の前にいる人が、女性であると直感的にわかるのだ。
夢だから、勝手に想像しているだけなのかもしれないが。
女性はいつものように俺に近づいてきて、両の手を広げて俺を包み込むようにして抱きしめてくる。
居心地がよい。安心する。
ずっとこのまましていてもらいた。そんな気持ちが沸き起こる。
女性は顔を近づけて、耳元に口を持ってくる。
来た。俺のそばで毎回同じようなことを呟くのだ。
「この世界は偽物よ。真実を確かめなさい。確かめたいなら神の元へ行きなさい」
この言葉を口にした後、彼女は俺の元から離れていくのだ。
俺はこの後、必ず同じ行動をする。
「もう少しだけ! もう少しだけお願い! 一緒に居てよ! ――――!!」
この時の俺は、どうしてか目が覚めると思い出せないし、自分が何を言っているのかすらすぐに忘れている。
ただ、俺は彼女に手を伸ばし、何かを叫ぶのだ。
そんな俺を見つめながら、彼女は遠ざかっていきそして、光となって消えていく。
どれだけ手を伸ばしても届かない。
手を伸ばしていないのかもしれない。俺の勝手なイメージで手を伸ばしているという錯覚を生み出しているそんな気がする。
進むこともできなけらば、目を背けることもできない。
ただ、消えていくのを眺めていることしかできない。
光がすべて消えると、真っ白い世界もどんどん暗くなっていく。
そして、巨大な穴に落ちていく感覚に襲われる。
どんどん下に落下していく。
そして、俺は目を覚ます。
まだ太陽は地平線から顔を少ししか出ていない。
時刻は4時前だ。
少しうなされなていた少年が目を覚ました。
額には汗が浮かんでおり、少し息が荒い。
「また、あの夢だ」
何かを思い出すように少年は呟く。
ベットから起き上がり、何かを探すように部屋を見渡す。
少年の部屋は簡素だった。
机とベットとタンスだけ。生活感があまり感じられない。
机にはタオルと綺麗な剣だけが置いてあった。
少年はタオルを取るって汗を拭く。
綺麗に拭き終えると、椅子を引いて座る。
そして、見た夢を思い起こす。
「またか。あれは何なんだ、いったい。いい加減にしてくれ」
うんざりしたように首を横に振る。
「いつものことながら、神のもとに行けってどういうことだ?」
少年は夢のことについて、いつものように考え始める。
考えるが、何も思いつかない。
堂々巡り。
いや、ただ一つでけ思いつくものがあった。
おかしな考えが一つだけ。
あまりにもおかしくて誰かが聞こうものなら笑ってしまう考えが。
「霊装契約ってことなのか?」
霊装。
許された人間だけが契約することができ、なることができる人類の希望。
神に最も近いものと契約を交わせるらしい。
これが、少年が行き着いた一つの答え。
「これだけは流石に無理だな」
少年は溜息を零した。
「っていうか、この世界が偽物って何なんだよ」
また、新たな悩みで頭をひねるのだった。
結局、少年は答えを出すことができなかった。
諦めた少年は、机にある剣を持ち出し、外で剣を振るのだった。
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