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第一章 わたしがレベル3の幼女なわけないッ

レベル888の美魔女のわたしがレベル3の幼女なわけないッ

第一章 わたしがレベル3の幼女なわけないッ


アラサー!?うるさい!好きに生きてきて女冒険家で唯一の高レベル888のわたしが!

ある日男に振られてなんかいないけどダンジョンで憂さ晴らししようとおもったらなに!?


このわたしでも避けられない罠があるなんて!身体が熱い!!どうなるのよー!!


な、展開のこてこてファンタジーです!

レベル888の美魔女のわたしがレベル3の幼女なわけないッ


第一章 わたしがレベル3の幼女なわけないッ


赤いドレスに金の刺繍が、僅かな光の中でも煌めいて美しい。

こんな泥臭いダンジョンの堅い階段に、ドレスのスリットから見える白い脚が下ろされる。

一段、また一段とまるで舞踏会の会場のように階段をおりるさまは見るモノを魅了するだろう。

その雰囲気に息をのむのは魔物達だった。開かれたダンジョンの小部屋から突如モンスターが顕れることはなかった。妖艶な女の気配に近づきもせず、むしろ怯えている。

 なぜならばそれは、余りに余った魔力をフィールド展開し、威嚇しているからだ。5歩先、10歩先何が落ちているか、何が生息しているかなどわからないわけがない。

「ちょっとぉ。なにもいないじゃないのよぉ・・・」

少しトーンをおさえた、艶っぽい声がをだす。息を吐くと、酒くさい。

「少し飲み過ぎたかしら・・・。」

 空に浮かせたランプを指先一つで左右に振りる。光が動く度にドレスの刺繍や宝石の粒がきらめいた。そして輝くのは服だけではない。

 金のウェーブの髪を惜しみなく垂らして、真っ赤な瞳にきらめく金のシャドウ。目鼻立ちの濃い化粧をしている。耳飾り、髪飾りも豪奢な宝石だった。

 そして、ここに男がいたら誰でも釘付けになるだろうたわわとみのる大きな胸。

「このダンジョンに強いモンスターがいるって昨日酒場でいってたじゃないのぉ」

 一人呟く。まあ、普通の人からすると強い魔物であって、わたし【最強女冒険者のエミリー】にとっては大したことないかもしれない。

「ああ・・・頭痛い。イライラする・・・。ストレス発散にもなりはしないじゃない」

 フラれたこと、少しショックだった。

 風の噂にレベル100越えの騎士がいることを聞き、お近づきになり、仲良くなれたと思ったのに。

「この紋章のせいで・・・。」

 エミリーははち切れんばかりの胸元が今にもこぼれそうな服を、更にさらけ出してまがまがしいタトゥーを睨んだ。魔の者との契約の証である黒薔薇が白い肌に刻まれている。

「くそっ!」

 彼は敬虔な聖騎士だった。一緒にいて楽しかったし、年上のわたしを上手にエスコートしてくれた。聖騎士のくせにキスが上手でとろけそうだった。でも・・・

 この印のおかげなのか、(男運が悪いのか?)で、こんな歳になっても結婚出来やし

ない。

『君には悪魔の印がある!これでは、きみを抱くことができない・・・!』

「って言われたり、怖がられたり!もううんざりなのよ!!のけなさいよ!魔王ーーー!!!」

 ダンジョンで叫んでみても返事なんかない。魔王の花嫁の印をつけられたせいで恋が出来ないなんて!行き遅れているなんて!もうやばい!

 そしてずっと魔王を探しているのに見つけるどころか出現の噂も数十年聞かない。

「まったく不愉快で屈辱だわ。上位悪魔でもいじめであぶってやりましょうか。」

 にらみつけた先にびくびくこちらを伺っている魔物がいて、じろりと目を向けると一目散に逃げていった。

「ッチ。んなことするかってーの。」

 数分、ダンジョンを下っていくと、

 ゴゴゴゴ・・・

「地鳴りか?」

 細い下り階段が揺れ、階下の広場の空気が変わった。

「珍しいわね。おもしろそうじゃないの」

 不思議な触感がフィールドに触れた。

「ん?この扉のむこうから、強い力を感じる・・・何があるか読めないし、モンスター・・・いや、鉱物、マジックストーンかしら。」

  ドン!

 杖を軽く振り、たやすくその厳重な魔法の扉を開く。

「暗いわね。」

 一段低いその部屋に入る。足音はしない。なぜなら少し浮いているからだ。床が軟体物で覆われているのがわかったからだ。

こんなのに足を取られるわけにはいかない。

「なによこのぐにぐに。きもちわる」

すがん!と別の岩で出入り口をふさがれた、

「ちょ!はぁ、まあこのくらい、」

 ふさがれた出口を魔法で開けようと杖を振るう。すると、粘性のものに腕を捕まれる。

「このわたしのフィールドバリアにはいってくるなんて。やるわね。」

 めずらしいわ~と驚いていたら、

「っ」

油断した。左足も絡みとられた。

「なぁに、触手系?勘弁しなさいよ。」

悪態をついている間に、残る四肢も縛られた

「ふ。わたしはね、常に力の百分の一しかつかってないのよ。こんなトラップ、私の力で燃えカスにするわ!」

1番外側のフィールドバリアだった力を圧縮させ、四方八方に放った。

「はぁっ!!」

 爆発して部屋が半壊して終わり・・・と予想していたが、違った。

「え、なに、!?力が、すいとられ」

部屋全体の壁から触覚が伸びてきて、

「あっ」

力をすいとり、からだをまさぐる、いや、あつい!なに!

「・・・・こ・・・こんな、ことって、小娘以来、ないわ!」

でも、死ぬのも悪くないけどね。もう、飽きた、から

 そういえば小悪魔がいないわ。この部屋に入ってきてないのかしら。

身体が、きもち、いい。でも、どんどん熱があがっていく。

「あああっ!!いや!あつぅうういいっ!!」

こんな熱くてきもちわるいのじゃなくて、最後に誰かと


・・・ぎゅってしたかったな・・・。


★酒場★


「エミリはいるか!」

白銀の甲冑に白いマントを着けた金髪の男性が酒場を訪ねる。


「騎士団長のにいちゃん今日はきてないぜ。」

 白銀の甲冑の男に話しかけるには不釣り合いな格好の飲んだくれ男グループが、矢次にまくし立てる。

「てめー!とうとうエミリをフりやがったな!おかげでこっちはな!しこたまやけ酒しやがったところをな!・・・・俺らが・・・」

 いやらしく笑う街のごろつきたちだが、

「俺らがイジメられたんだよっ!!」

「だろうな。」

 あまりにも予想の出来る答えだった。

「あのあばずれ!騎士団長の兄ちゃんしかどーにもできんって!なんでフリやがったんだ!しばらく大人なしくしてたのに!」

「俺らの平和がなくなっちまった!また『私の酒が飲めないのか!』と頭から樽に突っ込まれるわ、パシリにされるわ、落語をやれだのギャグを百連発しろだので最後全否定するわの!!」

「あの女をなんとかしろ!!人格否定されて心が折れるわ!!」

 大の男に泣きつかれ困り果てる。

「まったく。あの着眼点と慧眼の鋭いエミリをそもそも負かそうと張り合うからだ。」

「だってだな!触りたいんだよ~~~まいったと言わせてあのチチをよおおお!!」

「その気持ちはわからんでもないが。」

 どうでもいい脱線しまくりの話を、ボリュームは小さいが確かに響く少年の声が割って入った。

「あなたが、騎士団長?」

「ああ、リゼロイア地方教会騎士団長のアルデュークだ。君は?」

 アルデュークは、顔見知りの酒場の男達とは違う、見知らぬ少年を見た。

黒くて少し長くて整えていない髪に、目が半分隠れていて陰気くさい。冒険者の格好はしているが体型が細すぎるのか、似合ってない。

「最近、新しく冒険者登録をしたクロウズです。有事登録してるんで、オレをダンジョンに連れて行ってもらえませんか?」

「ダンジョンに?いや、今はちょっと、人捜しをしていて・・・」

「オレも。探してるんです。エミリを。」

 黒髪から覗くやっと見えた眼光は、語尾の自信のなさそうな声色とちがって、漆黒に瞬いた。

「エミリを?君は?どういう関係かな?」

「・・・・」

 深刻そうな顔をして黙ってしまった。エミリーとはしばらく一緒にいたが、こんな少年と知り合いなのは聞いていない。年も違うし、何の接点があるのだろうか。

「あ~あ~。エミリならあのダンジョンへいったぜぇ」

 酒場の男が、窓から見える高い塔を顎で指した。

「そうなのか!じゃあじき帰ってくるだろう。」

「それが、ですね~」

 酒場の常連の一人が口を挟む

「いつも三時間ほどで帰ってくるのに、丸一日もどらないんだ。」

「エミリが?まさか手間取っている・・・?」

「わははは!!ないない!あの女が魔物に手間取るもんか!雪が降るわ!!」

 酒場の全員があざ笑った。が、そのとき、

~~ひゅう~~

 窓の外に雪がちらついた

「え!今日そんなに、寒かった、か??」

 皆が目を剥く中、アルデュークが冷静に言った。

「今のは偶然だろう。もう雪もちらつく季節だからな。まあ、少し心配だし、エミリーには早く会いたい。ちょっと行ってみるか」

「オレも。」

「ああ、えっと、クロズくん。じゃあ、一緒に行ってみるかい?冒険者証を。」

 教団は、聖騎士以外の武力は使わないので、冒険者団体と行動を共にする事は職務ではしないが、有事の際は一般人の手を借りることもある。個人の目的で冒険者と一緒にいるぶんは問題ないが、アルデュークは騎士団長のため、何かと目立つ上、町や地域の警邏も常に行っている。いつ職務に関わるトラブルになっても言いように、冒険者のなかで、無償で聖騎士に協力します、という有事登録をした者となるべく行動を共にするようにしている。

「では、行ってみよう。」


 ダンジョンとは、時空のゆがみに突如あらわれる異次元からの迷宮で塔のような形をしている物が多い。そこからあふれ出すこの世界には居ない獰猛な生き物を魔物とよぶ。ダンジョンは、魔界とも天界とも繋がっているというし、仕組みはまだまだ解明されていない。まるで生き物のようにその塔は、内部の迷宮を変えていく。魔物を放つそれは、人々の生活を脅かすものだが、立ち向かう者、防ぐ者、冒険をしトレジャーすることで生活を豊かにし、ダンジョンの中にある未知なる技術や魔法や知識を持ち帰る者もいる。


「此処のダンジョンはまだ教団が入ったこと無いエリアがあるんだ。エミリーにはその調査を独自にお願いしていた。少し感じたことの無い異質な力を発していてね。ああ、このダンジョンは地下型だよ。ひたすら降りていくと、魔界につながっているのではないかと云われているね。」

「はぁ」

 興味ないような返答をクロウズはする。もう何時間も歩いているのにエミリーの気配はない。

 騎士団長というだけあり、モンスターは全部アルデュークが倒す。

「脚が、痛い・・・」

「まったく。君まだまだ駆け出しだね。少し休もうか?」

「あなたはレベルどのくらいなんですか?」

「お恥ずかしながら、125になったばかりでね」

「ひゃくに・・・」

 クロウズは驚いた100って、超えるのか

「君が探しているエミリはレベル888だよ。まあ、彼女は自分より強い人としか一緒にいてくれないけどね。」

「でも一緒にいたんですよね?酒場の人が話していた感じでは、つきあっていた?ように聞いたけれど」

「少し一緒に居ただけだよ。そうそう。【推定レベル】ってしってるかい?」

「えっと・・・その人が到達するであろうレベルの上限、ですよね」

「そう。そのとおり。全員が全員鍛えればずっとレベルがあがるわけじゃない。みんなどこかで上限で止まってしまうようだよ。特に人間は120を超えるのは本当に少ないと言われているよ。」

「それで?」

 クロウズは、何が言いたいのかわからなくて話を催促する。

「僕はね、どうやら、889LVまでいけるみたいなんだ!まあ、計算ミスや誤差もあるだろうけど、最先端の測定ではそう出たんだ!それを聞きつけたエミリが近寄ってきたんだ。」

 なんだ、自慢話か、とでも言うようにクロウズは鼻を鳴らすだけの相づちを打った。

「いったいどこから聞いたのか、エミリーは突然やってきて、『ふうん。聖騎士さまなの?ま、この際良いわ。889レベルまで成長するらしいじゃない。どう?まだまだ青二才なのはわかっているけど、ちょっと私とあそばない?』と。なんて妖艶できらびやかな女なんだと思ったよ。」

「それって、なんか、がっついているババa」

「そう!まるで女神が現れたかと思ったよ!!」

「え?」

「美しい金の髪!たわわな胸!こんな女性がまさか話しかけてくるなんて!!生きてて良かった!!」

「あ、そうなんだ」

 クロウズはこいつやべーな、と思った。聖騎士は男女の関わりが厳しいからか?

「それで、結婚前提の、お付き合い前提の、お友達前提の知り合いから始めたのだけど」

「前提の前提の・・・」

「いやぁ~ちょっと良い感じになってその、まあ、聖騎士としてははしたないけれど、その。」

 照れながら三十路も突入してるおっさんが顔を赤らめる。なんとなく想像は付いた。噂のチチか。

「で?おっさん。どうなったの?」

「エミリのすごく深い谷間に!深い!深い!谷間に!・・・その、魔の紋章が・・・」

「別にいいんじゃないの?紋章くらい」

「ななななにを!僕は聖騎士だ!そんな魔の加護がある女性と!そんな!先祖代々家の者に縁を切られ!職はなくし!今まで築き上げたものがなくなってしまう!!」

「へ~。そういうもんなんだ。」

 クロウズは飽きたな~この話、と思いあくびをする。

「でも、これでよかったのだろうか・・・。もしかすると、エミリの谷間に顔を埋められる男は・・・この世で僕しかいないのかも・・・。」

「あ、そう。おっさん。疲れとれたからいこ。」

「あ!待ちなさい!僕の悩みを聞いてくれ少年よ!」

 思った以上暑苦しいおっさんだったようで、クロウズは地下への階段を進む。

「!!!」

 ゴ・・・ゴゴゴゴゴ・・・!!

「だ、ダンジョンが、揺れてる・・・」

「危ない!!崩れる!」

「う、うわっ・・!?」

「手を!!」

 聖騎士アルデュークが伸ばした腕をつかめずに、クロウズは突如空いた床から地下に放り出されてしまう。

「クロウズ少年-!!」

遠くから、暑苦しい声が聞こえて遠ざかった。


「いてて・・・痛い」

 少しクッション材のようなものに当たったようで、打ち身くらいですんだ。

そこは湿っていて、きれいな水と、なにか金色の力の破片が紙吹雪のようにきらきら舞っていて美しい小部屋になっていた。

「ダンジョンの、中なのに、きれいだ・・・。」

 宝石をちりばめたような瞬きが部屋を照らしていた。

「あ、れ?」

 そこになにか肌色の物が横たわっていた。

「おおおお・・・おんな、のこ・・・?」

 白い素肌、金色の流れる美しい髪、あどけなさの残る少女だった。

「まじ!?!」

 近づくと絶妙な横たわり方で、胸の先は見えなかった。つるんとした背中に濡れた髪が張り付いている。

「い、いきて、る?よな」

桜色の唇から呼吸が漏れている。よく白い肌、と表記されるが肌色なのに男の自分の肌色とはずいぶん違うように感じる。確かに白い。きめが細かいというのはこういうことなのか。

「お、お、女の子・・・。生の女の子・・・初めてさわ・・・」

 そっと肩を触るとやわらかい。しっとりとはこういうことなんだ。もっと触りたいと掌が吸い付くようだ。すーっと手を動かすと滑っていく。

「・・・ん・・・ぃ・・や・・・」」

うろたえていると、女の子が目を覚ました。

「!!!!」

驚いた自分と、驚いた少女の目!少女は真っ赤な紅玉の瞳だった。

「や、やだ・・・」

 か細い声で怯えている。

「え!?」

「さわら、ないでっ!!」

「あ、えっと、なにも、!だいじょうぶだからっ」

そ、そうだ、よこしまな考えを少しはしていたが、このままでは加害者のようで、震えてる白い肩に自分のマントをかけてあげる。

「っ・・・」

 くすぐったそうに顔をしかめ、目をうるうるさせている。

 か・・・かわいい。

 どうしてこんな少女が・・・なぜこんなとこに?

「は?」

 その少女はいかにも目が点になり、マジマジとこちらを見た。そして、肩襟の冒険者証のバッチが目に入ったようで、これを貸せといわれた。

 その磨かれたバッチを手鏡として自分の姿をみている。そして、信じられないとでもいうように、その少女は甲高い声で叫んだ

「なんっっ・・・じゃこりゃーーーーーーーーー!!!!」

 そしてそのまままた倒れてしまった・・・。



 頭がぼうっとする。熱かった身体が冷えていき、汗が大量に出て消耗している。まるで高熱から冷めているようで、骨がきしみ、身体が動かない。

 ここ、どこ?

 こんなに周りが何もわからないなんて、まるで視力を失ったかのように、恐い。どう、しよう・・・頭も身体も、痛い・・・。

「っ!」

 高いところで岩崩れの音がした。地響きのような音は自分の聴覚を直接震わせ震撼させた。地響きって、こんなに怖いの?規模が大きいのか!?

 すると、何かが?人が?上から落ちてきた。

なに?誰?性別も、オーラの強弱も、色も、なにもわからない。

とても大きくて邪悪な物が近くに寄ってきたのがわかる。動け!動かなければ!これはやばい!!

「や、やだ・・・」

つぶやいた声は蚊のなくような声だった。誰の、声?私?

「え!?」

 耳を圧迫する大きな声で、感じたことないようなすごい圧力で私の身体を揺らした。こんなすごいモンスターがいるなら早く言ってよ!もっと準備して、久しぶりに死ぬ覚悟して挑むから!なんて頭の片隅でよぎりながらも、身体は、そんな軽口とはうらはらに、その圧力に恐怖していた。無意識に、触るな!と言った。

「だいじょうぶ、だから!」

 次に、びっくりするくらい柔らかい音が鼓膜を揺らした。くすぐったくて心臓が鳴った。なにこれ?しかも、言語として、大丈夫?

大丈夫?ってなに?誰が大丈夫じゃないって??

 ふわり、と身体をマントが覆った。紺の生地のいい裏地。

こうやって、オーラバリアなく直接物が肌に触れるなんていつ以来だろう。布の感触、人の温度。人?男?なにこいつ。

 見上げると、シャープな顎に、整った顔立ち、漆黒の瞳が柔らかくこちらを見た。目の中に私が移っている。わたし・・・わたし?

 ん?

ふと、視線を動かすと、男の胸元にもっと自分が写っている物があった。磨かれた冒険証だ。それを引きちぎる勢いでひっぱったのに、筋力ももどっていないのか、とれなかった。

 これがほしいのかい?とでもいうように、優しく手渡してくれたそれをうばって、マジマジと自分の顔を見た。

 乱れた髪が目に映った。あれ?ばっちりウェーブがとれて、ストレートになってる。濡れたから?なに?メイクがとれているからじゃない。あきらか頬が丸く、幼顔になっている。しわやたるみもとれてはいるけれど、なにこれ?プラセンタ?コエンザイム!?

 まさか!とおもい、身体をみる。あんなに長年かけて牛乳のんだり、もんだり、鍛えたり秘術も怪しい薬も大金をはたいて購入し育てた豊満な胸が、

ない!!

なにこのつるぺた幼女!だれこれ!わたし!?!?


うそでしょ。年齢半分減ってる・・・。そうだ、オーラも読めない。バリアも張れない・・・私の何年もの苦労が・・・うそ、うそでしょ!


レアモンスターもドラゴンも狩って、時には盗み、時には奪い!歩いて走って!レベル上げあげ、レアアイテムをとり、あやしいドーピングもお金もたっくさん使って、冒険者レベル女性初888Lvという神がかりな数値にまであげ、むかつく組織を壊し、欲しい物は取りに行き、悪名だといわれ、魔王にまで求愛されたこの十数年間・・・が・・・?


「なんっっじゃ!!!こりゃああああ!!!」

もうショックすぎて気を失った。


どうせ夢だろう。

滑稽だわ。・・・良い暇つぶしね。


☆☆


目が覚めると、寝室にいた。清潔で簡素なベット。

服は、ありきたりな修道服を着用していた。

ん?ちょっとまて!50000000ギルのわたしの服はどこ行った?アクセサリーもなくなっている。99999999999999ギルの魔法の杖もない。

慌ててベットから飛び降りると鏡があった。

「夢、じゃない・・・」

 自分の姿を確認するとやはり歳が半分!?それ以上!?減っている。

 15歳?17歳でもいけるか?くらいかな?あどけない顔に、細い身体。

 自分の一番嫌な時を思い出す。それが嫌で、豊満でゴージャス人生を作ったつもりだったのに。

「ッチ」

 幾ら幼女になろうと、普段の癖はそのままに舌打ちし、寝室を出る。

 扉がキィと音を立てると、そこは客間になっていた。

「あ、目が覚めたのかい?」

 一瞬で顔立ちを忘れそうな特徴のない騎士が話しかけてきた。

「ねえ、わたしの服と杖はどこ」

「服・・・?服といえば、エミリさんのが・・・」

「それよそれ。どこにあるのよ」

 不機嫌そうに言うと、困ったような小馬鹿にしたような顔で男は言った

「あのね、あれはエミリーさんのなんだ。なんで君がその服を羽織ってたのかしらないけど・・・もしかしてエミリさんがどこに行ったかしているかい?」

「エミリーはわたしよ。だから服を返しなさい」

「・・・・」

 男は少女の頭からつま先まで目線を三回往復させてから、頭を振った。

「嘘はもう少し上手につきなさい。あれはとても高価な物なんだから。本人にしか返せないの!め!」

 め。ときたか。だから本人だっちゅーの。こんな下っ端は話しにならんな。アホとしゃべるのが面倒だから騎士団長とっ捕まえるしかない。

「あ、ちょ、君!どこいくんだ!君を見ていないと団長にしかられちゃう」

「五月蠅い。その団長に会いに行くのよ。」

「待ちなさい!夜一人で出歩くのはあぶない!!」

 何を小娘に言うみたいに。

「きゃあ!」

 自分はひゃあ!と驚いたつもりなのになぜか高い声が出てしまう。びっくりした。ただ扉を開けると蜘蛛がいただけなのに。認識できないって・・・とても不便で。

 いや、怖くはないのよ?不便なだけで。

「ほら、そんなに恐がりなのに、いいからおとなしくここでいなさい!」

「いたっ」

 男に引っ張られてしまった。なんでこうみんなやたらと力が強いのか。

 こうなったら

「ぼうや。いいこだからわたしの言うことを聞きなさい。」

 そういってスカートをすこしたくしあげる

「こら!そんなはしたないことしちゃだめ!どこで覚えたの!!」

 なん、で・・・わたしがおこられなきゃなんないのよ!

「ふん!もういい!」

 久しぶりに何もかもがうまくいかないのですねる。

「ごめんね。機嫌直してよ。ね?」

 男が急に機嫌をとってきた。そう、か、なるほど!

「・・・もう・・・いや・・・。わたし、なんでこんな目に、あうの・・・」

 伏し目がちにうつむきながら、鼻をすすってみる。

「ね、なかないで!ね?これあげるから!」

 あめ玉をさしだしてきた。なるほど。色仕掛けは通じないけどこれなら。

「おねがい・・・騎士団長に、今すぐ、あわせて・・・」

 うるうるした目で見上げてみる。効果はてきめんだ。ちょっと屈辱だけど、この姿もいいわね!

「ちょっとまっててね!いいこにしててね」

そう言って慌てて外の扉を開いた瞬間に、飛び出した!

「あ!ちょっ!おじょうちゃん!!!」

 小さな身体で物陰に隠れるとぜんぜん見付からないものね!さーてと。酒場に行ってアルデュークに会うわよっ!!



 酒場でクロウズは騎士団長アルデュークに話しかけた。

「えっと、俺を引き上げてくれて、あざした。あの、・・・だいじょぶ、ですか?」

 少女と自分を引き上げて介抱してくれたのだ。ただ、当の本人はエミリを見つけられなくて落ち込んでいる。

「きっと、オレが、エミリーをフったせいで・・・エミリーが帰らぬ人に・・・」

 さっきからそれを呟いては、強めのお酒を一口ずつ飲み込んでいる。今にも泣き上戸に変わりそうでうざい。

「そんな馬鹿な。帰ってきますよ。」

そして何度目かの同じ慰めを口にする。

「そうだ!あの女が死ぬわけねーだろ!殺せるものならだれかがやっとるわい!」

「ドラゴン5体に囲まれても涼しい顔してるのに、どうやって死ぬんだよ!」

 チンピラがそれぞれ高らかに言うように、死んだという事は考えられないだろう。

 その通りだ。あの女が死ぬはずがない!

「あの女に死なれたら・・・オレは・・・」

「君・・・恨みでもあるの?エミリのこと」

 アルデュークが眉をしかめて言った。

「なんでです?」

「いや、今の顔。まるで忌々しいものの名を、嫌々呟くようで・・・」

「・・・・・・」

「なん、」

「騎士団長アルデューク!!」

 二人の話を遮るように女性の声が酒場に響き渡った。

 この声は、

「エミリー!!」

 団長が酒場のドアに振り向くと、そこには!光が溢れんばかりのマーベラスなうねる金の髪にファビラスなドレスにプレシャスな胸元の豊満な女性が、居ることはなかった。

「あれ?君は、あのダンジョンにいた、女の子・・・。今、たしかにエミリーの声が」

「アンタなら信じてくれるでしょ!わたしがエミリよ!」

 少女が、ない胸を張って、高らかに宣言する。

 酒場のすべての人間が、シーンとして。その後大爆笑した。

「だっはっは!おじょうちゃん!そんなかわいいのに悪名高い美魔女!最強女冒険者のエミリーの真似たぁ、あのエミリを超える勢いだな!!」

「エミリはもっとふてぶてしくて傲慢で、強くて。なんていってもレベル888だからね。しかも、もうおばさんだぞ~」

 そんなわかりきっていることを(怒)

「気に入らない組織も団体も徹底的につぶしあげて金目の物をかっさらい、悪人だろうが善人だろうが欲しい物はうばい、モンスターもドラゴンも手に負えない強欲エミリーと、虫も殺せないようなお嬢ちゃんじゃ似ても似つかんよ!」

 噂に尾ひれをつけて勝手に悪名になっただけなのに好き勝手言いやがって。

「いいから!服と杖を返しなさいな!!わたしがエミリなの!!」

 アルデュークは少女の前にしゃがみこみ言った。

「ええと、エ・ミリィ?ちゃん。あのね、あの杖はレベル850以上の魔力がないと使えないとても高級ですさまじい杖なんだ。君には手に持つこともできないよ」

「そんなの知ってるわよ。使えれば信じてくれるかしら?」

 そうだ。杖さえあれば、事実上850Lv以上の女子冒険者はいないのだから。信じるしかなくなるわよね。

「いや、でも、あのね」

 アルデュークは、申し訳なさそうな、というより、完全に困った顔で魔法のルーペ(レベルがざっくりわかるやつ)を出してのぞき込んだ。

「今の君は、冒険し始めたばかりのレベル3だよ」

「さん・・・」

 地面がぐらりと揺れた。アルデュークがあわてて支えた。

うそ。うそだろ。3って。あの3?いち、にい、さん、と3番目の数字の3だよね?いちとにとその次のさん!サン!?たった、3!!??

「だいじょうぶかい?」

「あ、あたまが、痛いわ・・・。」

「ミリィちゃんていうの?エミリがどこ行ったか知ってるかい?君はエミリとどんな関係なの?」

「関係も何も!」

 って言いかけてやめた。この様子じゃ信じてもくれないし、服も返してもらえないだろう。なんて言ったってレベル3の自分がショックすぎるし、このままじゃ何もできない。

冒険者証がなければ、銀行にある資産もお金もひきだせないのではないか?レベル3だとわかって納得した。オーラも読めない。バリアも張れない。しかもこんな子供の姿、ひとりではなにもできないし、手っ取り早く強敵と戦いレベルを上げるのも一人じゃ危険だ。命の危険なんてしばらく感じたことなかったが、このままなんの庇護もなく理解も得れないのはまずい。

「・・・関係も何も・・・エミリは、わたし。・・・の、・・親族よ!だから、服!」と、 冒険者証がもどってくれば、お金でなんとか課金ドーピングレベル上げができるわ!あの総資産を全部レベルにつぎ込んでやる!!

「親族?エミリの口から家族の話は聞いたことがない。まさか・・・隠し子・・・」

 アルデュークが少女の顔をマジマジと見る。このくらいの子供が居てもおかしくない年齢だけどもね!

「たしかに、目の色と髪の色は同じだけど。こんなに人畜無害な優しそうな顔。まるでエミリとはにてないなぁ」

 他の男が勝手なことばかりを言う。

ハクがつかないからつり目メイクをしていたり、まあ、歳なのでケバくなっていったが。自分ではわかる。間違いなく子供の頃の自分の姿なのだから!

 そうだ、あのダンジョンに行けば、元に戻るヒントがあるかもしれない。でもレベル3じゃ・・・

「とりあえず、エミリーに会いたかったら、わたしのレベル上げを手伝って!そしてあのダンジョンにつれていってよ!」

「君、ほんとにエミリの親族?おうちどこ?」

「家なんてないわよ。」

「どっちにしろこの子どうにかしないとなぁ。」

「オレはなんとしてもあの女に会わなくちゃいけない。あの女が死ぬわけない。」

 冒険者の男が言った。ダンジョンでわたしを助けた男だ。どこかで見たような?

「ねえ、アンタ・・・。どうしてわたし、じゃない。エミリをさがしてるのよ。」

「・・・・・」

 なにその間は。なにその暗くて歯がゆそうな顔。わたしなにかしたっけ?

「どちらにしろエミリーは行方不明なのだから、この子のいうとおりにしてみよう」

 アルデュークが言った。

「そうそう、団長さん。俺この子の面倒みていいですか?」

 もさい少年が急に自己主張をした。

「え?かまわない・・・いやいや、でもなんか君、あぶなくない?変な趣味ないよね?教会で面倒みるからさ」

 教会!?冗談じゃない!

「教会なんて嫌よ」

 だいたい教会からは、教会施設立ち入り禁止が出てるのよね。こっちだって願い下げだわ。窮屈だし質素だし。陰気くさい貧乏くさい。なのにある意味世界の1番の大組織で上はどんだけ儲かっていることやら。気にくわない。何が清廉潔白よ嘘くさい。教会なんかに庇護されたら制約があって何もできないわ。

「わたし冒険者よ!教会のお世話にならないわ。この子とパーティー契約を結ぶ!」

 ちょっとでも自由で使えそうなこの男の世話になる方がよいだろう。

「君・・・ミリィだっけ?」

 ミリィでもなんでもいいけど。

「あなた、名前は?」

「クロウズ。」

「よろしくクロ。とりあえずしばらくはわたしの面倒をみなさい。」

「か、かわいい」

「「は?」」

 アルデュークとミリィの声がかぶった。なんか、変なことされないでしょうね、わたし。

「儚くてかわいいのにちょっと、かなりの高飛車。たまらない・・・。」

「ちょ、クロウズくん?ちょっと心配だから僕もついて行くよ。とりあえずミリィの冒険者登録しないと、LV8はないとダンジョンは立ち入り禁止だからね。」

 教団はダンジョン進入を最低レベル以上クリアしていないとはいれない、と決めている。そんなのいちいち守るわけないじゃない。

「とりあえず!さっさとギルドに行くわよ!」

 そう意気込むと、脚がふらり、とした。

「ミリィ」

 クロウズが支えた。頭がふわふわして、身体が熱い。まだ変な後遺症とかあるのかしら。と深刻に考えていたら、

「ふわぁ~」

 口からあくびが出て、目がしょぼしょぼした。

「ミリィ、眠いんだね」

アルデュークが言った

「そりゃそうだよ。こんな時間、子供は寝る時間をとっくにすぎてる」

 な、なんですって。このわたしが、夜眠い!?ですって?

「そんなこと、ない・・・わ」

 視界がグニャグニャする。これは、あのダンジョンの術の後遺症、だと思いたい。眠いだなんて。

「じゃ、ベットに運ぼうか。この高飛車お嬢さんを」

「や、やめて・・・」

 バリアフィールドも結界もはっていないのに眠るなんて危ない!それに、このクロウズという男。もちろんアルデュークも、信用できない!

「大丈夫・・・俺が添い寝するから。」

「クロウズ君。君ちょっと恐い。僕も一緒にこの子を見張る!」

 ちょ・・添い寝なんて・・・

わたしは意識を失ってしまった。


★☆★


 さっきまで気丈だったのに眠くてふらふらになるなんて。なんてかわいい生き物なんだこの女の子は。

 クロウズはそう思ってミリィを抱き上げた。予想より軽くてびっくりする。ちゃんと食べているのか?あの女の親族といったが、妖艶でふくよかな彼女と大違いだ。その富の少しでもこの少女に分け食事をとらせたりしないのだろうかあの傲慢な女は。

いや、あの女の真似事をするくらいだから信頼関係はあったのかもしれない。

 結局、アルデュークが聖騎士団長なので、教会の一室を借りることになった。ベットのすぐ横で雑魚寝をしている。

「ふふふ。かわいいなぁこの子。なんであんなとこにいたんだろうなぁ」

 ベットの向こう側の床でアルデュークがつぶやいた。

「な!」

 クロウズが慌てて身体を起こすと、すやすや眠っているミリィを愛おしそうに見てる。

「おっさん。眠ってる女の子を触るのは教団の教えに反するんじゃないんですか?」

「さ、触ってない!見てるだけだっ!」

 いかにもほっぺたをつついていただろうたてらせた人差し指があやしいが。

「クロウズ君は、なぜこの子に御執着なんだい?」

「・・・かわいい。守り、やすそう。」

 クロウズは前髪の奥の目を輝かせながらミリィをみた。

「何か、誰かを・・・守り抜きたい。かわいい物が、いい・・・」

「中二病・・?かな?」

 少し気持ち悪がられているが気にはしない。

「心配だ。非常に!エミリの手がかりは今はこの子しかないから、僕はこの子の面倒を見るからな!」

「おっさん。どうしてあの女に執着すんです?」

「僕とエミリはやっぱり恋人なんだ!!」

「恋人の前提の前提、でしょ。」

「居なくなって気付いた。僕らは確かに相思相愛だったんだ!!」

「ふうん。あの女におとなしく恋人ができるとは思いませんけど」

「君!エミリの何がわかる。エミリは優しい女性なんだぞ!きっと、寝顔だってこの子みたいに天使のような素顔をしていたに違いない!」

「違いないって・・・つきあってた(前提の前提な)のに見たことないんすか?」

「・・・エミリは、人前では絶対眠らなかったし・・・その」

「いい大人同士のくせに。」

「う・・・。それは・・・。教会では誓い合わないと夜を共に越えてはいけないのだ。」

「でもおっぱいさわろうとしたくせに」

「それは、エミリの胸が、だな。」

 このおっさんやばいな。やっぱミリィは俺が守らないと。


 左耳で、クークーと誰かの寝息。右耳でたまに、ゴゴっとおっさんの寝息がすると思ったら、ミリィは目を覚ましてぞっとした。

 両サイドに、クロウズだっけ?とかいう若造とアルデュークが眠っている。

「な、なによこれぇーー!!」

 結局マジで添い寝されてるし!屈辱だわ!

「あ・・おはよう!ミリィ!よくねくれたかい?」

 アルデュークがこっちをみてにっこり笑う。でも、うっすら髭が生えてきている。自分は子供目線になってしまったのだろうか、アルデュークは自分の実年齢より年下だったが、今は酷くおっさんくさく見える。

「ミリィ・・・おはよう。」

 かろうじて目が開いているクロウズが再び寝落ちしそうな弱さで挨拶した。この若造はほんとにひよっこもやしだな。朝くらいしゃきっとしろ!

 なにはともわれ!

「ふたりともベットに潜り込むなんて!いったい女をなんだと思ってんのよ!恥知らず!!」

「そんなミリィ。大人として君を守っているだけだよ。ミリィがうなされていたから寄り添っただけさ。」

 は?うなされてた?このわたしが?

 クロウズはねむそうに、こっくりうなずいて

「・・・パパっていって泣いてた」

 な、なんですって!!

「いやーー!!もうあっち行って!変態!!」

「かわいい・・・」

 アルデュークもこのクロウズという若造もでたらめばかりのただの変態だわ!!!ギルドで別の相手でもさっさと探してこんな奴らとはおさらばよっ!!


☆★☆


「さ、ギルドのある隣町まで、いこうか。」

 起きて、質素な教会食を食べて、アルデュークがそう言った。

「ええ。転送魔法陣を用意して。」

「ミリィ。なにいってるの。街道を行くよ。」

「なにいってんのよアルデューク。聖騎士専用教会設置のテレポートが使えるでしょう」

「・・・え?アレは有事の際だけだ。公にはしてないのに・・・物知りだねミリィは。内部事情はエミリから聞いたのかい?さ、歩くよ」

「歩く!?せめて馬は用意してよ!」

「騎士は清く貧しくがモットー。馬車なんて出したらどこの。御仁を乗せてるのかとおもわれてしまうよ。ただでさえ、ここはあのダンジョンしかない田舎なんだからさ。」

 アルデュークに諭され、ミリィはチラッとクロウズへ視線をやる。

「任せて。俺がおぶっていくから。」

「そのひょろひょろの足腰で言われてもねぇ。」

 ミリィはため息をついて歩くことを決心した。まあそんなに遠い距離じゃない。一刻も歩けば付くだろう。

 何年ぶりだろうか。こんな旅は。

 柵の整備も感覚もまばらな街道を三人は歩く。なにもない広大な農地と草原が遙かに広がる。朝日を浴びるのも、風を感じ歩くのも、いつぶり以来だろうか。

「不健康な生活、してたのかしら、ね。」

 ひとりつぶやくと、脚が、痛くなってきた。

「うう。脚が、痛い」

「ちょ!まだ全然歩いてないでしょうが!」

「ミリィ。いつでも言って」

 そういってクロウズが背中を向けてしゃがむ。

「む。」

 モノは試しだ。乗ってみようか。

 ミリィはクロウズの堅くて薄い背中に乗った。

「う・・・」

クロウズは小さくうなりながら子鹿が初めて立てるようによろよろ立ち上がり、一歩

また一歩。

「む・・・りかも。」

「たったの3歩じゃないか!!」

 アルデュークがすかさず突っ込みを入れる。

「わたしも。不安定で落ち着かないわ。ゆっくりでも歩くわよ!」

 ミリィはゆっくりだが街道を歩き出す。

「そういえば!少年少女達よ!ちょっと自己紹介しようか。私は教会のこのエリアの騎士団長しているアルデューク!よろしく!」

 いや知ってるし。

「で?ミリィは?おとうさんとおかあさんははどこ?」

「子供扱いしないで。」

「子供でしょ?まだ保護者同伴がいる12歳?10歳くらいかな?」

「んなわけないでしょ!17歳よ!!(くらいにはみえるかもしれないでしょ!)」

「どう高く見繕っても15歳でしょ!本当の歳を言いなさい!」

 ほんとの歳はアンタより上だっつの。

「LV3だし。まだ保護者の同意がいる年頃には違いない!家まで送り届けるから言いなさい!」

「もう五月蠅い!帰らない!レベル3ってゆうな!!ちょっとアンタ、何とか言いなさいよ。クロ!!」

 ミリィは顎でクロウズを指す。

「わたし、アンタのことよくわからない。アンタなんなのよ。」

「保護者なら俺がなる。なんなら・・・その・・・・養女に。幼女だけにw」

「は?草はやして1人でウケるなっ!!!っていうか、アンタの素性が1番よくわかんないんですけど!なんで冒険者やってんのよ。歴何年!レベルは?今まで何してたのよ。経歴は?」

「えっと・・・家で、仮想空間で冒険したり」

「ゲームかよ」と、アルデューク

「仮想空間で好きな人とデートしたり、その、身体の関係を・・・」

「バーチャルエロゲー!??キモヲタね。」

「とてもかわいくて。そしたら彼女が死んで・・・」

「悲劇系ストーリー!?」と、アルデューク

「こんな女の子、現実でも居ないかなと思って。彼女を探しに、外へ。あと、そろそろ仕事しなきゃとおもって。このままではよくないと思ってきてて」

「ニートかよ!」と、つっこむしかない。

「そうしたら似てる女の子みつけた。ぽ。」

 まさか。わたし!?

「エミリを探してたんじゃないの?」

「・・・・・・」

 だからなんでエミリの名前を聞くと苦虫潰し顔になんのよこいつ。わたしなにかしたっけ?

「だからミリィは俺が守る。」

「守るったってねー。金がいるのよ金が!わたしは高いわよ。あとそんなレベルで女囲えると思ってるの!?」

「わかってる。俺、働く。魔物倒す。」

 なんの宣言かしらんが役に立つなら利用するけど。

「ふむ。わたしもクロも、LV上げ必須ってことね。ねえアルデューク。手っ取り早くLV上げするとこない?」

「とりあえず君たちはアカデミーにいってはどうかな?」

「は!?」

 えっと、たしかアカデミー中級試験合格者なら、保護者うんぬんなくてもダンジョンの出入りやギルド優遇がすこしあるってことか。

「いや、君たち二人は初級からでしょ。2年通わなきゃ・・・」

「う・・・。」

 ダンジョン入るのに2年も使えるか!!

「あ、アレがあるよ!教会教団特例捜索隊!ほら、家族連れで小さい子もいるし。」

 思いっきし子供扱いしてるわね。こいつ。

「あとは本気で騎士見習いする?聖魔法一個は習得しなきゃならんが」

「俺、その自信だけは、ない」

 アルデュークは(ざっくりレベルが計れて属性もなんとなく見れる)ルーペを取り出した。

「地、水、火、風、聖、闇、の基本六属性って、向き不向きがあるからね。ちなみに僕は闇属性は苦手だな。エミリは火の魔法が得意中の得意だったなぁ。えっとクロ少年は、と。あー。聖属性適正ゼロだわ。」

「残念ですね。」

 と、全然残念ぶってない声でクロが言った。教会騎士は規律が細かいからこんなニートあがりのひよっこ少年には根性ないしどちらにせよ無理でしょう。

「アカデミーもギルドも、街にいかなきゃね。さ、歩くよ。」

「きゃあ!!」

 足元の小石につまずいてしまった。

「「ミリィ!」」

 クロウズが下敷きになったので、覆い被さるように倒れてしまった。

「いたた・・アンタの身体、ほんとに薄っぺらいわね」

「ははは。今から鍛えるよ。ミリィのために」

 いつも長い濃紺の前髪に隠された双眸が、倒れて髪が流れてその色がはっきり見えた。

髪と同じ、ミッドナイトブルーの暗い虹彩に、瞳孔の奥深くが金の色を反射している。

 ドクンッ

 動機が走った。なに?恐怖?なにこれ。この感じ、どこかで・・・

「アンタ・・・その瞳・・・・」

「ん?なに?」

 クロウズは上体を起こした。目の前に顔がある。目はもう金色を反射していない。角度の問題なのだろうか、瞳の中に幼い姿の自分が映っている。

「ミリィ、あのさ・・・」

「な、なによ」

 意外と整った薄い唇が囁くように言った。胸が痛い。なに、これ。なんなの?

「あの、馬乗りでそんな風に見つめられると、へんなカンジ、なんだけ、ど・・・」

「い、いやーーーー!!!!」

 クロウズの細い指が頬をさわったからゾクゾクしたっ!!

「なに!!こらー!!青少年育成条例に反するーーー!!」

「いやあああ!!!!」

 ものすごい腕の力でアルデュークがわたしの胴を抱きかかえ浮かせた。その感触もいや!強い!痛い!

「離して!!もうアンタたちわたしに触るの禁止ー!」

「それは無理だ!」

「それは無理だよ!」

「もういやーーー!レベル3いやーーー!!!」

 結局街に着くまで半日もかかった・・・

なんと!幼女の姿になってしまい、知り合いからは子供扱い!レベル3でなにができるやら!

ゲーマーニート冒険者クロウズと聖騎士アルデュークと送るドタバタコメディファンタジー

続きます!

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