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異世界小説で異世界を学んだので異世界で無双します!?(中)

 水をかけられて気持ちよく気を失っていた所で俺は手荒く起こされた。


「うぁ、なんだよ!びしょ濡れじゃないか!」


「1qq2w3e4r5t6y7u8i9o0p−!?」

「azsxdcfvgbhnjmk,l.;!!」


 先ほど俺を殴った隊長と魔法使いが喋っているが、なに言っているのか分からないのですけれど?英語でも無いし、大学で習っているドイツ語でも無いな?まったく何言っているかわからない。


 異世界チートと言えば現地の言葉が理解できるのが定番だが神様がセットし忘れたのだろうか?ちょっと不親切だぞ!(注1)


「なに言っているか分からないから、もっとゆっくり喋ってくれよ」


 相手も言葉が通じないことを理解したのか肩をすくめている。


 なんかジェスチャーで伝えてくる。そのジェスチャーを俺のスーパー勘ピュータで読み解いた所……。


「オーガが来たことを教えてくれてありがとう」

「御礼に町まで連れて行ってあげる」


 と言うものだった。野蛮な男に殴られたのは勘違いだったのだろう、野蛮な男にありがちなパターンだ。現実的には親切な人達だったけれどね!


「いやいや、当然のことをしたまでですよ」


 俺は爽やかにこの場にふさわしい決め台詞を言ってみた。伝わってないようであるが言ってみたかった決め台詞も無事消化した事で俺は満足した。


 キャラバンが再び動き始めた。俺は胴体に縄を結ばれて馬車に繋げられた。迷子にならないようにという配慮だな。俺は冒険者の人たちの後について歩き始めた。


 だいぶ進んで暗くなり始めて馬車は止まった。どうやらここをキャンプ地とするようだ。馬車三台を三角形に並べて止める。馬は近くで草を食べたりしている。


 晩飯をみんな食い始めて、俺にはなにもないのかなと物欲しそうに見ていると冒険者の一人がやって来て食べ物と水を置いていった。


 ビーフジャーキーみたいなものかな?俺はその硬い物を食いながら考えた。異世界の料理事情を俺の日本の知識で無双すれば儲けることが出来るなと皮算用を始めた。


 食べ終わった後は交代で見張りをしながら寝るようだ。毛布が欲しいなと思って寝ている冒険者を見ていたが俺の分は無いらしい。


 俺の異世界知識では幌馬車と言ったら幌の上に登って見張りをしたり語り合ったり飯を食ったり荷物を幌の上に大量に乗せてその上で昼寝をしたりするのが定番だ。折角の幌馬車があるのだ。登らないなんてありえない。いや、登らなければならない!(注2)


 幸い繋がれているロープは長めなので登るには問題ない。これでも子供の頃は木登りをして遊んだもんだ。馬車の出っ張りを足がかりにして登っていく。しかしこの幌はどうやって登ろうか。幌馬車なので形は半円形の馬蹄鉄型の幾つかのフレームが等間隔に並んでいて骨組みとなってその上に帆布がかけてあるのだ。登るための梯子とか把手もない。物語に出てきた冒険者たちはどうやって登ったんだろうか?身体能力を強化してジャンプして登ったんだろうな。


 帆布とフレームごと掴んでそれを棒登りの要領で足がかりにして登っていく。小学生の頃に散々棒登りをやったのがここで生きるとは思わなかったな!なんとか逆U字型の天辺に辿り着いた。骨組みの間に降りてみるが座りが悪い。俺の体重が掛かってかなり(たわ )む。よくこんな上で食べたり昼寝したり見張りしたり荷物を満載したり出来るな。今はまったく荷物を載せていないが載せるほど荷物がないのだろう。落ちないようにするだけでも大変だ。きっと異世界転移者はチート能力でなんとかしたのだろう。


 と思っているうちにずり落ちてくる。俺は慌てて補修跡のある布地を掴んだがその部分が解けて帆布を引き裂きながら盛大に落下した。


 幸い上手く着地したので怪我はなかった。異世界も一筋縄ではいかないなと思っていたら、あの隊長が来てまた殴られた。俺は朝までぐっすりそのまま寝て起きなかった。


 翌朝はまたあの硬い干し肉を食べさせられて朝食を取り、焚き火の後始末のために穴を掘って灰を穴に捨てて水をかけるとまた土で埋め戻していた。へー、焚き火の後始末てああやるのか。異世界物を読んで異世界知識は豊富だが焚き火の後始末なんて特に書いてないから知らなかったよ。出発準備を整えるとキャラバンはキャンプ地を後にした。


 昼頃には街が見えてきた。街は石造りの城壁に囲まれており大きな門がある。やっぱり俺の異世界知識は正しかったな。世界史で勉強した中世の城塞都市にそっくりだ。


 門は内側に大きく開いている。城塞内の建物の扉も内側に開いてるね。俺が見た異世界アニメだと扉は日本と同じで外開きだと思ったけれどここでは違うらしい。門を開けたら外にいた人とぶつかって女性に介抱してもらって出会いが始まるシチュエーションはここでは無理かな。異世界あるあるで楽しみにしていたのにね!(注3)


 キャラバンは門で検査を受けてそのまま中に入る。俺はキャラバンの一員だからか何も言われなかったな。


 キャラバンは大きな建物の前で解散のようだ。俺はどうしようかと思っていると、隊長とキャラバンの商人らしい人と一緒に来て何やら喋っている。話がまとまったのか、付いて来いて言われているようなので二人の後を付いていく。迷子にならないように魔法使いさんが俺のロープを持っていてくれる。


 着いたところとは別の建物に入った。今夜の宿だろうか?建物の中の人と隊長と商人が何やら話している。話が終わると呼び寄せられたのでそちらに連れて行かれる。宿の人になにか言われたが全くわからない。魔法使いが宿の人にロープを渡した。ここからは宿の人が案内してくれるようだ。


 俺は宿の人に付いていくと地下に降りていってとある部屋の前で止まって、部屋の中に入れとジェスチャーするので中に入った。


 中は、一人用のベッドと桶が置いてあった。どうやらここが今夜の寝床らしい。


「案内してくれてありがとう!」


 俺は特に何もすることはないのでベッドに横になった。


 宿の人はそれを見届けるとドアを閉めて去っていった。丁寧に鍵もかけてくれた。


「セキュリティーも万全だね!」


 晩になってドアに付いていた小さな扉が開いて食事が差し出された。これは日本にもあるとあるラーメン屋の味集中カウンターみたいな仕組みだな!宿の人の気遣いだろう。


 俺は早速、トレーに乗っている硬いパンと硬い肉と薄い味の具のないスープを食べたり飲んだりした。


「これぞ異世界て感じの食事だね!最初はどうかと思っていたけれど寝泊まり食事付きとは待遇が良いね!」


 食後は特に何もすることもないのでこれからの異世界無双計画を練りながら俺は眠りについたのであった。


 翌日の朝食は硬いパンとハムだけであった。ドイツ語の授業で講師がこぼれ話で言ってたがドイツでは朝は火を使わない料理を出すという。日本みたいに温かいご飯や味噌汁みたいなものは出さないらしい。それみたいな感じかなと硬いからゆっくりと食べた。


 朝飯食べてしばらくベッドで横になっていると宿の人がやって来て、付いて来いという。他にも二人ほどいるが護衛かな?この世界は物騒だもんね!


 ちょっと広間みたいなところに連れて行かれて、真ん中にある席に座るように言われたので座る。


 少し待っていると奥の扉が開いて三人ほど人がやってくる。手に本を持っていたりする。俺の目の前にある長机に三人が座った。真ん中の人が他の人より立派な服を着ているので偉い人かな?


 後ろの扉から昨日の冒険者の隊長さんと商人さんがやって来て俺の左手にある席に座った。


 何が始まるのだろうか?もしかしたら勇者判定とかかな?ワクワクするね!


 眼の前にいる偉い人が何やら喋ると、隊長さんと商人さんが喋り始めた。偉い人は聞きながら頷いている。


 きっと俺の凄さをアピールしてくれているに違いないね!


 隊長さんと商人さんが話し終えると、今度は俺に向かって偉い人が語りかけてきた。もちろんサッパリわからない。


「何を言ってるのかわからないよ」


 と肩をすくめながら言ったよ。本当に分からないから仕方ないね!


 前の三人が何やら話し合っていたが、話し合いは終了したようだ。


 偉い人がなにやら俺に言ってから隊長さん達になにか言って、立ち去ると他の人達も立ち去っていく。俺は宿の人に連れられて別の部屋に行くと服を脱ぐように言われた。これは冒険者ギルドへの入隊検査のようなものかな?


 服を脱ぐと、別の服に着替えるように服を渡される。色はベンガラ系の赤い色だ。三倍速くなるて奴だね。俺は着替えるとまた別の場所に行って今度は皮で作られたチョーカーを首に付けてくれた。なかなか格好いいね!認識番号みたいなプレートが付けてあるから冒険者のドッグタグ見たいなものだろうね!


 今度は外に連れられていき馬車に乗るように言われた。今度は屋根付きの箱馬車じゃないか。中には両サイドにベンチがあって窓には鉄格子が嵌っている。なんとも防御力が高そうだ。オーガが出たりするから防御力は必須だね!


 中には同じ色の服を着た人たちが何人かいた。みんな強面で強そうな感じだ。きっと冒険者志望の新人だろう。俺は異世界の事と冒険者の事は詳しいから頼りにしてくれてもいいよ!


 そんな事を話しているうちに馬車は走り出した。



(注1)異世界言語理解系チートがあると話が早い。作者も便利に使っています。


(注2)馬車には色々な種類があります。よく混同されるのが箱馬車と幌馬車。箱馬車は名前の通り箱型の屋根付き馬車で全体が木製で屋根は平面になっています。上に荷物を載せたり人を載せたり出来たりする馬車もあります。西部劇の駅馬車がよく知られた形です。幌馬車は荷馬車に荷物が濡れないように簡易的に幌で屋根を付けたもので人が屋根に乗るようには出来ていません。西部の開拓民が移動に使ったのが有名ですね。


(注3)現実世界では日本の扉は外開きが基本ですが西洋では内開きが基本になっています。鎧戸とか例外はあります。作者の西洋風ファンタジー作品で特に説明がない場合は内側に扉が開きます。馬車の扉は外開きの設定になっています。上げ下げ窓では内側が上げ下げする窓です。


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