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異世界小説で異世界を学んだので異世界で無双します!?(上)

 俺はこの春から都内の大学に通い始めた学生だ。受験は大変だったが晴れて大学生となり青春を謳歌しているところだ。


 学食で昼飯を食べた昼下がり、腹ごなしに散歩していていると突然地面が光りだした。光っている地面を見ていると薄っすらとゲームやアニメとかでよく見るような魔法陣が浮かんでいる。


 中学生の頃からウェッブ小説で異世界物ばかり読んでいる俺にはピンと来たね!これは異世界転移ではないかと?!いや、そうに違いない!!


 喜びに打ち震えているうちに俺は魔法陣に飲み込まれてあっさり気を失った。


 …………。



 暗転から意識が戻って、俺は薄目を開けながらここぞとばかりに異世界物では定番のあの名台詞を言った。


「知らない天井だ……」


 どうだ言ってやったぞ!!


 …………。


 あれ?天井が無いですよ?おかしいな?澄み渡るほどの青空ですよ??周りを見渡したらなにもない丘だ。近くに森が見える。そして誰もいない……。


 オーマイゴー!、勇者召喚とかいうやつじゃなかったのかー!

 俺の予想ではどこかの城の祭壇の中かと思ったのに大きく外して恥ずかしー。幸い誰も見て無くて良かったー。


 落ち着け俺!燃えよ俺のシナプス!!いや、燃えたら不味いだろ!!まだチート能力があるかもしれないじゃないか!!自称神様とかには会わなかったけれど……。


 そう言えば、こういう場合は神様に会ってチート能力を貰って転移するパターンが普通のはずでは無かったか!?神様の都合が合わなかったのかな?


 うーん、色々考えても先に進まないし、とりあえずアレやっちゃいますか!?


「ステータスオープン!!」


 …………。


 あれれ?おかしいですよ?何も出ないですよ?


 それから思いつく限りのパターンで血反吐を吐く勢いで色々やってみたがステータスは一向に出なかった。何かの間違いだろうか?俺の異世界知識は完璧だから、きっと現地の言葉なら出るとかじゃないかな!


「叫びすぎてのどが渇いた……」


 水を探さなければと丘から見渡すと川がある。今の俺は着の身着のままで何も持ってないからね!サバイバルには水は重要だ!!


「ラッキー!これで水問題はまるっと解決だっ!」


 丘を駆け下りて川に向かう。見た感じは四万十川(しまんとがわ)のような清らかな清流てな感じだ。俺は喜び勇んで駆け寄って岸辺に辿り着いた。


 水面を覗いてみるが川底まで見える透明度!!川面が陽光に反射してキラキラしている。これは間違いなく飲めそうだ。数々の異世界物を読んでいるので俺は知っている!異世界の川の水は飲料可能だから間違いない!(注1)


 手で(すく)って迷いなく水を飲んで見る。


「おいしー!!」


 冷たくて清らかな水の味。これなら何杯でも飲めるね!と言うわけで喉も乾いていたしガブガブと腹一杯になるまで水を飲んだ。


「生き返るー」


 俺は暫く岸辺でラッコの様に横になって休むことにした。


 俺はこれからの事を考えた。異世界の定番としてまずは街道を見つける。そして轍を見つけて馬車があるとわかる。馬車を見つけて載せてもらって街に行く。街に行ったら冒険者ギルドで冒険者登録してあとは地球の知識で異世界無双ですよ!大金を手にしたら住所不定日雇い労働者なのに勢いで後先考えずに奴隷を買ってハーレムを作ってバラ色の人生だ!これで行けるな!数々の異世界転移者が辿った王道なので間違いないな!とこれからのことを考えてニマニマした。


 そんな楽しい事を考えている時に急にお腹に違和感が……。なんか下痢っぽい症状。どんどんお腹が痛くなってくるぞ!?便意が止まらない!!


 俺は急いで適当な草むらに駆け込んだ。


 用を足しても腹痛が一向に収まらない。何度も繰り返して用を足して数時間。昼に食べたものまで全部出してしまったようだ。口と肛門がダイレクトに繋がっている気がする。用を足しすぎて尻が痛い。酷い目にあった。水しか飲んでないのにおかしなものだ。こちらに来てからは何も食べてないのにな。大方、学食で食べた昼飯が当たったんだろう。安過ぎるしおかしいと思っていたんだよな!帰ったら文句を言ってやらねば!(注2)


 まぁ、いいや。腹痛も収まったので問題ない!


 腹の中のものは全部出してしまったしお腹空いたな。食料を調達しないと。俺が読んだ異世界物では石を投げて投石スキルで獣を狩ったりするんだよな。よし、真似してみよう。


 河原で適当な小石を拾い集めてポケットに入れると、さっき見えた森の方に向かった。森なら獣がいそうだしな。


 森に入った所で動く何かを見つけた。そっと近寄ってみると見た目はウサギで角が生えている。これが噂のホーンラビットか。冒険者が最初に狩る獣の定番だな。


 俺は小石を手に握って、頃合いを見て投げつける。唸れ!俺の投石スキル!決まったな!


 当たったように見えたがウサギはそのまま逃げていった……。


「話が違うぞ……。簡単に狩れるはずなんだが?」


「俺の投げた石が剛速球すぎて風切り音で気が付かれちゃったか……。仕方ないな!」


 俺は失敗を反省して成長する漢だ。この失敗が明日へのレベルアップに繋がるのだ!


 気を取り直して獲物を探す。今度はダークグリーンの獣を見つけた。蛙かなにかの獣かな?よし、こいつを仕留めてレベルアップするぞ!ウサギより大きいから当てやすそうだ。


 俺は石を握りしめて頃合いを図る。あの獲物が向こうを向いた瞬間を狙うのだ。よし!今だ!!俺は勢いよく石をぶん投げた。唸れ!俺の剛速球!!


 山なりに飛んだ石が獲物にボコと音を立てて当たった。


「やったか!?」


 俺は当てたことで有頂天になって喜んだ。


 喜んでいる俺の直ぐ側で唸り声が聴こえた。俺は唸り声がする方をゆっくり振り向くと、さっき倒したはずの獲物が近づいてきている。二足歩行で身の丈は三メートルぐらいは有りそうだ。片手には棍棒らしきものを持っていて、頭には角が生えていて凶悪そうな顔をしている……。


「お、お、オーガだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 何てことか、あいつオーガだったのか!しゃがんでいたから分からなかったぞ!!


 俺はとりあえず逃げた!!逃げ足だけは子供の時から早かったのが自慢だ。これで誰にも追いつけられなかったのだ!!


 だがあいつは追いかけてくる。まったく差が開かない。そうかあいつの方が歩幅が大きいのか!不味いぞ!


 俺は森を抜けて丘を下って走る。走っているうちに街道らしきものが見えてきた。


「あそこに行けば誰かいるかも!」


 ちょうど馬車がやって来た。形からして幌馬車か。幌馬車が三台連なっている。いわゆるキャラバンてやつかな?周囲には冒険者ぽい帯刀している人々が一緒に歩いて進んでいる。俺はそこへ目指して走った。


「おーい!助けてくれ!!」


 警戒していた冒険者たちが俺の声に気がついて一斉に抜刀する。


「俺は敵じゃないし、武器は持ってない!」


 俺は敵対してないと両手を上げながら走って、後方を指さした。


 冒険者達がオーガに気がついたようでそちらに身構える。杖を持った人が前に出ると何かを唱え始めた。魔法陣が空に浮かび杖からなにか飛び出してオーガに当たって爆発した!


「あれは、もしかして魔法かな!?」


 やっぱり、ここは剣と魔法の世界だったのか!と俺は馬車の影に隠れながら冒険者たちの戦いを見守った。


 大剣を持った冒険者が斬り込んでいく。振り回す音が聞こえるほどだ。オーガを包囲してオーガの棍棒を巧みに回避しては攻撃をする冒険者達。


 小一時間ほど戦ったであろうか、最後に大剣を持った冒険者がオーガの首を撥ねるとオーガは絶命した。やっぱり冒険者かっこえー。俺もああやって無双するんだ!!


 馬車の影から出て見ていると、負傷した冒険者にさっきの魔法使いの人が手を当てて何やら唱えると患部が光って傷が治っていく。へー、あれが治癒魔法ていうやつだな!


 そこへ冒険者の隊長みたいな人がこっちにやってくる。


「助けてくれてありがとう!」


 俺がそう言ったとたんにいきなり殴られた。グーで。俺は吹っ飛びながら「なんで?」と思いながら気を失った。




(注1)川の水は普通はそのままでは飲めません。一見綺麗に見えても川の上流に動物の死骸や糞尿が流れ込んでいる場合もあるために煮沸しないで飲むのは危険です。細菌によっては煮沸してもだめな場合があって、その場合は細菌もろ過できるフィルター付きの浄水器を使わないと危険です。カナダの森林地帯を旅行する人は途中でコンビニも無いので水の確保のために浄水器を持ち歩いているそうです。安全に飲める水は湧いている清水(水源)なら直接飲んでも大丈夫な場合もあります。(それでも確実ではありません)


(注2)学食に対する熱い風評被害。


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