空っぽの少年~狂った歯車~
その日から少年は悩み続けた。
なぜ自分に武道の才能があったのだろう、なぜ姉が傷つかねばならないのだろう…
その悩みは多少なり、少年の視野を広げた。
門下生からの嫌がらせ、同級生との距離感、それら全てが気になるようになってきた。次第に少年は自分の存在意義が分からなくなってきていた。
勉学はそこそこ、武道の才能はある、勝利を掴む度みんなから褒められた。だがそれでも何かが少年の心に引っかかっていた。
そうして悩んでいる最中も、日に日に元気を無くしていく姉。
それでも少年の姉は、少年を罵倒することはなかった。むしろ『心配かけてごめん』と謝られた。
両親からの扱いが逆転しているにも関わらず、姉は変わらず少年を気遣ってくれていた。それは優しさと言えるものかは分からない、それでもそんな姉と話し合ってる時だけ少年の心にある引っかかりは取れた。何故かは分からない。唯一分かっていたことは、少年にとって姉だけが心のより所だったということ。
1人になる度悩み、苦しみ、自分が何のために生きてるのか、答えを考え続けたある日帰宅すると、異様な雰囲気を感じ、リビングへ向かった。
そこには動かなくなっている姉と、息を荒くして拳を握っている父親と、何かに怯えている母親の光景があった……
空っぽの少年~虚無~ へ続く