第92話 消えた鍵
この空間で、道は行き止まりのようだった。全体をくまなく回ってみたが、道らしきものは何処にもない。岩が並んでいるだけだ。
一見すると……その建物のような岩は、人工的に作られた祠のように見えなくもない。
壁の一部に人一人分くらいの大きさの四角い溝があり、丁度手の高さの位置に小指の先も入らないほどの細長い穴が空いている。
元々はそこに何かがあったのだろうか、穴の周囲は傷だらけで、光で照らすと光るものが付着していた。
これは……何だろう。金属?
「これは扉だね。中に何があるんだろうね?」
ナナイは穴から中を覗き込みながら、首を傾げた。
無論、そんなことをしたって中の様子が分かるはずもない。
全部の岩を調べたが、どの岩も同じような感じで、四角い溝と細長い穴が設けられているのを見つけることができた。
穴を鍵穴と仮定すると、この扉を開くためには鍵が必要だということになる。
その鍵が何処にあるのかは分からないが、少なくともこの洞窟の中には存在しないということは明らかだ。
僕たちは、ほぼ一本道とも言える道を通って此処まで来たのだ。途中に鍵が落ちていたとして、それに気付かず素通りすることはまずありえない。
「シルカちゃん、此処、錬金術で開けられそう?」
「……やってみる」
あまり気は進まなかったが、言われた以上はやるしかない。
僕は扉に掌を触れて、意識を集中させた。
と。
ばちん、とひっぱたかれたような衝撃を掌に感じ、僕は反射的に手を引っ込めた。
……駄目だ。この岩、見た目は普通の岩っぽいけど強力な封印が掛けられている。僕の魔力じゃてんで敵わない。
この分だと、魔術で破壊しようとしても通用はしないだろう。
此処を開けるには素直に鍵を探す必要がありそうだ。
「どう?」
「駄目だね。強力な封印で守られてる。無理矢理開けることはできないな」
「……ということは、此処を開ける方法があるってこと?」
「多分……鍵があるんじゃないかな。鍵穴っぽいのがあるし、穴の周囲に傷が付いてるから、此処に何かを差し込んでいたというのは間違いないと思うよ」
「鍵……ねぇ」
うーん、とナナイは唸った。
「そんなもの、見てないよね?」
「見てないな。此処までは一本道だったし、きっとこの洞窟にはないんじゃないかな。誰かが持ち出したか、何処かのダンジョンに隠されてるか、そんなところだと思うよ」
「ダンジョンかぁ……」
残念そうに、彼女は岩から離れた。
周辺をぐるりと見回して、溜め息をつき、言った。
「……分かった。この扉のことは、各地を回って調べてみる。鍵が見つかったら、また此処に来ることにするよ」
「それがいいと思うよ」
世界中を巡って、有力な情報を手に入れてきてほしいと思う。
僕は店で応援してるよ。
「ありがとうシルカちゃん、付き合ってくれて」
ナナイは笑って、入口の方を見やった。
「街に戻ろっか」




