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第一話 ミカネ荘の温泉に出没注意報!

 第1話 ミカネ荘の温泉に出没注意報!?


「ふん、ふふん、ふ~ん」


 私は鼻歌を歌いながら、ミカネ荘の、静かな夜が見渡せる長い廊下を歩いていたわ。


 どこに向かってるかって?ふふ~ん。これから温泉に入るの。


 あったかいお湯につかって、一日の疲れを流して~。それが、私にとって人生で一番の……し・あ・わ・せ。


 ……だったはずなのよ。


   ―――


 私の脱衣は、思い切りがいいわ。バババー、と上から脱ぎ捨てていって、そのまま下着もなにもかもを脱衣所の床にひろげたまま、ガララーと浴槽へのドアを開く!大きく息を吸って、温泉特有のにおいをおなか一杯に吸ったあと…。


 フッ、と息をはきだした瞬間がスタート!


 滑らない程度に浴槽のタイルの上を蹴って走って、大きな温泉にジャンプしてとびこむ!


 そうするとね、バシャアアアアン!と水しぶきがたって、なんだかなにもかも気にならないくらい爽快な気分になるの。


 うふふ。なに?最初に、体を洗わないとほかの人に失礼じゃないかって?あっはっは、心配いらないわよ。ミカネ荘って名前で、たしかにたくさんの部屋はあるけれど、私はたった一人でここにすんでるの。だから、誰の人目をきにする必要もないし――。


「あの~、ミカネ荘ってここからどっちの方向にあるんでしょうか?」


「あっはっは、あんたって、おかしいやつねえ。ここよ、ここ。ここがミカネ荘。まあ、どうせ、一人でさびしいし、ゆっくりしてらっしゃい――ってあれ?」


 人の声?ていうか、今のひくめの声……まさか……。


 私は、おそるおそる、いつのまにか真横にピタリと同じ方向をむいて湯船につかる、その人影をみた。


「はい、よかったです。知らないおばあさんがこの場所を紹介してくれたんですが、まったく外の世界にくわしくないから道にまよっちゃって。しかも、たまたまとはいえ、到着早々、こんないい温泉にはいれ――」


「このド変態いいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!」


 なんで、あきらかに旅をしてきた感じのくたびれた服をぬがず、まるごと湯船につかってんの!?


 なんで、当たり前のように、人のお風呂に侵入して、当然のような顔してんの!?


 なんで、こんな女の子みたいにかわいい見た目とぼうっとした瞳をしているの!?まあ、そこは関係ないんだけど……。


 私は、たんたんと言葉をしゃべりはじめた謎の初対面男子しょたいめんだんしの頬を、かつてないほど全力でビンタした。


   ―――


 これが、私、ミハネ・ツバサと、まるで、脳みそがないんじゃないかっていうくらい、性欲のなさそうな男子、ユウとの最悪な出会い。

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