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前説2

俺、こと「加藤大輔」について、まずは語らせてくれ。

俺は四国の片田舎で開業医の次男坊として生まれた。


実家はまあまあ裕福だったのでなに不自由なく生活してきた。

幼いころからやれ塾だ習い事だ、は散々行かされたけどね。


でも、母親の意識は出来の良い兄貴に向かっていたので、

上手にサボリングしていたさ。おかげで医学部なんて雲の上だったけど・・・


真面目が額に張り付いているような父は、子供の事など気にして無いようだった。

参観日も、運動会も、一度も来てもらったことはない。


まあ、親父どのの頭の中の8割は仕事のことで、残りの2割は鮎の友釣りと、

磯からの尾長グレ釣りにしか興味がない。

引退したら四万十川の近くに引っ越して、魚と知恵比べしたいらしい。

母親は「一人で行ってください。」なんて言っている。

ある意味、ハマちゃん並みに魚好きで人畜無害の良い人なんだ。


年が二つ離れた兄貴は、そんな真面目な親父の血を色濃く受け継いでいるようだ。

あー、兄弟仲は良いと思う。アニキは基本優しいんだよね。

俺のことを落ちこぼれたダメな弟だと思っている節がある。

ま、その通りなんだけどさ、我が家の親戚一同から見たらね。

兄貴の俺に対するイタワリようが、ちょっと痛いんだよね。

あの、一応ちゃんと仕事もしてるし、納税もしてる社会人なんだがなぁ・・・


兄貴は実家の近くの大学病院で勤務医をしている。まあそのうち実家を継ぐんだろうな。

嫁さんも美人で出来た人だし、カワイイ甥っ子もいる。

昭和の時代に石坂浩二さんがやってたようなホームドラマそっくりな

完成された幸せそうな一家だよ。ホント。関係者ながら、ちょっとムカツク(笑)


やっぱ、男は仕事と経済力ですかねぇ・・・・

俺?ははは、聞くなよ。魔法使いじゃねぇけど、それに近い。

小学校、中学校までは学力も順調だったんだけどな。


高校入って軽音部に入ったのが転機だったなぁ。

自宅の机に向かったら、参考書開くより楽譜開いてた。

鉛筆持たずに、ピック持ってたし。

ペンだこ出来ずに左手の指先硬くなるまでギター弾きまくってた。

それなりに、モテた気もする。ファンレターも貰ったこともある。

でも、すべて、過去の思い出だよ。


私立の大学の薬学部になんとか滑り込んだけど、

基礎学力が無いからついていくのにやっとだった。

2回も留年したよ、一度目は生薬学と有機化学がアウトだった。


もう一回は卒業試験がパスできなくて卒業延期。

4年制薬学部の時代だったのに、6年も行ったぜ。あはは。

母親からは散々嫌味言われたけど、それでも学費は出してくれた。ありがたや~

兄貴?兄貴様は優秀だからね。国立大学医学部でございます。


卒業と、国家試験対策に精一杯で就職活動なんかしてなかった俺。

病院とか調剤薬局とか、たぶん無理。性格的に無理。

コツコツと正確に調剤するとか、無理だよねぇ・・・・

どうしたもんかと、フラフラしてたら、

大学の時の軽音サークルの先輩から声がかかった。


「ウチに来ないか?」


「外資の医薬品メーカーなんだが、手術用具やら消耗品、コンタクト、目薬、人工皮膚なんかを取り扱ってるんだ。」


「ちょうどな、四国は人がいなくって、困ってるんだよ。」


「誰も行きたがらなくて・・・おまえ、四国出身だったよな。」


「はぁ・・・いいっすけど、堅苦しいの苦手ですよ、俺。」


「うんうん、大丈夫、四国の担当お前ひとりになると思うから。」


「えっ?」


「ウチな、ちっちゃい会社やねん。」「本社はデカイんやけど、日本支社は小っちゃいんよ」


「ウチM&M(マリリン&マリオン)の子会社やねん、本体が51%出資して、国内メーカーが49%出資してる会社やね。」


「えっ?M&Mっていったら、大きい会社ですね。」「小っちゃくはないでしょ。」


「それがな、今、本社は日本での商売のやり方を研究中なんよね。」


「なので、コンパクトにして、国内メーカーやり方ってうかノウハウを吸収する時期なんよ。」


「いずれは、本体が上陸するやろうけど、それまでの地ならし的意味合いがあるんよ。」


「へぇ~そうなんですか。」



いろいろ迷ったけど、結局お世話になることにした。




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