表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
カノン(伊咲貴音音楽教室)  作者: FRIDAY
弐 貴女へ贈る音楽
30/57

気まずさの中で

 全員のわかりやすいところに集合、ということで場所は高校の正門前になった。時刻は午前十一時。


「――あ」

 正門の前には既に、戸塚が立っていた。

 俺が思わず上げた声に気付いて、戸塚がこちらを見る。

 そして同じく、あ、という顔をする。


「「あの」」

 声が被った。慌てて、

「「えと」」

 また被った。今度はお互いに口を閉じ、譲り合いの態勢になる。視線での戦いの結果、俺が口火を切ることになった。

「……えーっと」

 とは言ったものの。

 一体どう話を続ければいいのか。


「と、戸塚って、スキーはどれくらい滑れるんだ?」

 話題に窮した俺は、喫緊の事柄をネタにすることにした。咄嗟の判断だったが、状況に即した選択だったと思う。


「俺は小学校中学校にもスキーの授業はあったから、転ばない程度には滑れるけど」

「私は」

 果たして戸塚は、答えてくれた。こちらは見ていないが、ぽつぽつと話し始めてくれる。

「小学校のときは、スキー授業があったよ。中学の時はなかったけど、仲のいい親戚の子にスキーとか大好きな子がいて、その子と一緒によく行ってたから、苦手って程じゃないかな。得意でもないけど。スケートもよくやったよ」

「へえ、スケートか……スケートはやったことないな」

「要領はスキーと大差ないよ」

 そういうものなのだろうか。でもスケートリンクは平坦だし……まあスケートはともかく、どうやら戸塚とだいぶ普通に会話できていて、安心した。


 だから、というわけでもないのだけれど、これで言い出せるだろうか。戸塚に、頼まなくてはいけない――そう思い、意を決して俺が口を開いたとき、おぅい、と知った声がかかった。

 なんだ、と見ると思った通り、やや遠く離れたところから月地が手を振っている。


 こちらも手を振り返すと、月地は両手を口の周りに、メガホンのように広げて、

「車はぁー、近くの駐車場にぃー、停めてあるからぁー、こっちまで来てくれぇー!」


 言ってることはわかった。だが今はちょっと間が悪かった……空回りして着地点に窮している俺の決心など露知らず、わかった、と叫び返した戸塚がこちらを向いて、「行こ」と歩き出した。

 ああ、と頷きながらも、俺は悟られないようそっと吐息する。


 上手くいかない……でも、絶対に逃げてはいけない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ