気まずさの中で
全員のわかりやすいところに集合、ということで場所は高校の正門前になった。時刻は午前十一時。
「――あ」
正門の前には既に、戸塚が立っていた。
俺が思わず上げた声に気付いて、戸塚がこちらを見る。
そして同じく、あ、という顔をする。
「「あの」」
声が被った。慌てて、
「「えと」」
また被った。今度はお互いに口を閉じ、譲り合いの態勢になる。視線での戦いの結果、俺が口火を切ることになった。
「……えーっと」
とは言ったものの。
一体どう話を続ければいいのか。
「と、戸塚って、スキーはどれくらい滑れるんだ?」
話題に窮した俺は、喫緊の事柄をネタにすることにした。咄嗟の判断だったが、状況に即した選択だったと思う。
「俺は小学校中学校にもスキーの授業はあったから、転ばない程度には滑れるけど」
「私は」
果たして戸塚は、答えてくれた。こちらは見ていないが、ぽつぽつと話し始めてくれる。
「小学校のときは、スキー授業があったよ。中学の時はなかったけど、仲のいい親戚の子にスキーとか大好きな子がいて、その子と一緒によく行ってたから、苦手って程じゃないかな。得意でもないけど。スケートもよくやったよ」
「へえ、スケートか……スケートはやったことないな」
「要領はスキーと大差ないよ」
そういうものなのだろうか。でもスケートリンクは平坦だし……まあスケートはともかく、どうやら戸塚とだいぶ普通に会話できていて、安心した。
だから、というわけでもないのだけれど、これで言い出せるだろうか。戸塚に、頼まなくてはいけない――そう思い、意を決して俺が口を開いたとき、おぅい、と知った声がかかった。
なんだ、と見ると思った通り、やや遠く離れたところから月地が手を振っている。
こちらも手を振り返すと、月地は両手を口の周りに、メガホンのように広げて、
「車はぁー、近くの駐車場にぃー、停めてあるからぁー、こっちまで来てくれぇー!」
言ってることはわかった。だが今はちょっと間が悪かった……空回りして着地点に窮している俺の決心など露知らず、わかった、と叫び返した戸塚がこちらを向いて、「行こ」と歩き出した。
ああ、と頷きながらも、俺は悟られないようそっと吐息する。
上手くいかない……でも、絶対に逃げてはいけない。




