再会
本日二作目です。
サブタイトル、考えるの苦手です。
「初めまして。松元博人です」
松元さんは和樹さんの幼馴染。
なんでも、『和樹に彼女が出来るまで、俺も彼女を作らない』と、宣言しているそうで、その誓いは守られているらしい。
「それにしても、雰囲気のいい店だね。飾られている絵が好い感じだ・・・」
喫茶店“小夜曲”のいつもの席。飾られている絵も以前と変わらず、砂漠の宮殿の絵。
私がこの絵を初めて見たとき、まだ前世の記憶は蘇えっていなかったけれど、強く惹かれた。
前世の記憶が蘇えっていた和樹さんと由美子先輩はかなり驚いていた。
松元さんは・・・、どちらでもないようで・・・。
てっきり、前世で関係がある人かと思っていたけど、違うのかな?
「あれ?もう来ていたの?私、時間間違えていた?」
由美子先輩が慌てて、席にやってきた。
「いや、俺たちも少し前に来たばかりだから。幸田さん、コイツ俺の幼馴染の松元博人。博人、こっちは大学時代からの友人で、同期の幸田さん」
「初めまして、幸田由美子で・・・す・・・」
「・・・松元です・・・」
不思議な沈黙が二人の間に流れている・・・。
「明音、注文は何にする?いつもの?」
私と違って、見詰め合っている二人の事が全く気にならないようで、和樹さんが聞いてきた。
「あ・・・、うん・・・」
私は、この二人の事が気になってしょうがない。
「幸田さんは明音と同じのでいいよね。博人は?」
「・・・ん?ああ・・、任せる・・・」
「今日、二人を呼んだのは、これに署名してを貰おうと思って」
そう言って、和樹さんが『婚姻届』とかかれた用紙を出した。
すでに、和樹さんと私の名前は記入してある。
「『判子を持って来い』って言ったのはこのためだったのね・・・。まぁ、予想はしていたけど。私でいいの?」
「ええ、和樹さんと相談して決めたんです」
前世の私達を知っている由美子先輩にお願いしたかった。
「・・・ついに、お前も結婚か・・・。なかなか彼女が出来なくて心配したぞ」
「・・・お前なぁ・・・。俺と同じ歳なのに、保護者みたいな発言はやめろよ・・・。これで、お前も安心して彼女作れるな」
和樹さんが、用紙に署名している由美子先輩へと視線を移した。
二人の署名がされた用紙を、和樹さんは丁寧に鞄の中にしまった。
「じゃ、今から役所に行って提出してくる。支払いは俺が済ませておくから、二人はゆっくりしていってくれ。行こうか、明音」
今から提出?
「え?和樹さん、待って。由美子先輩、松元さん、ありがとうございました」
慌てて席を立ち、和樹さんの後について行く。
「ねえ、和樹さん。松元さんも、前世で一緒だったの?」
「ああ。博人は前世で俺の姉だったんだ。病弱で、明音と会う前に亡くなってしまった・・・。前世の幸田さんは、元々姉の護衛だったんだよ・・・」
「絵を見て、驚いた様子が無かったから違うのかと思っていた・・・」
絵自体は気に入っているようだったけど。
「宮殿から外に出ることは無かったからね。実際にあの風景を見たことが無いんだ・・・。彼女が見ていたのは、違う角度から描かれた絵だったから、気付かなかったのかもしれない」
「和樹さんはいつ、松元さんが前世のお姉さんだと気付いたの?」
和樹さんが前世を思い出したのは、私と初めて出会った直後だったはず。
「先日、明音のことを報告するために電話した時。頭の中に、今までぼんやりとしか浮かんでこなかった姉の姿が鮮明になったんだ。それで、ああ、コイツが俺の彼女の事をすごく気にしていたのは、前世の明音にすごく会いたがっていたのに、それが叶わなかったからだって気付いたんだ・・・」
私が松元さんに、和樹さんや由美子先輩ほど懐かしさを感じなかったのは、前世で出会っていなかったからなんだ。
「松元さんは、和樹さんが前世で弟だったって気付いているかな?」
「いや、まだ、気付いていないだろう。でも、近いうちに思い出すんじゃないかな。幸田さんが前世の想い人だったことに気付いたようだから・・・」