婚約報告
長いこと更新出来ずすみません。
昨夜の飲み会は、恥ずかしかった・・・。
だって、和樹さんが皆の前で、
「明音、少し遅くなったけど、婚約指輪」
そう言って、今まではめていた指輪を外し、新しい指輪をはめてくれたのだ。
参加していた女性社員の間から、色々な感情のこもった「きゃ~~」と言う悲鳴が聞こえた。
その後、様々な質問に和樹さんは丁寧に答えていった。
「新人歓迎会で“一目惚れ”だったんだよ。幸田さんに邪魔されて、なかなか話す機会がなかったけどね。偶然、彼女が休憩スペースに一人でいるのを見かけてね、お茶に誘ったんだけど、社交辞令だと思われていたんじゃないかな?だから、直帰の仕事が早く終わった時、待ち伏せしてたんだよね。話をして確信したね。“運命の相手”だって。だから、その日のうちに『結婚しよう』ってプロポーズした。翌日には彼女の両親に挨拶にいったよ。もちろん僕の両親にもすぐに紹介したよ」
どこからか、「え~?瀬尾さんってそんな人だったの?思ってたのと違う・・・」なんて呟きが聞こえてきた。
「ホント、昔の瀬尾君からは想像出来ないわよね。大学時代は『女性には興味が無いんじゃないか?』って噂になるぐらい、女性への対応は必要最低限、評価は辛辣だったわね。社会人になって、まぁ、少しは人当たりが良くなったようだけど、性格がすぐに変わるわけ無いものねぇ。作り笑いが怖かったわよ」
「酷いなぁ。幸田さん。僕の事をよく分かっているね。だから、僕の事を試したんだろ?」
「そうよ。可愛い後輩が悲しむのは見たくないですからね。野宮さんを泣かせるようなことをしたら許さん!!」
由美子先輩が抱きついてきた。
「あ、幸田!明音から離れろ!例えお前でも明音に触れるのは許さん!!」
初めは和樹さんの話を聞いてた参加者達も、私を間に挟み、二人が言い合いを始めたころには、
「さ、飲もう、飲もう」
「あ、これ、おいしそう」
「私、すでに胸焼け起こしているんだけど・・・」
「俺も・・・」
「あ、とりあえず。『瀬尾さん、野宮さん婚約おめでとう~』じゃ、食べようか」
と、私達は蚊帳の外。営業と総務の合コンとなった。
「・・・ホント、恥ずかしかった・・・」
「何が?」
背後から声がした。
「!・・・和樹さん。起きてたんですか?」
「誰かさんが腕の中で身悶えているからね。そりゃ、起きるでしょ。で、何が恥ずかしかったの?」
クスクスと笑いながら尋ねてきた。
「昨日の事を思い出したら・・・」
「・・・ん?たくさん愛し合ったこと?」
「あ・・・、いえ・・・、そっちではなく・・・、飲み会のこと・・・」
帰宅後の事を思い出し、顔が熱くなる。
「あ、真っ赤になった・・・。明音、かわいい・・・」
ぎゅうっと抱きしめられた。
「何か恥ずかしくなるようなこと、あったかな?」
「・・・和樹さんが皆の前で惚気たじゃないですか・・・」
私が恥ずかしくなるくらいだから、多分、皆は引いていたと思う。
「そうかな?当然の事を言っただけだと思うけど・・・?それに、あれぐらい言っておかないと、皆に俺がどれほど明音の事を愛しているか伝わらないだろう?幸田が『良くやった』と言ってたから、十分だろう。俺としてはまだ言い足りなかったけどな」
「・・・いえ、じゅうぶんです・・・」
あれ以上、皆の前で惚気られるのは耐え切れない・・・。
「今、何時ですか?」
「ん~、午前7時・・・。どうかした?」
枕元に置いてある時計を和樹さんが確認してくれた。
「まだそんな時間だったんだ・・・。由美子先輩との待ち合わせは午後からでしたよね。じゃあ、もうしばらく寝ます。誰かさんの所為で、昨夜はあまり眠れませんでしたからね」
「ああ、ごめん、ごめん。『明音は俺の嫁!』と宣言できたことが嬉しくて、つい・・・」
全然、悪いと思っていない口調で謝ってきた。
「お願いですから、ちゃんと寝かせてくださいね!」
「・・・残念・・・。じゃあ、こうやって抱きしめていてあげる・・・」
後ろから抱きしめられる。
身長差からか、和樹さんにすっぽりと包みこまれる。
少し高い体温が、すぐに私を眠りへと誘う。
「おやすみなさい・・・」
「ああ、おやすみ・・・。サラ・・・」