トランプ発言における今後の世界情勢について
2016年4月4日現在、トランプ氏は共和党候補として優位を占めている。
マスコミでは過激な発言をもってポピュリズムを操るペテン師扱いの彼だが、忘れてはいけないことがある。
それは彼は、非常に有能な実業家であり愚かな人間ではないということだ。
彼の発言内容はともかく、その思想背景を考えることは非常に興味深い。
そうしてみると、いくつかのキーワードが見え隠れしている。
マスコミであえて使っていない言葉で言うなら「モンロー主義」である。
1823年、第5代モンロー大統領が年次教書で示したものだ。
私の理解を簡単に要約するなら世界(欧州)とアメリカの分離宣言である。
もちろん間違っているかもしれないし、正しいかもしれないが・・・
結局第1次世界大戦まで100年近く、モンロー主義は守られたように見える。
フロンティアの消滅は1890年代、以降は海外植民地を入手するために戦争も起きているがアフリカだけは手を出していない。
この当時、世界=欧州の認識があったのは間違いない。
このためアフリカは英仏西蘭そして独が入り乱れる世界側の認識だったと思う。
このモンロー主義の時代、アメリカは飛躍的に経済発展を遂げている。
1894年には英国を抜いて、工業生産世界一になっている。
生産された製品は世界に向けて運ばれ、売られた。
軍事力は自衛用にもっているが、海軍の戦艦を例にとれば、第一次世界大戦終了時でさえ、英国30隻に対しアメリカ20隻という点からみても世界に比べれば比較的、軍事費の割合を抑えることができた。
さて第1次世界大戦はアメリカは欧州(世界)市場の崩壊を防ぐために戦争に参加し無事に勝利した。
その後にできた国際連盟には議会の反対で参加せず、戦争を勝利に導いたウイルソン大統領、率いる民主党は、国内安定を目指す共和党に政権をゆずる。
1921年から始まる共和党主導のアメリカ大繁栄の始まりである。
ハーディング、クーリッジ、そしてフーバー
いずれも市場に対し国家は関与を少なくする方向の経済政策をとっていた。
その結果が1929年の大恐慌を招く。
(ついでに言えば1924年に移民法が制定されている。)
さて、ここまで読んで気づかれたと思うが、トランプ氏は共和党であり、民主党が行った世界戦略を収束させて国内対処しようとする共和党の伝統的な考え方の類型に過ぎない。
ではなぜ、共和党内部からも批判を受けるほどエキセントリックな発言を繰り返しているのか。
理由は危機感にあると思う。
「危機感」
実際に崩壊寸前の集団のトップに立った時に周囲に対していらだつのが、危機感の不足である。
まだ大丈夫、たぶん大丈夫、だいたいこの段階では詰んでいる。
その前に大きく方向転換しないといけないのだが、組織は一人では動かせない。
ならばどうするか、周囲にあの人間ならやりかねないというイメージを与えておくのである。
これはリーダーにとってはマイナスイメージになることだが、実際に組織を運用する上では使いやすい武器になる。
仮にそのリーダーが「協力しなければ、お前の部局は別部局の下に配置する」と宣言したとしよう。
この言葉に信ぴょう性を与えるのが普段の言行である。
同盟国にすら暴論を吐く大統領が、国内の例えば住宅都市開発省を格下げし国務省と商務省に分割するといったしよう・・・たぶんやるだろうとみんな思う。
それを防ぐべく、住宅都市開発省は自主的に改革をはじめ効率追求を始めることになるだろう。(実際の効率がいいかはどうかは別として)
組織というのはとんでもなく重い鉄の球を転がしているようなものである。
一方向に進めるのは簡単だが、方向を変えるのには大きな力がいる。
前に立てば轢かれる。横から力を加えるのがセオリーだ。
だがそれで間に合わないときはどうするか、進路に石を置くのである。
小石でもいい、その程度でも球は進む方向が歪む。
その瞬間に横からの力を加えれば大きく曲がってくれる、そんなものである。
さて、トランプ氏の発言の意図は今後の国内運営のイメージ付けとして理解するとして、興味深いのは、その間に合わないと判断している事態である。
それが一体何なのかについて考えてみよう。こっちが主題である。
トランプ氏はソビエト連邦の崩壊を予言した人物でもある。
理由はゴルバチョフの指導力・・・当たっている。
私もゴルバチョフが切るべき部分(軍部)を切り切れなかった結果のクーデター発生、威信の失墜、ソ連崩壊へと続いていると考えている。
あの北の大地では「強大な漢」というリーダーのイメージが必須なのだ。
あえて言おう、崩壊する組織を生き残らせるには、死んだ組織は冷酷に見えても切除しなければならない。
さもなければ組織全体がハードワークに陥り、全体が疲労して、全部が死んでしまう。
全部が救えるなら崩壊が起きるような組織になっているわけがない。
さて話がそれた。
彼が起きると思っている事態であるが、今までの言行を注意深く読んでいくと、アメリカだけでの完結した世界を目指しているのがわかる。
現実に考えてみると、アメリカは食料、エネルギー、工業品すべて輸出している。
逆を言えば国内を賄う分は十分に持っている。
よって可能な話である・・・まあここまではいい。
それによってアメリカ以外の世界がどうなるかを考えてみよう。
欧州・・・たぶん混迷の度合いは増すが現状維持
アフリカ・・・たぶん関係なく現状維持
南アメリカ・・メキシコ違法入国以外では触れていないことに注意すべきである。意識としてアメリカの一部に組み入れている可能性が高い。
中東・・・イスラエルに囮になってもらい後は放置、混乱は変わらない。現状維持
そしてアジアである・・・ここだけは激変する可能性が高いと読んでいる。
態度としては中国に対してはアメリカに対して手を出さないなら放置プレイとしているようだ。
その際には今後必ず中国は日韓、アジア諸国と揉めると判断している。
まあ、当たるだろう。
問題はどの程度までやるのか、だけである。
揉めた際にICBMを打ち合うのは勘弁、とトランプ氏は考えているように思える。
そんなバカなと思うだろうが、実際、中華人民共和国は経戦能力が極めて低い。
え、と思うかもしれないが、エネルギー自給率、国内情勢の安定性を考えると年単位での戦争は不可能である。
短期決戦以外の勝利パターンはない。
もちろん現状ではそれはありえない、そうなると怖いのが中国内乱である・・・内乱の結果、核兵器の統制ができるかどうか・・それこそ、核爆弾がISISにでも渡ったらどうなるか・・・
これよりも北朝鮮の方が核拡散の可能性が高そうに見えるが、実はこちらは日米韓で連携が進んでいるように見える。本気で崩壊の兆しが見えた時には、たぶん先制攻撃で核関連施設を抑えて、後は崩壊まで防戦というシナリオに見える。
このとき中国は北朝鮮国境付近のウラン鉱脈を狙って動くであろうが、そのまま占領させて終わり、となると考えている。
現状は良かれ悪しかれ中華人民共和国に崩壊されてしまっては困るのが実情なのである。
つまり中華人民共和国が崩壊したとき次のプレゼンスを示す国がどこか!
現状はアメリカであり、それはアメリカがかつて日本帝国が行った日華事変以後の泥沼戦争を中国でやらないといけないことになる。ベトナム戦争の比ではない。それも核兵器テロの可能性コミで!
誰だって逃げていいなら逃げたくなる状況である。
つまりは、これがトランプ氏が考えている最悪の想定ではないかと考えているのだが・・・読者の皆さんはどう思われたろうか?