ぼく
僕は僕が好きだ。幼い時からそうずっと思い続けてもう十数年たった。しかしまだ思い足りない。
小松 桐哉
身長は平均より高めで体重は多分そこらの女子よりかは軽いかな、顔の偏差値はよく文学美少年と言われるぐらいのメガネイケメンだ。
そんな僕の違うところといえば、自分大好き人間、そのぐらいかな、ただナルシストみたいに鏡見てうひょーとかするような感じじゃないからね僕は。
「桐哉ー、頼まれたの持ってきたけど」
放課後の校庭で声をかけてきたのは幼なじみの
田中 海妃 (たなか まりん)
昔は黒髪清楚美人だったのに今じゃ親顔負けの茶髪バリバリお化粧美人になっている女子高生だ。因みに僕は黒髪だから。
「いつもありがとうな」
幼なじみに頼んだのは同じクラスで少し気になっているやつの写真だ。写真を受け取ると代わりにおやつを渡す。
「ねー、なんでこの子の写真なの?好きなの?」
幼なじみはあまりこの子が好きでは無いらしく僕が頼まなければ話にも行かない。とりあえず毎回聞かれる質問だが、今日はちゃんとした理由でも言っておくか。
「ふむ、そうだな。あの無表情の顔を変えてみたいからかな、そして欲を言えば苦悶の表情にしてみたいからかな。」
ふふっ、想像するだけでゾクゾクしてくるよ。そんな妄想を聞いていた幼なじみの顔は明らかにドン引きしていた。
「その考えはまじでヤバイと思うんだけど」
犯罪だよ、犯罪。と少し怒り口調の幼なじみに大丈夫、彼女しか興味が無い。と付け足すと更にドン引きされた。
「まあ、今日も声かけて色々聞いてみるけど何か聞くことは?」
「もちろん恋愛の有無かな」
彼氏持ちだったらダメだからねと困った表情をすると幼なじみはため息混じりにハイハイと返事をして遠くのイスで待たせていた友達モブと帰っていった。
ああ、明日が楽しみだ。いい結果が聞けますようにと願掛けで僕は校庭を走り垂直に跳んだ。
朝、なんだかソワソワしてたまらないから早朝に走ることにした。朝露の草の匂いが気持ちよすぎて遠くの河原まで来てしまった。
「ここまで来たのは初めてだ。」
早く帰らないとシャワー無しになってしまう。来た道を戻ろうとした時、河原の草むら茂みで何か動くものを見つけた。
怖いもの見たさで茂みに近づくとそれは僕がいつも話していた彼女だった。
「あれ?えーと、同じクラスの‥‥誰だっけ?」
同じクラスという事を覚えていてもらえてることに感激し少し声が上擦ってしまったかもしれないがもう一度自己紹介をした。
「小松桐哉です。よろしく」
その自己紹介に彼女はあまり興味を持たなかったらしく、ああ、そうだったねとしか返してくれなかった。ここで終わらせるわけにはと思って新たな話題を振る。
「ところで何してたの?」
今度は見向きもされなかったけど小声で聞こえた理由に僕の顔は多分にやけが止まらなったはずだけど見られてないよね。
とりあえず手伝うべく彼女の隣に近づいた。彼女の顔は見えなかったけど変なオーラはひしひしと伝わってきた。
しばらくすると用事が終わったのか立ち上がった彼女は手の中にあるものを見て少し微笑んでいた。
「(笑ってる、可愛いな)」
彼女は僕の方を見ると小さくお礼を言って茂みから出ていこうとした。
思ったより早く済んだのでシャワーも浴びれそうだと喜ぶと同時に僕の中に渦巻く感情があった。
襲いたい‥‥
襲いたい襲いたい襲いたい襲いたい襲いたい襲いたい襲いたい襲いたい襲いたい襲いたい襲いたい襲いたい襲いたい襲いたい襲いたい襲いたい襲いたい襲いたい襲いたい襲いたい襲いたい
今すぐその喜びに満ちた顔を苦痛の表情にしてみたい。
後ろ姿の彼女に両手で触れようとした。
‥‥が止めた。
まだ彼氏の有無を確認できてない以上下手に手は出せない。意外とチキンハートだと思った。
「小松君も早く帰らないと学校間に合わないよ。」
振り向いた彼女の顔はいつもの様に無表情だった。僕はそうだねと同意し、彼女にまたと言い来た道を走り出した。
とりあえず学校には間に合いそうだ、幼なじみに自慢をしよう。もし彼氏がいなかったら今度こそ襲おう、無理矢理したら嫌悪感満載の目で見てくれるのかな、ああそれも想像するだけでゾクゾクしてくるよ。
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