第3報告「勧誘は突然に来る」
昨日の入学式から1日たった今日、俺達は部活探しの為、学園の昇降口に向かった
「玲徒は、どんな部活に入りたいのよ?帰宅部?」
薫はニヤニヤしながら話しかけてくる
「なんでだよ、できれば楽な部活かな、スポーツとか無理だし、そう言うお前は?」
薫は自信満々に
「文芸部!」
「悪い聞いた俺が悪かったわ、玲奈は?」
玲奈は俺に背を向けて、こう言った
「帰宅部」
今の流れでまぁ、真面目に一番答えてくれそうなやつが、いや、真面目に答えてはくれたけど、内容が帰宅部って、いや、もう考えるのやめよ....と話をしながら歩いていると、俺達より先に昇降口に居た、リンタロウ事、竜胆太郎、なにやらキョロキョロしてるな、最初に声をかけたのは薫だった
「リンタロウっ!」
「ん?あぁ、お前らか」
リンタロウは振り向きこちらに歩いてくる
「お前それなんだよ」
「お?これか?俺の心よ!」
首から下げたデジカメを手に取り見せる
「リンタロウ、マナーモード?」
「誰が携帯電話っていったよ?!身体震えねぇよ!?」
玲奈の変なボケさえ簡単にツッコミを入れるリンタロウは何かしら、芸人の才能があるんじゃないかと思ってしまう俺
「あ、話がそれたけど、リンタロウって部活決めたの?」
「ん?いやまだなんだよ、悩んでてさぁ、バレー部にするか、テニス部にするか、捨てがたいんだよなぁ」
薫は、そうなんだぁ、と答える
「リンタロウはスポーツ得意なのか?俺は普通くらいだけどさ」
「まぁ、家がそういう習い事を昔から強制してたからな、ある程度の習い事は全部な」
意外にもリンタロウはやる奴なのかも、と思った時だった、玲奈が俺とリンタロウが話してるのをいい事に、首からぶら下がってるデジカメに手を伸ばし、ピッピっと触る
「わっ!?篠山妹っ!やめろっ!」
しかし時はすでに遅し、玲奈と薫はリンタロウをゴミ見たいな目で見る
「あ、あんた、さっきからこんな写真ばっか撮ってた訳ぇ!?」
「なんだ!悪いのか?!可愛い女の子撮ったら犯罪なのか!?」
薫はリンタロウの胸ぐらを掴み前後に揺らす、そして
「リンタロウ、あっちの倉庫近くで水泳部が着替えてた.....激写のチャンス」
「よし来たちょっと行ってくる」
玲奈が指さした場所に向かって一直線に走り去った
「逝ってらっしゃーい」
「な、字が違くないか?妹よ」
「いや、合ってます、さっきのは、嘘ですし」
玲奈はある部活のチラシを薫と俺に見せる
「「ぼ、ボディービルダー部.........」」
俺と薫は、表現し難いくらいに、苦笑いになった
「リンタロウ....合掌」
玲奈は合掌した、リンタロウ、君のことは忘れない、後は任せろ、そう頭に言い聞かせたのだった
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昇降口から桜の花ロードに移動した俺達、今の時期、つまり春になるとこの道の両サイドに桜の花が満開になる、昼の給食の時にこの木の下で食べたりするらしい
「桜の木も凄いけど、人間の数も負けてないわね、うぅ、酔いそう....」
「大丈夫かよ、てか外見可愛いんだからそんなこと言うなよ....」
呆れた顔をすると
「おいシバくぞ、私の頭はダメみたいじゃない!」
「あぁ、わかったわかった、これ以上は周りを巻き込みかねん、今は休戦な、部活探さないと帰れないし」
ちぃっ!と舌打ち、なんなのこの幼なじみ、もうやだ、リンタロウがいない3人で、少し奥まで歩くと、大桜の木の根元に会議用のテーブルを置き、パイプ椅子にどしっと座り、こちらをじっと見てきている
「ねぇ、あの人さっき壇上に居た生徒会長なんじゃ?」
「確かにそうだな、でも、部活の勧誘にしては、一人だし、話し掛けないと不味いかな」
「兄上、せっかくですし、話し掛けてください、何時までもここで居るのも、あれですし」
「ま、まぁ俺だよな、よし、いくぞ」
俺は変な汗を掻きながら、目的地の場所へ歩き出す、すぐにその目的地には着いてしまった、それでも生徒会長はずっと目を離さず見てくる
「あ、あのーー」
俺が先に話しかけようとした時だった
『君は、今の日常に満足しているか?』
「へ、は?」
いきなり突然言われたその言葉、入学式の時に話していた言葉を言われたのだ
「日常だ、私は今の日常に不満がある、楽しくない、まるで作業のように毎日毎日生徒会長職をやる、つまらない、当たり前な毎日を当たり前のように過ごすなど、人間として生まれたのに勿体ないと思わないか?」
最初に話し掛けられた時は一瞬パニクってあれだったけど、今なら大丈夫かも、と、俺は問に答える
「俺は確かに今の日常に満足はしていないです、でも、何か自分自身で行動しなければ、日常は愚か、周りも変わりません、だから、俺は自分の今の日常を変えるために、これから動き出すんです」
何か、吹っ切れたよう、スッキリしたような感じに包まれる、誰かに言いたかったのかも知れない
「君の言う事も確かだ、面白い、部活探しをしていると聞いたが、もう探す必要はない、我が部に入れ」
そこで薫が前に出る
「ぶ、部活入れって、ここは何部なんですか?!さっきから意味わからない事を話してるし、何してるかわからないけど部活なんて」
薫の弾丸トーク炸裂、昔から口は強いからな、そう思っていると
「よくぞ聞いてくれたな、この部活は、日常報告部だ」
その言葉を聞いて、また固まる俺達、確かに今日から日常が、急激に変化させられたような、気がしたのだった。