表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/6

私には二人の幼なじみがいる。一人は美形のタクマ。一人は平凡の真吾。家も近所である私たちは、小さい頃から三人で、仲良く楽しく元気良く、ケンカしながら大きくなった。そんな生活の中で気が付いたことがある。タクマは真吾にベタ惚れで、嫌がる真吾をものともせずに猫っ可愛がりするのだ。高校生となった今でも。


ケータイがメールの着信を知らせ開いてみればタクマからで、今日行くから、と一言。またかよ、と内心でため息をついたつもりが、実際に口から漏れてしまった。


「中原さん、どーしたの?」


隣の席の相原くんは、爽やか系のモテる男で、クラスの中心にいつもいるような人気者。こうして小さく吐き出されたため息さえ拾い上げ、心配してくれる。


「なんでもないの。ごめんね、ちょっと面倒くさいことがあって思わず」

「そっか。なんかあったら聞くから、溜め込まないでね」


そう言って満面の笑みを浮かべると、また明日、と手を振って帰っていった。それを見送ると、もう一度息を吐いてから立ち上がる。


ただいまーと言いながら玄関に入れば、見慣れた靴が二足並んでいて思わず舌打ちする。


「おかえり。もう来てるわよー」

「年頃の娘の部屋に勝手に入れないでよ」

「なによ今更。いつものことじゃないの」

「…まぁそうだけど」


母との無意味な会話を切り上げ自分の部屋の前に立つ。そっと扉に耳を近付けて中の様子を窺うも、ぼそぼそと話す声が辛うじて聞こえるのみで、状況は全く分からない。意を決して扉を開こうとして思い止まり、念のためにコンコンとノックする。一拍置いて、どうぞーとふてぶてしい返答があり、なんで自室に入るのにこんなに気を使わないといけないんだ、と情けなくなった。


「ゆみ、おかえり。勝手にお邪魔しちゃってごめん」

「ただいま。真吾はいーのよ、真吾は」

「おい、俺はダメなのかよ」


なんでだよ、と不貞腐れるタクマに冷たい視線を送ってから制服のスカートの下にジャージを履く。座ろうとしたところで自分の飲み物がないことに気付き、仕方なく取りに行こうと扉へ向かう。彼らには、来客用のカップに注がれた紅茶があるというのに。


「ゆみ、俺コーラな。真吾は?紅茶のお代わりもらうか?」

「なんであんたの分まで持ってこなきゃいけないのよ」

「ゆみ、俺はいーよっ」

「…はぁ。コーラと紅茶ね!」

「よろしくー」

「ゆみ、手伝うよっ」

「いーからお前はここにいろ」

「わっ抱きつくなよ。危ないだろ」


バカップルか。と、タクマにのみ心の中で悪態をついてキッチンへ向かう。おぼんにそれぞれの飲み物を乗せて戻り、なんの考えもなく部屋の扉を開いた。


「・・・っタクマぁーー!!」

「ゆ、ゆみっ」

「お前、戻ってくんのはえーよ。空気読め」


中では床に押し倒された真吾が、首もとに顔を埋めたタクマに身体をまさぐられていた。真っ赤な顔の真吾が不憫で、タクマへの苛立ちが募っていく。


「人の部屋で盛んじゃないわよ」

「こいつがかわいーのがいけねーんだよ」

「真吾のせいにするな」


ぷりぷりと怒りながら飲み物を置いていく。タクマは真吾が大好きで、同性だということに最初は悩んだみたいだけど、今では吹っ切れたようで真吾への猛アタックを続けている。真吾もタクマに絆されたのか、徐々に受け入れ始めているのが弱々しい抵抗に表れている。


タクマは一応気を使っているのか、人前では真吾に構い倒すのを辛うじて堪えている。私から見れば仕草や視線にがっつり表れていて、意味あるのかと思わなくもないけど。二人きりになるとその反動が一気に出るようで、タクマの部屋で襲い掛かりそうになったことがあるらしい。人前はダメ、二人きりもダメ。仕方ないから事情を知る私の部屋で…という図式がタクマの中で勝手に組み上がった結果、なんの非もない私にこうして被害が及んでいる。



続く

誤字等ご容赦ください。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ