罰ゲーム♥
「勝ったー!」
放課後、教室内。
ババ抜きに勝った早坂さんは大袈裟に諸手を挙げて喜ぶ。
「というわけで風間くん、罰ゲームね♪」
満面の笑みで言ってくる。
「聞いてねえよ!せめて先に言ってよ!」
「さあ、風間くん。三回回ってワン!って言おうか」
「……そんなの簡単にやっちゃうもーん」
早園さんが追撃してくる。
「じゃあ次はもっと恥ずかしいのにしよう」
「勘弁して勘弁して勘弁して」
「風間くん早くやってよ~」
早坂さんが急かしてくる。だーもー!やればいいんだろ!
「ワン、トゥー、スリー」
俺は三回転しながら言い、最後に言い放つ。
「それなのにワン!」
ピッ!
「はい、オッケー。録画したよ」と早園さん。
「うん、次行ってみよー」と早坂さん。
「おい、録画するとか聞いてねえよ!」
「「変なアレンジとかしなきゃよかったのに……」」
二人の声が重なる。
「まあ、でもお犬さんの割によかったと思うよ。はい、お手ー♪」
ずいっと手を差し出してくる早坂さん。
「……なんかむかつくなあ」
「とかなんとか言いながら手を重ねる風間氏」
「早園さ……」
「実はにやけが止まらない風間氏」
「だから、早……」
「とても顔が赤い風間氏」
「そのしゃべり方をやめてくれ早園氏!」
俺と早園さんがぎゃあぎゃあと言い合っている間、早坂さんは二戦目の準備をしていた。
トランプが配られる。
「あ、風間くんのとこにジョーカー行っちゃった♪」
「おいこら」
二戦目、俺のジョーカーは一度も取られることなく負けた。
「風間くん分かりやすすぎだよ~。手札が顔に書いてあるんだもん」
「いや、俺ほどポーカーフェイス得意な人いないし」
「いっつもジョーカー一番右にあるよねー」
「そんなことねーし!」
「ところで風間氏。罰ゲーム」
「またかよ!そして、早園さんはそのしゃべり方やめないんだね」
「じゃあ風間くん。何かおもしろいことやって♪」
また満面の笑みだ。
「笑いすぎでお腹痛くさせてやるから」
「無理するなよ、風間氏」
「ダメだよ早園氏、風間くん集中してるから」
「五」
「四」
「三」
「二」
「一」
「コマネチ!」
ピッ!
「はい、オッケー。録画したよ」と早園さん。
「うん、次行ってみよー」と早坂さん。
「だから、おい。しかも同じ反応かよ」
「十五点……」
「悪かったなっ!!」
そう言いながら俺は机の上にあるトランプを回収しようとする。
「あ……」
早坂さんと手が触れる。
「っ、ご、ごめん!」
俺はすぐさま手を引っ込める。
視線が絡む。
パシャ!
「「あ……」」
「青春ですな~、青春ですな~」
「ちょっと早園氏!写真なんてやめてよー!」
「それより早坂氏、風間氏が微動だにしないぞ」
「ちょっと風間くーん。大丈夫?おーい」
早坂さんが俺の肩を揺する。
「はっ……!」
「大丈夫?」
早坂さんが俺の顔を覗き込んでくる。
う、近い……。
ってか、まつげなっが!目でっか!
「早坂氏ー、風間氏にふしだらな目で見られてるぞー」
「うわー、風間くんいけないんだー。これはもう一回罰ゲームかなあ?」
「それはずるい!俺まだ負けてないし!」
「あ、風間氏のところにジョーカーが……」
既に早園さんはトランプを配っていたらしい。っていうかまたかよ。
三戦目、案の定俺のジョーカーは一度も取られることはなかった。
「はい、風間くん罰ゲームね♪」
早坂さんはまた満面の笑顔だ。
「今度こそ面白いことやってね♪」
「十五点じゃ許さないぞ、風間氏」
「笑いすぎで痙攣させてやるから」
「「はいはい」」
「五」
「四」
「三」
「二」
「一」
俺は四つん這いになって言い放つ。
「コマイヌ!」
ピッ!
「はい、オッケー。録画したよ」と早園さん。
「うん、次行ってみよー」と早坂さん。
「その反応の方が俺にとって罰ゲームなんだけど……」
「「五点……」」
「悪かったなっっ!!!」
「次で最後にしよっかー」
「ちょっと待って!お前らずるいから俺が配る!」
俺はトランプを配っていく。
「「あ、風間くん(氏)のとこにジョーカーが……」
もう、いいよ。ジョーカーでもなんでも。
「おー!風間氏すごーい!最初から手札全部そろってる!」
「え、なにそれずるい」
「早園氏ずるいよっ!」
机の上に出されたトランプは早園さんが言ったとおり、全てそろっていた。
「じゃあ、私はこれからお塾だからまったね~☆」
早園さんは帰ってしまい、俺と早坂さんだけになってしまった。
二人でババ抜きというのは味気ない。あっという間に俺の手札はジョーカーとスペードのエースだけになり、早坂さんの手札は一枚になった。
「んー、かーみーさーまーのーいーうーとーおーりー」
とか言いながら俺の手札を交互に指差す。お、このままならジョーカーとりそうだ。
「だ?」
「『だ』ってなんだよ。俺の顔色で決めたりしないでくれよ」
いかーん、そのままとらないでくれー。
「よ?」
早坂さんが取ったのはジョーカー。
「よっしゃああああああ!!」
「そこまで喜ぶことじゃないでしょうにー。今からシャッフルするから見ちゃやだよ?」
「じー」
「だから、見ちゃやだってば」
「じー」
「もー……。はい、どうぞ」
「右!」
「ジョーカーでしたー♪」
「ちくしょー、シャッフルするからぁ、見ちゃやだよ?」
「声似せなくていいから」
でも、ちょっと笑ってくれたから俺は少し嬉しかった。
「はい、どうぞ」
「んー、かーみーさーまーのーいーうーとーおーりー」
「またかよ」
「だ?」
「その手には乗らないもーん」
「よ?ね?教えてよ~」
「教えるわけないだろっ!」
いじけて頬をふくらませて見せる早坂さんが可愛かった。
「ねえ」
「なに」
「教えてよ」
「やだ」
「ねえ」
「なに」
「教えてよ」
そういいながら顔を近づけてくる。
う、近い……。
「やだってば」
「なんでよー」
そう言いながら早坂さんはさらに顔を寄せてくる。
だー、近い。めっちゃ近い。ああ!心臓が心臓がー!まつげとか目が以下略ー!
「はい、スペードの一ゲットー!」
「え……?」
「顔に書いてあるって言ったでしょ?」
「え、だって」
「というわけで風間くん罰ゲームね♪」
「またかよお!」
俺は机に突っ伏す。
「風間くん、風間くん、罰ゲーム」
「次は何すればいいんだよ……」
俺が顔を上げた次の瞬間、
「はいっ、罰ゲーム♥」
ほんの一瞬の口付け。
気付いたときには早坂さんは遠くにいた。
「実は手札見てたなんて言えないよねっ、また明日♪」
そう言い残して早坂さんは行ってしまった。
とりあえず、心臓の音が、早い。
あれ……?
これは自分の願望度マックスかもしれない……。
どこかから「キッモ!」という声が聞こえてくるような気がしますが気にしません。「サッム!」かもしれませんね。
読んでくれた人ありがとうございます、十奏風です。
あえて推敲はしていません。というかできませんでした。
今回はセリユさんの歌う「kiss」を聴きながら書きました。
あと、「ニッケルオデオン」という漫画を読んだ後に書きました。
一話だけなら無料で読めたりします。読みましょう(ステマ
あ、そういえば僕の一作目をお気に入りしてくれた人が二人いるみたいなんです。でも、お気に入り登録だけだと誰が読んでくれたのかわからないんですよね。恥ずかしがってないで出てきてくれないかなあ……←
前回同様小説家になろうのアカウントがなくても感想が書けるようになっていますので、宜しければお願いします。
もうすぐ夏になろうかというのに、冬になりかねない僕の心が温まること間違いありません。
それでは。