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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

酢豚

作者: 黒幕横丁

 アレから妹の亞梨沙ありさは不機嫌だった。

 不機嫌の原因は俺が亞梨沙に黙って、幼馴染の奈津の家に遊びにいったからだ。

 亞梨沙は奈津なつのことが嫌いだった。その嫌いな奈津の家に俺が行ったのだから亞梨沙は大激怒。

「お兄ちゃんの馬鹿! あんな女のところに行くなんて信じられない! あの女がお兄ちゃんに何するか分からないのにぃ!」

 そう言って自分の部屋に引き篭もって数時間経った。そろそろ晩御飯の時間が来る。

 亞梨沙が晩御飯をいつも作ってくれる。今こんな状況じゃ絶望的だろうな……と考えてたそのとき、俺の部屋の扉が開く。

「お兄ちゃん、さっきは勝手に怒ったりしてごめん。これからご飯を作るよ」

 そう言って、亞梨沙が部屋に入ってくる。でも、その姿には若干の違和感を覚えた。

「おい、亞梨沙。今さっきまで青のワンピースを着てたよな? なんで、今は黒のゴシックドレスなんだ?」

 俺は違和感を亞梨沙に指摘する。亞梨沙はニッコリと笑って。

「だって、嬉しいことがあったんだもん。黒いゴシックもたまにはいいでしょ?」

「あぁ……なら、いいんだけど」

 俺はこれ以上指摘しないようにした。何故かそうしないと自分に危険が迫るような気がして……そんな根拠が何処からともなく湧いて出てきた。

「今日はお兄ちゃんの大好物の酢豚だからね」

そう言って楽しそうに、亞梨沙は下のキッチンへと向かう。


「出来たよ、お兄ちゃん」

 亞梨沙がそう言ってきたのがそれから1時間後のことだった。

「亞梨沙にしちゃ結構時間かけたな。本格的に作ったのか?」

「そうなの! お兄ちゃんに沢山食べて欲しくって頑張って時間かけちゃった☆いっぱい食べてね」

 そう言って食卓に酢豚を置く。匂いも色も酢豚そのものだった。

 しかし、違う点が一つだけあった。

「あれ? この豚肉かたくないか?」

「あれぇ? ちょっと筋の多い部位買っちゃったかな? てへっ」

 可愛らしく笑う亞梨沙の後方には、血で染められた出刃包丁が鈍い輝きを放っていた……。

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