地球ですか?いいえ、異世界です
魔王登場!
ポニーテールは正義!
異論は認めん!
一言で言えばドSそうなお姉さんだった
黒髪に近いが濃い紫色が混じった腰までありそうな髪
それを後頭部で一つに纏めている
退屈そうにこちらを見る目はアメジストの如く綺麗な紫色に輝いている
服装は所々に紫色をあしらい胸元の大きく開いた長袖の黒いショートドレス
その上に黒い毛皮を着込んでいる
足下はヒールが高いオーバーニーブーツで絶対領域が眩しい
恐らく年齢は10代後半で俺より少し年上か同じ位だろう
しかし、彼女の纏う雰囲気はその若い見た目とは裏腹に凄まじい物があった
今すぐにでも跪いてしまいたくなるような威圧感…正に王の威厳に満ちていた
「なんだかパッとしない男だな、魔力はあるが覇気が無い」
玉座で足を組みながら(パンツ見えますよっ!)興味なさげに言い放つ女性
覇気が無くて悪かったな…
「まあどうでもいい。ところで貴様の名は」
かなり横暴な人だ…
美人じゃ無かったらキレてるぜ…
「俺は黒瀬星矢です。」
「ふん、セイヤか…名前だけは良いな」
言葉にいちいち棘があるぞ…
態度も傲慢だし
「あの~アナタは?」
この絶対王者みたいな雰囲気で大体察しは付くのだが一応聞いてみる
「ふふふ、よくぞ聞いてくれたな!我はこのファントム・キャッスルを統べる魔王!ヴィオレット・ザ・パープルだ!」
いきなりテンションMAXになり立ち上がり大きく手を広げる魔王さん
「…流石です、王さま」
いつの間にかヴィオレットの隣に移動していたアリスがどこから持ってきたか分からないが、紙吹雪を散らしていた
……どこからツッコめば良いか分からないぞ
「あの~?いくつか質問良いですか?」
俺は手を上げながら聞く
「うむ、良かろう。発言を許す」
「取り敢えず、アナタは魔王なんですか?」
「ふん、何度も言わせるな。確かに我は魔王だ…しかし、いずれは魔界をも支配して魔神になるがな!」
イテッ!イテテテっ!
この人とんでもなく美人なのに言ってる事が電波だ!
だけど、ここで逃げだしては何も始まらない
俺は続けて質問する
「じゃあ、何で俺はここに居るんですか?何故家から城にワープさせたんですか?」
これが一番大事だ。
何で俺は突然自分の家では無く見知らぬ古城にいたのか
「そんなの簡単だ。我が書庫で見つけた召還魔法の書かれた本を唱えてセイヤをこの世界に呼び出したんだ。」
…そう来ましたか~
え?じゃあ、あれか?
「異世界って事は俺ってもうヒーロー番組見れないの?」
異世界にテレビってあるのかな?
「なんだって?ヒーロー…ばんぐみ?」
頭にハテナマークを乗せる魔王
番組って言う単語も知らないか…
この世界はヒーロー番組がないのか
マジか…orz
俺はその場に崩れ落ちる
「どうしたのだ?我の手先になれると言うことは大変な名誉だぞ」
豊かな胸を張り威張り始める魔王
いや、知らんがな
いきなり魔王に手先になれって言われても…
「むー、何だか浮かない顔だな。そのヒーローとは何だ?」
「ヒーローってのは…そうだな…簡単に言うなら弱い者や困っている者の為に戦う奴の事だ。」
「英雄のようなものか?」
「まあそんな所かな」
「ほう、ヒーローか…異世界では英雄をヒーローと言うのか!なかなか良いではないか!」
そう言ってまたも胸を張る魔王
何が良いかは分からないが…
む、胸が…
「ところで俺を召還した目的は何なんだ?」
俺が聞くと
「うーん、無いよ?」
「は?」
マジ?
「俺って用も無く召還されたの?」
「まあ、ぶっちゃけそうなるな」
「嘘でしょ…」
まさかの目的無し
こんな事あっていいの?
「まあ、我も召還魔法が本当に発動するとは思わなくてな。びっくりした」
「びっくりしたじゃねぇよ!どうすんの俺このまま意味の分からない世界で死んでくの!?」
神様助けて下さい!
俺ヒーローがいない世界でやっていける自信が無いよ!
「いや、帰れるよ?」
「え、帰れるの?」
神はいた…
一生ついて行きます!神様!
「うむ、帰れるのだが…召還魔法は多大な魔力を消費するのだ…だから、しばらくは召還魔法は使えん」
それに、と彼女は区切り
「せっかく異世界に来たんだから我の暇つぶしの相手としてしばらく付き合ってくれないか?」
彼女は今までのどこか退屈そうな表情ではなく
心の奥から、正に花が咲く笑顔と言えばいいのか
そんな笑顔を俺に向けてきた
……この笑顔は反則ですね
まあいい俺が見逃した番組は後でTSU○AYAで借りてみよう
いつか帰れるならい
いかな?
俺が簡単に意見を曲げてしまう程、魔王ヴィオレットの笑顔は破壊的だったのだ
次回、ファントム・キャッスルの愉快な仲間達を紹介!