おトイレトリップ
やあ、こんにちわ
俺の名前は黒瀬星矢
特に自慢する所なんて無いただの大学生だよ
ただちょっとアニメ、ゲームが好きで中でも変身ヒーローや戦隊物が大好物
日曜日の朝はヒーローと一緒に変身する(勿論、変身ベルトを付けながら)そして、悪の組織をバッタバッタとなぎ倒し困っている人間を助ける。
ヒーローが怪物を倒せば狂喜乱舞し逆に攻撃を受けて膝を着けば沈み込む
そんな俺をみて父母は呆れ妹は笑い転げる
大学生になって恥ずかしく無いのかと友人に聞かれた事があるが
「恥ずかしくない!こんなに格好いいものは他に無いぞ!」
と、言ったらやはり呆れられた
変身ヒーローが好き
唯一自慢するものはそれだけ(別に自慢じゃないね)
それだけだったはず…なのに…
あれ?ここどこですか?
俺は確かヒーロー番組のCM中に尿意を催したためトイレに入って便器に座った(俺は小の方でも座ってトイレをする!)筈だ…
だが俺は今は物凄い所にいた
確かにトイレなのだが家のトイレではない
「なんで便器が黄金なの…」
そうなのである
今俺が座っているのは黄金の便器なのである。更に美しい彫刻が施された壁にはよく分からないが高そうな絵画が飾られていたり高い天井にはシャンデリアが輝いていたりで全く落ち着けなかった
「あれ?俺んちっていつの間にトイレ改装したの?」
動揺し過ぎてそれしか言えなかった
父さん!母さん!黄金の便器なんかにするなら別の所から改装してくれよ!
いい加減大学生にもなって妹と共同部屋は嫌なんだよ!
なんで一般民家のトイレだけアラブの王宮みたくなってるの?おかしくない?
「はあ…さっさとトイレ済ませて文句言ってやる! これは久々に家族会議だ!」
と段々勝手にトイレを王宮に変身させた両親に怒りを覚えたため急いで用を足し扉を開けた(ドアノブまで黄金)
!!?!?
俺は扉を開け絶句した
なんせそこは見慣れた家の廊下ではなかったからだ
言うならばまさに王宮の廊下だった
赤くフカフカなカーペットが敷き詰められ高級そうなシャンデリア、所々に飾ってある壷や彫刻は俺の考えなど到底及ばない程高価なのだろう
そんな廊下が延々と続いている
いやいや!おかしいだろ!なんだこれ!?
まさか俺がトイレに座ってる間に改装でもしたのか?
なんて事が一瞬頭をよぎったが流石にそれは無いだろと頭から考えを消す
トイレの間に家をリフォームとかどんな早業だよ…
俺がトイレの前で腕を組み悩んでいると
「アナタは…」
へ?
俺は声のした方へ振り向く
するとそこには目を見開き驚いている
メイド服を着た少女がいた
美しい少女だった
歳は十代中頃で中学生位だろうか?
髪の色は金髪でシャンデリアの光を反射しえもいわれぬ美しさを漂わせていた
大きく見開いている瞳は碧眼で一発で外国人だとわかった
「アナタは?」
形の良い唇からさっきは目を見開いて驚いていたが直ぐに落ち着きを取り戻したのか
小首を傾げもう一度同じ台詞をメイド少女は繰り返した
「俺は黒せ…っ!」
と自己紹介をしようと思ったが直ぐに押し黙る
なんせいきなり王宮(?)のトイレの前に挙動不審で突っ立ってウンウン悩みながらいる俺
あれ?これ詰んでね?
顔から冷や汗が滴り落ちるのが分かる
今の俺は王宮に不法侵入したこそ泥にしか見えないだろ…
まずいまずい!
俺は何とか誤解を解きたいと考え、シュミレートする
「トイレしてたら王宮にワープしたんだっ!助けて下さい!」
「まあ本当ですか!?可哀想に…じゃあ、私が面倒みるわ☆」
「マジすか!?あざまっす!」
…なんて事にはならないだろうな
俺が更に挙動不審になりオロオロしているのを無表情で眺めていた少女は次の瞬間予想もしない事を言い放った
「…アナタを王の所へお連れします。」
眉一つ動かさず言って深々とお辞儀した
「王!? やっぱりここは王宮ですか!?」
と廊下全域に響きわたるほどの大音量で叫んだ