表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/7

出会い?5

 我が家へ向かう事を決め、ブラックウルフの群れの中へと突き進む。

 どうしても邪魔なブラックウルフは棒でぶん殴ってはいるが致命傷にはなっていないだろう。また、跳びかかってくるブラックウルフもかろうじてかわしてはいるが、わりと必死なので後ろについてきているリアスの方まで気を遣っている余裕はない。現に何匹かは俺ではなくリアスの方へと飛びかかっている。


「大丈夫か?」

「今のところはね」


 言葉だけ聞けばまだ余裕がありそうだが、声音に若干の焦りが見える。彼女がもう一度あの筋肉さんとなってくれればもっと楽なのだろうが、彼女はそれをしない。それには多分理由があるのだろう。

 まず最初に説明するとゼロの使う能力は魔法と違い使用量や使用回数といったものがない。魔法の使用数などはもちろん個人の魔力量によるものだ。つまり人によって限界は違うが、使用し続ければいずれ魔法を使用することができない状態になる。この状態を魔力欠乏状態といい、めまいや吐き気、過呼吸、気絶など様々な症状が出る。

 しかし、発現者の能力にはいくら使用しようともそのような状態に陥ることはない。ただし、ただカードに魔力を注いでカード名を言うだけで発動する魔法とは違い、能力には発動条件という者がある。

 俺の能力で言えば、対象の物体の一部が素肌に触れていなければならず、離れた瞬間に効力を失ってしまう。おいおい、やりすぎだろってくらいに硬くした石を投擲なんてことは無理だったりする。

 その他にも発動に代償が必要だというものがあるらしいというのを風の噂で聞いたことがある。まあ、発現者の数自体が少ないし、その存在は秘匿されているから情報があまりないのは仕方ない。


「なあ、さっきのあれもう使えないのか?」

「なんのこと?」

「だからマッチョメンになって『ぬるいわ!』的な発言する奴」

「絶対言ってないから。それにあれはもう運次第ね」

「どうゆうこと?」

「私の能力である何者にでも染まる私(ホワイトカラー)は触れた相手の容姿や持っている力までそっくりそのままコピーする能力なの。ただしそれは一回、制限時間は一時間で変身相手の視界に入らないことが条件。まあ、条件は多いけどそれだけにいい能力だよね。なんたってゼロの私でも魔法が使えるのよ?」

「え……もしかして自分の能力に名前付けてんの? あいたたたた」


 能力が発現した時に絶対名前付ける奴いるなと思ったらやっぱりいた。


「なによその馬鹿にした感じ!一生懸命考えたのに」

「うんクスクス、ごめんクスクス」

「クスクスって口で言わないでよ。馬鹿にされてる感じがする」


 実際は馬鹿にしているんだけどな。それはそれとして、彼女の能力は要は触れた相手と容姿、能力をコピーすること。ただし中身は変わらない。そっか、だから筋肉さんは違和感あったんだな。体は男でも中身はリアスならば仕方ない。

 それに俺は覚えている。筋肉さんinリアス時の初邂逅の時に筋肉さんは呟いたんだ。「結構好みのタイプかも」と。うおぉぉぉぉぉぉぉ!思い出したらなんかたぎってくるものがあるかもしれない。いや、ある。


「うおぉぉぉぉぉぉ!」

「え、なに、どうしたの?」

「な、なんでもないんだからね!」


 やべー、声に出ちゃってたよ。

 俺のソウルの叫びが夜空をダンスするとか、ものごっつ恥ずい。


「……二手に分かれましょう」


 どうやら不信感を与えたようだ。致し方ない。


「了解。んじゃ」


 軽く振り返り、格好つけたポーズを決めて我が家へ向けてひた走ることにする。ちなみにポーズの詳細は指をチョキの形にし、人差し指と中指をくっつけたものを額に斜めな感じでセットし、手首のスナップを利かせて額から離すというもので、爽やか&粋なポーズとしては上位に食い込むだろう。


「普通に分かれようとしないで渋りなさいよ!」


 怒鳴られた。

 もしかして俺が悪いのか?

 ぶっちゃけ足手まといだったりするから適当な場所で適当に逃げてて欲しいだけなのだが、あえて言葉にすることはあるまい。


「黙ってついて来い」

「いきなり偉そうだし」

「走りながら喋ると舌を噛んで熱いって言葉があひゅいになるぞ」

「この状況で熱いって言わないから! って言っちゃった!!」


 一人でボケて一人でつっこんでるよ……一人遊びの得意な女だな。まあ、一人遊びの得意な女ってどんな遊びかにも拠るけど響きは嫌いじゃない。


「もう少しだから」


 言葉を掛けながら進む。

 実際、我が家はもう目と鼻の先まで迫っている。

 だがしかし、なんということだろう。全然姿が見えなかったシルバーウルフの姿が俺達と俺の家を結ぶ直線上の真ん中にあるじゃありませんか。うん、あの毛並みは間違いないね。


「うわ」

「どうしたの?」


 俺の後ろで状況が見えていないリアスが声を掛けてくるがとりあえず無視する。

 だって見ればわかることだし。


「んーと、ごめん」

「へ?」


 そして俺は未だ状況を把握していないリアスを置き去りにし、更に加速して跳んだ。

 ホップ・スッテプ・ジャンプ

 この言葉こそまさに俺の成した所業。

 ホップの要領で前方にいるブラックウルフの顔を踏みつけながら前方へ進み、ステップの要領で要領で違う個体を踏み台にし、最後のジャンプで更に違う個体を足蹴にしてシルバーウルフとそれを囲むブラックウルフ達を飛び越えた。

 シルバーウルフの周りってやたら取り巻きいるんだよなー。


「ちょっとーー!」


 ああ、リアスの叫びが聞こえる。でも、リアスには多分俺と同じことは出来ないっしょ。

 リアスを無視して家に走った俺は無事に帰りついた。

 ここまでくればもう大丈夫だ。

 持っていた棒を無造作に投げ捨てる。そして家に入るときちんとドアを閉めた。なにやらリアスらしき声が聞こえるが問題はない。変身しなくてもそこそこ戦えるようだし、シルバーウルフも獲物が弱るまでは早々手を出さないからしばらくはもつ。

 そして俺は部屋の隅に転がる愛剣を持って先ほど閉めたドアを開け放って堂々たる姿を見せる。


「待たせたな!」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ