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出会い?1


「うん?」


 何か生き物が蠢く様な気配を感じ、横になっていた体を起こす。

 この森はただの森ではなく、危険種が数多く生息する危険地帯だ。俺自身も襲われたことは両手で数え切れないほどある為、自然と気配には敏感になる。


 『危険種』

 それがどうやって生まれ、どう数を増やしているのかほとんど解明されていない。一説には汚染された魔力によって生まれるとされるが正直眉唾である。ただわかっているのは、危険種は多種多様であり、獰猛で好戦的という文字通り危険な存在だ。その危険度に沿って第五級~第一級まで階級がつけられている。また、人の言葉を理解し話す知能の高い種も存在し、それらは総じてほかとは比較にならない力を持っている為特級危険種と呼ばれる。

 ちなみにこの大森林に生息する危険種の等級はおそらくは第四級~第二級くらいだ。実は一級とか特級が生息しているかもしれないが、大森林のほんの一部に拠点を置くだけの俺が全貌など正確に把握しているわけがない。


「危険種がざわめいているな」


 家の近くで無数の危険種の気配を感じる。もしかして俺を狙ってるのだろうかと考えるがすぐに首を振って否定する。それはないと。

 なぜならそうならないように家の周りには危険種の嫌う臭いを発するスペクシアという木を移植しているからだ。わざわざ森を探索して手に入れたそれらは植樹から七年が経とうとも一度も危険種を家の近くに寄せ付けたことはない。


「となれば、あいつらどこでパーリィしようとしてんだ?」


 疑問が浮かぶが答える声は当然ない。つまりは知りたければ自分で調べろということだ。


「でも、眠いんだよな~」


 やることがなさ過ぎて日が沈んだら眠り日の出とともに起きる習慣の身についた早寝早起きの健全な俺の肉体は限界が近い。

 だがしかし、もしかしたらきっと俺をこの森から連れ出そうとやってきた人が道中危険種と出会ってしまったのだとしたら、ここで眠るという選択肢は明らかな失策ではなかろうか。しかもそれが見目麗しい巨乳の美女集団だとしたならば!

 そう思った瞬間なんか漲ってきた。


「よし、いくか」


 そう決めたならば準備をしなければな。とりあえず服を着て、あと最近夜になると外が寒くなってきたからマントも羽織ろう。手袋は……あ、そういや穴開いてるからダメだ。あとは、お花を摘みに行かないといけないな。出すもん出さないと肝心なときに催すから念入りに絞ろう。少々お待ちください。


「ふぅ、すっきり」


 これで準備は整った。忘れ物はないな。よし、待っていろ。すぐ行くからな。



 危険種の気配を追って森を進む俺なのだが、ここで気付いたことがある。


「月が超綺麗なんすけど」


 まさに満月。家には窓なんてないから全く気付かなかった。酒でもあればきっとおいしく飲めるに違いない。


「酒かぁ、もう随分と飲んでないな。お月さん、こんな俺どうよ? 健康的すぎるだろ?」


 もっと不健康で不健全に生きたいものだ。美女という名の海で溺れたい。ついでに酒にも溺れたい。そんで溺死するのが俺の夢。

 さあ、その夢を叶えるための一歩を踏み出そうではないか。


「未だ顔も見てない美女さん待っててね、もうすぐ貴方のヒビキさんが行きますよぉ」


 夢に向かってひた走る。さしずめ俺は夢追い人(ドリームランナー)といったところか。




 しかし、夢というものは得てしてぶち破れるものである。人の夢は儚いと大昔の人は言ったものだ。いや、正直俺の予想というか妄想は当たってたんだよ。四分の一くらい。


「はあっ」


 渋い声の筋肉隆々の男が危険種をちぎっては投げを繰り返している。ミニスカート姿で。しかもなぜか頭には雑草が生えてる。ん? よく見れば髪の毛か? 月明かりがあるといっても薄暗いからわかんねーや。


「もうっ、なんなのよこいつら。ホンット頭にきちゃう」


 渋い声なのに妙に女っぽい感じで奴が喋る。とゆーかもしかして女性?

 わからない、世界には謎が満ちている。

 だが、こいつに出会ったのも何かの縁か。なにせ随分久しぶりに他人と出会ったのだから。


「加勢する」


 奴の前に姿を現す。危険種達からすれば背後。突然現れた俺に危険種たちの意識が俺に向く。それは奴にとっても同じようで


「大森林真っ只中のこんな場所に他の人間? あら、でも結構好みのタイプかも」


 危険種よりも奴の方が危険な気配を漂わせているがこの際無視しよう。まずはここにいる危険種を片付けることにしよう。

 目の前に居る危険種はブラックウルフ。真っ黒な毛皮の狼で、一体一体の力は第五級ほどしかないが、狡猾で獲物を逃げられない状況にしてから五匹以上の群れで狩るという狩猟スタイルは非常に厄介だ。故に力は第五級でも実際には第四級に数えられている。

 油断すれば危ないが、負けることはないだろう。

 俺は自らの得物を取り出すべく腰に手を……あれ?

 ない。

 え……やだ、うそ。


「剣持ってくるの忘れた?」


 教訓、忘れ物がないかの確認はもっとしっかりとやりましょう。



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