20. 柱島泊地にて(日本艦衣笠登場)
「わたしの意図するのは古きよき日本の愛惜でもなければ、それへの追慕でもない。わたしの意図するのはただ、ひとつの滅んだ文明の諸相を追体験することにある。(中略) われわれの近代の意味は、そのような文明の実態とその解体の実相をつかむことなしには、けっして解き明かせないだろうといいたい」渡辺京二『逝きし世の面影』より
水雷戦隊の演習が行われる前日、わたしは戦艦金剛に乗って帝国海軍の泊地柱島に向かった。
この異界における帝国海軍の泊地柱島に行くのは今回がはじめてである。
本来なら好奇心で楽しみなはずだがわたしの心は重い。
先日、わたしは駆逐艦磯風でとんだ失敗をしてしまった(第19話)。
電気溶接の技術をも用いて建造された陽炎型駆逐艦・磯風の船体がスベスベだったのでつい手を出してしまったのだ。
そして夢中になって撫で回したところがこともあろうにプライベートゾーンである艦尾だったことが潔癖な彼女の怒りを買った。
磯風は凍りつくような冷たい目でわたしを見下ろして言った。
「問おう。あなたはわたしたちの指揮官か?」
…やはりこれは提督であるわたしへの不信任決議ということなのか?
「何じゃ? まだ気にしておるのか」
内向しているわたしを気づかってくれたのか、明るい口調で金剛が声をかける。
声をかけるだけではなくわたしを抱いて慰めるかのように頭を撫でてくれた。
イギリス生まれの戦艦である彼女の頭は鮮やかな金髪。そしてその周りをバチバチと霊光が輝いている。
気がつくと艦橋の航海計器も魔法の光を帯びている。
そうか、もう外洋に入ったのか。ここは異界の海。外宇宙の物理現象が直接及んでくるため、海底・海中・海上は恒星風、磁気嵐、重力波が渦巻いている。
それに加えて今朝未明には我々の根拠地ハイブラシルから一千異界里の地点で大規模な次元震が発生したのでその影響も及んでいる。
もし重力波に巻き込まれたらどこに飛んで行くのかわかったものではない。次元震に巻き込まれたらいつの時代に飛ばされるのかわかったものではない。
金剛は艦に搭載されている霊子演算機を使いこなしつつ、刻一刻と変わる異界の海のデータを観測して安全な航路を算定する。
そしてそれを護衛についている雪風やジャーヴィスに送信する。頭の周りに生じる霊光は金剛の頭脳が高速回転している印なのだ。
ちなみにこの異界で人間のわたしが生きていられるかは未知数だ。もし、磁気嵐に巻き込まれたら電子レンジに入れられたネコの如く全身の水分が沸騰してしまうかも知れない。
そして降り注ぐ恒星風を浴びたらその中に含まれているγ線やX線で致死量を越えた被曝をしてしまうかも知れない。
わたしが生きていられるのも金剛たちの神話の力で守られているが故なのだ。
わたしの頭を撫でていた金剛が
「過ぎたことをあれこれ気にしていても始まらぬ。今、お主が考えることは自らが指揮官として成長することじゃ。さすれば磯風もお主を認めるであろう。あやつとは何度も同じ戦場で戦ったからよく知っておる。一見気難しいが頑迷では無いぞ」
わしはあやつの先代の天津風型駆逐艦・磯風も知っておるからの。まあ娘か姪みたいなものじゃと金剛。
そして金剛は何かを思い付いたように手をポンと叩く。
「そうじゃ。お主も手持ち無沙汰にしておるから後ろ向きなことで悩んでおるのじゃ。ちょうど良い。これから外洋を航行するための操艦を学んでもらうとするか」
金剛はわたしに歩み寄ってこう告げた。
「さあ、指揮官としての務めを果たしてもらうぞ、提督」
金剛「現在、航路上に磁気嵐が発生しておるからの。心してわしを操艦せよ。…ん? なぜ脱ぎだすのか、じゃと? これはおぬしを奮い立たせるためじゃ」
金剛は身体を開いて操艦に用いる生命のスティックを挿し込むコネクタを露出させる。
わたしは生命のスティックをゆっくりとコネクタに挿し込む。歓喜の声とともに機関部がうなりを上げてフル回転を始めた…しかし…
「こらこら提督、そんな挿れ方では艦の針路が狂って磁気嵐のスコールに突っ込んでしまうぞ」
確かに計器が赤く点滅している。スティックの出し入れのリズムが単調……要するに下手くそだとエラー信号が出るのだ
「まずスティックをコネクタに三センチほど入れて、上下をむらなく擦り回すのじゃ。それから深く挿入し、擦り回すようにせよ。その時、九回は浅く、一回は深く突くのがコツじゃ。さすれば艦はもっとも安定した針路で航行することができる。さあ、やってみよ」
…こうしてわたしは操艦を行った。途中、何度も力尽きたがそのたびに自分を奮い勃たせて勃ち上がった。
これは彼女たちに信頼される指揮官になるための訓練なのだ。磯風に自分を見直してもらうためにも頑張らなくてはならない。
異界の怪物たちとの戦いの前に自分との戦いに負けてどうするのだ。
かくして必死になっているわたしに下から金剛が声をかける。彼女の声も上ずっている
「ハアハアハア…提督、そろそろ柱島泊地に着くからスティックをゆっくりと抜いて機関の出力を下げるのじゃ…いやお主のおかげで久しぶりに満ち足りた航海になったぞ。この調子で励めば立派な提督になるであろうぞ」
艦橋から柱島泊地が見える。今はほとんどの艦が水雷戦の訓練に出ているためか閑散としている。
金剛は「なかなか長引いておるの」と呟いて、手元のスマホに暗証番号らしきものを打ち込んで送信した。
すると海中にあった機雷や防潜網が道を空けたのでわたしたちは泊地内に入ることができた。
柱島泊地の周辺は日本の瀬戸内の島々のような景色である。
しかし、わたしが見慣れた日本の景色とは少し違和感がある。
よく目を凝らすとわかった。ここの島々には日本中どこにでもある鉄筋コンクリートの建物が無い。そして駐車場も無い。
ほとんどの建物は木造の平屋もしくは二階建てで、ごく一部がモルタル壁。その中で目立つのは軍関係とおぼしきレンガ造りの洋館だ。
舗装されている道路は少なく自家用車も走っていない。内燃機関の乗り物はボンネットバスだけのようだ。
そうだ…ここは高度経済成長以前の日本なのだ。
わたしは昭和50年生まれなので実体験として記憶のある時代では無い。そもそもここは異界なので自分の歴史と地続きでは無いはずだ。だが、父母・祖父母がこのような世界を生きていたのだと考えると無性に懐かしい気持ちになる。空に飛ぶトンビの鳴き声がますます郷愁をそそる。
港に接岸する金剛と雪風とジャーヴィス。わたしたちが埠頭に降りると一人の若い女性が『二十四の瞳』の大石先生よろしく洋装で自転車に乗ってこちらへ来る。
「お待ちしておりました、提督。わたしたちの柱島泊地へようこそ」
金剛が
「お主が留守番かの。提督、重巡の衣笠じゃ」
重巡なので駆逐艦の雪風とジャーヴィスは敬礼する。
衣笠も答礼を返す。私服姿の彼女は無帽なので旧海軍の慣習に従えば敬礼ではなくお辞儀なのだが、そこにはこだわらないようだ。先日に会った磯風は無帽でお辞儀した(第19話)。軍の慣習への意識は各艦によって違うのかもしれない。
重巡衣笠…一応古鷹型の一隻ということになるのだったか。単装砲塔の古鷹・加古とは異なり、青葉・衣笠は連装砲塔を備えているのでタイプを別にする分類もあるが、軍縮条約と予算の制限の中で建造された排水量8000トン前後の重巡というところは共通している。
当時の海軍の技術者の間で神聖視されていた平賀譲が苦心して設計したのが古鷹及び加古、それをマイナーチェンジしたのが青葉・衣笠ということだが、グラスゴーたちタウン級軽巡と同じくらいの排水量に重巡クラスの口径203mm主砲を搭載するために船体のバランスを工夫した設計にしたようだ。
そんな歴史が反映しているのか人間体の衣笠は中肉中背でスラッとしたプロポーション。洋装がとても良く似合う。
顔のほうは男好きのする華やかさとは異なるが、男女ともに親しみやすい美人だ。女学校の若い女教師という比喩がぴったりくる。
衣笠「重巡が洋装をすると話題になっちゃうかしら。でもこちらのほうが動きやすいし」
金剛「いや、よく似合うておるぞ。洋装に自転車とくればモダンガールじゃの」
衣笠「実はこれ、着物を染めてミシンを踏んで仕立て直したんです。やっぱり国産パインミシンは使いやすいわ」
雪風「衣笠さんのお洋服素敵ですっ! 型紙ってありますか?」
衣笠「ありがとう。型紙ならCADで作ったから後でデータを送ってあげる」
金剛「足踏みミシンにCADソフトか...やっぱりわしらはちぐはぐじゃのう」
「これから提督ご臨席の演習なので、みんな張り切っています。わたしはこの前の演習で、青葉の艦尾で艦首を擦ってしまったのでお留守番。提督、立ち話も何ですから、そこでお茶でも」
すると金剛は
「わしはちょっと失礼する。今はこの島の兵学校の分校で夏の集中講義が開かれておったな。確かグラスゴーが特別講師で海防艦たちに海上護衛を教えておったはずじゃ。様子を見てこようと思ってな」
「じゃあ、バスを呼びましょうか」
と衣笠。
「かまわん、かまわん、いらぬ世話をかけることは無い。衣笠、お主の自転車を借りるぞ」
金剛は衣笠と違って和装だが履いているのは男袴だから自転車に乗れる
そして、差し入れとおぼしきふろしき包みを衣笠から借りた自転車の荷台に縛り付けてこぎだした。
「岬の分校は一本松の村の向こうですよー」
「わかった!」
声をかけあう衣笠と金剛。
日本艦の泊地はまだモータリゼーションというものが進んでいないので自転車が便利なのですと衣笠。
衣笠はそれじゃあどこか座れる場所に行きましょうとわたしたちを案内する。
衣笠「提督、それではご案内します......きゃあっ!!」
雪風「あっ! 見えちゃった! 今日は海からの風が強いですね」
ジャーヴィス「衣笠さん! ニッカーズは!?」
衣笠「洋装はしたけど下着まで手が回らなかったの」
ジャーヴィスと雪風は並んで歩きながらおしゃべりを始めた。
「あんたんとこ、基地内の移動や連絡ってバイクだけでやってんの?」
「バイク…?…ああ自転車のことだね。んー……泊地の奥にある呉の工廠は構内汽車が走ってるよ。他の島だとバスがあるんだけどね。数が少ないから自転車が便利かなあ」
「ねえ、ヤンキーみたいにフォード車を揃えるってわけにはいかないだろうけどさ。モーターサイクルは使わないの? 」
「んー。オートバイは前に戦艦の人たちが外国のことを調べたんだけどね。エドワード・ロレンス中佐のような有名人がオートバイ事故起こしたのでやっぱり危ないんだって」
「うーん…お役所ってところはどこも事なかれ主義ね」
すると衣笠は二人を振り返って
「ここはね、移動や連絡には小舟を使ったほうが便利なの。この泊地は内海の島嶼部に作ったのだけど、島々の真ん中には神社を祀ったのでそこは神様の土地。軍の施設は海沿いにあるのよ。だから島の中の移動も車よりも通船のほうが早いの。それに島の中を車で移動したらエンジンの音で神様がびっくりしちゃうわ」
柱島の柱は神様を呼ぶ御柱からきているとも言われているの。と衣笠。
主な交通手段が陸路ではなく水路だなんて、まさに高度経済成長によるモータリゼーションと国土の開発が行われる以前の日本だなあ。
そんなことを考えていると衣笠はわたしたちを港の通り、店が集まっている一角に案内した。どの店にも大提灯がぶらさがっていて、うどん、すし、さけ、さかなと太い字で書いてある。
衣笠はその中の一軒を選んで縄暖簾をくぐる。天井が季節の造花で飾ってある。
中に入るとかすれた中年女性の声で「いらっしゃーい」
畳の席に四人が座ると
髪を桃割れにゆった少女が「何にします?」と声をかけてくる。
え…店員は人間なのか…? どこの人なんだ…
わたしの不審な顔に気づいた衣笠は
「このお店ですか? ここの商店街、出港帰港のちょっと空いた時間に一休みするためのものなんです。お店や店の人は戦艦の皆さんが法術で創り出したものなの」
この食堂は金剛さんの担当なんですと衣笠。
へえ……神話の力ってこういうこともできるかと驚くわたし。近くの椅子や机をさわってみたけど現実のものと変わらない。
よく見ると店に掲げられている営業許可証は戦艦金剛主計科の名前で出されたものだ。
衣笠が何を召し上がります?と聞いてくる。
メニューなんて気の効いたものは無いので壁に貼ってある品書きを見る。何にしよう……
わたしは衣笠に尋ねる。
「これから予定があるんだよね?」
ええと答える衣笠。それではあまり時間のかからないものを…
「それじゃあ、うどんにしようか」
桃割れの女の子が
「きつね四丁!」と大きな声で奥に声をかける。
すると奥から女将の声が聞こえた
「なんや! ケチな客やな!」
わたしは一瞬ずっこけてしまった。
店を改めて見てみると…軒は低い、土間は狭い、薄暗い、埃っぽい。おまけに女将は店員ばかりではなく客に対しても口がキツイ…
金剛め、こんなところまで昔の日本を再現しなくてもいいのに…
しかし出されたきつねうどんはなかなかの味だった。油揚げにも汁がたっぷりと染み付いている。ネギも豪快に切られたものが入っている。出汁は関西風の昆布出汁…
「うーん…やっぱり柱島泊地に帰ってきたらこのお店のうどんを食べたいですっ!」
と雪風。彼女は以前からのファンらしい。
「愛想笑いしているけど目は笑っていないおかみさんとか、食べているお客さんの前で掃き掃除を始める女の子とか懐かしい。ここが雪風の生きていた日本ですっ!」
雪風の声に驚いたかのように天井から何かが走り回る音が聞こえる。おそらくはネズミだろう。
一方でジャーヴィスはキツネうどんには不満があったらしい。
「肉は無いの? そりゃあ軽食だからステーキなんて欲しいとは言わないけどせめてハムくらいは…」
衣笠が壁の品書きを見ながら
「西洋艦には物足りなかったかな? それじゃあカツ丼でも頼む?」
すると女将は
「すみまへんなあ。今、カツ丼はやっておりまへんのや。何せきょうびは節米運動のご時世ですよってに」
…日中戦争と国家総動員法で物資の統制が進んだことを言っているらしい。中でも米は軍用に回すために民間の消費量を押さえようとしていたはずだ。
金剛め、こんなところまでリアリティを出さなくてもいいのに…
すると噂をすれば影というのか、店の前に自転車がスッと止まると縄暖簾をくぐって金剛が入ってくる。
いわばオーナーのような金剛が来たのでおかみは満面の笑みで出迎える。
「いらっしゃーい」
金剛は片手をふっておかみに挨拶を返すと
「おお、やはりここにおったか」
衣笠は入ってきた金剛を見ると
「岬の分校には迷わずに行けました?」
と尋ねる。
「ああ、道はすぐにわかったぞ。グラスゴーめ、すっかり海防艦のチビどもに懐かれてオルガンでアニー・ローリーを歌わされておったわい」
海上護衛の講義のはずがいつの間にか音楽の授業か。微笑ましいと言えば微笑ましいな。
わたしがそう考えていると金剛は机の上を見て
「何じゃ。うどんしか食べておらぬのか」
「これから予定があるというので、さっと食べて出るつもりでした」
と衣笠。
「ああ、そうか。実はな。先ほど比叡から連絡があって水雷戦の訓練が終わるのにもう少し時間がかかるということじゃ。だからここでゆっくり昼食をとることにいたそう」
ジャーヴィスや雪風は物足りないないじゃろうと金剛。
「おかみ、天ぷらと刺身の盛り合わせを頼む。お主ら、他に何か食べたいものはあるか。そうじゃ。ジャーヴィスと雪風はカツ丼でも頼もう。提督も食べるか? ここのカツ丼は肉厚がたっぷりとしてなかなかじゃぞ」
確かカツ丼はやっていなかったはず…とわたしが言いかけたら
「まいどあり!」
…このおかみ、客を選びやがった。金剛が法術で創造したにしてはリアリティありすぎだろう…さっきから同じことばかり考えているわたし。
「だけど、金剛はんのお友達ということはみなはん海軍の方ですか?」
と尋ねるおかみ。
とりあえずみんなうなずく。
「もう! あてらが安心して商いができるのも海軍はんのおかげですがな! 」
たとえ作りもののおかみとは言えお愛想を言われて悪い気分でなさそうな衣笠と雪風。
しかしその後のセリフがいけなかった。
「なんでも今度はミッドウェーというところに大艦隊で出撃するそうでんな。アメリカの軍艦なんかコテンパンにやっつけておくれやす」
複雑な顔をする衣笠と雪風。イギリス海軍のジャーヴィスはピンと来ないのか黙っている。
日本海軍がミッドウェー海戦で大敗北を喫するのは有名なので詳しく説明するまでもないだろう。
その理由の一つとして情報が漏れていたことがあげられている。
それと関連する逸話として、緒戦の大勝利で気が大きくなっていた海軍の将校が料亭や妓楼で今後の作戦を言いふらし、それが外に伝わって軍港の民間人はミッドウェー作戦が行われることを知っていた話がある。
慢心による敗北 (それだけかはわからないが) という衣笠や雪風たち日本艦にとっては苦い思い出だ。
衣笠はおずおずと
「…金剛さん、このBot、そろそろ別のセリフに変えません?」
「何を言っておるか。わしはおかみにこの言葉をしゃべらせることで、みなの自戒としておるのじゃ」
勝って兜の尾をしめよということなのじゃと金剛。
金剛が創り出した飯屋のおかみ
金剛「亭主に死なれて大阪から呉まで流れて来たという設定なのじゃ」
雪風「苦労したんですね」
衣笠「でもこういう人、わたしたちの時代は多かったわ。一人で生きていくしかない女性」
金剛「苦労は買ってでもせいというがあまり苦労しすぎても良い事ばかりではないの。そういう設定もいれたつもりじゃ」
それでも衣笠は話を続ける。
「このあいだこのお店にみんなで来たのですけど。その時におかみさんがその言葉をしゃべったら赤城が大変なことになって。運命の五分間を思い出したらしくて『空が落ちてくる 空が落ちてくる』ってもう取り乱しちゃって。加賀はオロオロするだけで役に立たないし。あの娘をなだめるのに大変だったんですよ」
「『空が落ちてくる』というのはドーントレスの爆撃のことなのかい?」
わたしは衣笠に尋ねる。
「ええ。致命傷になったのは爆撃では無くその後の誘爆と火災なのですけど。たった二発の爆弾でも赤城にとっては空が落ちてくるのと同じくらいの衝撃だったんです」
腕組みをして考え込む金剛
するとおかみが料理を持ってきた。天ぷら、刺身、ジャーヴィスや雪風が頼んだカツ丼、それに蕎麦が出される。
おかみは宴会のような料理をつくらせた私たちを上客と見てさらにお愛想を言い出す。
「いやー。最近はどこの映画館も真珠湾のニュースばかり流していますな。我、奇襲ニ成功セリッ!卜ラッ!トラッ!トラやッ!!」
攻撃隊の指揮官渕田中佐を演じた田村高廣の声色を真似するかのようなおかみ。
金剛は衣笠に聞く。
「このBotはどうじゃの? 真珠湾と言えば一航戦の栄光の歴史じゃから赤城も誇らしいと思うが」
衣笠は首を横に振った。
「駄目です。この話になると赤城は『敵空母を撃ちもらした…敵空母を撃ちもらした』って頭を抱えはじめます。そして最後はまた『空が落ちてくる』になるのですよ」
……一体どういうルートを進めばバッドエンドを回避できるのだろう。
「赤城はもともと巡洋戦艦として建造されていたのを途中から空母に作り変えたからの。人間で言えば強化人間のようなものでフネに不具合がきておる。おまけに真珠湾では飛行機乗りたちの期待を一身に背負って猛訓練じゃ。それが今頃になって無理が来たのであろうの」
衣笠と話しているようで実はわたしにも聞かせている金剛。責任感の強いヤツじゃからのう…と最後にため息をついた。
「ええ。本当に。この間の遠征でもこちらの実効支配海域に侵入した空中怪獣ギャ・オスを一艦だけで撃退しましたもの。それも旧式の零戦で」
「比叡からその時のデータを見せてもろうたが航空機との感応はとんでもない数値を出しておったの。まさに生体サイコミュじゃ」
「わたしは珊瑚海の海戦で空母に随伴したことがあるので。その時に臨時編成でついて行ったんです。赤城の戦いぶりを側で見ていたのですけど、オールレンジ攻撃って言うのかしら?『わたしよ死ねぇーッ!』って鬼気迫る形相で零戦を操っていたわ」
赤城「欠陥だらけの改装空母! そんな自分が嫌いでも!それでもわたしは一航戦!! ゆけ! わたしの荒鷲たち!」
金剛「このフィルムを見る限りではかなり追い詰められておるの。しばらく予備艦に回した方がよいかのう」
衣笠「それは...却って逆効果になっちゃいますよ」
金剛「わしの時はドックの中で朝寝・朝酒・朝湯のし放題だったがのう。おかげでたっぷり骨休めさせてもろうたわい」
衣笠「あの娘は金剛さんと違ってせんさ...いえ、感じすぎるところが玉に傷なんです」
雪風「司令、さっきからフィルムの下のほうばかりみてますねっ...あっ! 履いてない!?」
ジャーヴィス「アイムスピーチレス!! アドミラルってそういうところばっか見てるのね」
「ひどくなるようだったらウォ―スパイトにカウンセリングというものをしてもらうか。この間比叡とも話したがやはりわしたちも精神医療を学ばなければならぬのう。いや医学だけで解決するものかどうか...」
金剛は最後は独り言をつぶやいた後で
「ま、この事はひとまずおいて食べるといたそう。ここは港町だから魚が美味いぞ」
衣笠がサイダーの瓶の栓を抜いてコップに注ぐ。雪風がそれをみんなに回す。それを合図に料理に箸がつけられた。
刺身の盛り合わせは瀬戸内でとれたクロダイやマゴチ、タチウオ。その他に磯の魚が混じっている。何の魚かわからないが脂が乗っていてなかなかイケる。天ぷらは衣がぶ厚つくて食感よりも腹持ちが優先といった趣き。出された蕎麦も大きさが切り揃えられておらず、外殻まで一緒に挽くので黒く固い田舎蕎麦。
それでも食欲旺盛な彼女たちはもりもり食べる。さすが前世は油食いのウォーシップだっただけのことはある。
イギリス艦のジャーヴィスは刺身を興味深そうに食べている。
衣笠は自分の近くにあった刺身皿もジャーヴィスの方へ寄せる。
ジャーヴィスは軽く一礼してマゴチを自分の皿に入れる。
さすがは司令官クラスも乗船する前提で建造されたフロティラリーダーだけあって箸もある程度使えるらしい。
「スカパフローにはこういう感じのお店ってあるの?」
と世間話をジャーヴィスに持ちかける衣笠。さっきまで金剛とディープな身内話をしていたのでその穴埋めらしい。
スカパフローはロイヤルネイビーがこの異界に建設した根拠地だ。柱島と同じく島嶼地帯にある。
ただし瀬戸内の気候温暖な柱島と違って北海にあるので、寒い上にいつも突風が吹いているという
「あそこはなーんにもありません。テニスコートが一面だけあるけど風が強いのでいつも閉鎖してます。みんなで飲んだり食べたりするのだったら陸上の宿舎か誰かの艦に集まるしかないですね」
「それじゃあ、つまんないね」
と海老の天ぷらを口に入れる雪風。衣が分厚かったが強引に食いきる。
「わざとそうしたのよ。マレーヤさんたらね。何も無いほうが訓練に集中できるだろうって。あーあ。神話の力ってヤツで基地を再現するならマルタかアレキサンドリアにしてくれれば良かったのに」
マゴチが気に入ったのか箸が止まらないジャーヴィス。箸の使い方に慣れていないせいか一切れ落とした。だがサッと指でつまみ上げて口に入れると何事もなかったような顔をする。
「あらら。そういえば、ホーキンスさんも同じようなことを言ってたわね」
衣笠は何も見ていない顔でタチウオの刺身を取って醤油につけると、片方の手のひらを下に添えて口に入れた。
ホーキンスと言えば1919年に竣工した古株のイギリス重巡だ。わたしは衣笠に聞いてみた。
「きみはホーキンスと親しいのかい?」
「はい、提督。わたしたち古鷹・青葉型はホーキンス級を目標に作られましたから。あの人たちは偉大な先輩です」
列強諸国が海軍力を競いあっていた帝国主義の時代、新しい艦を建造する時は他国艦を仮想敵とする場合があった。
例えば巨砲を備えたコロラドや長門に対抗するためのネルソン、軍縮条約失効後に競うように建造された大和とアイオワのように。
人間の女性に生まれ変わった現在でも彼女たちはライバルであり戦友でもあるといういささか複雑な関係だ。
「でもホーキンスさんは戦後まで40年近くご活躍で大したものだわ。わたしなんかトラック、ラバウル、クインカロラ、メウエ水道、ショートランド…ニューギニアの浅い海を忙しく走り回っているうちに気がついたら沈んじゃってて」
「自分が沈んだ場所さえハッキリ覚えてないの」
と冗談めかして語る衣笠。
「あのソロモンの戦いではわしの妹の比叡や霧島も沈んでおるが、まさしく混戦じゃったの。たまにアメリカ艦の奴らと戦話をするが、いつもお互いにわからなくなっておしまいじゃ」
と金剛。
衣笠はサイダーを飲みながら何か考えごとをしていたが
「ね、金剛さん。せっかくだから何か楽しいことをしませんか」
「ん?…どうしたのじゃ?藪から棒に。楽しいこと…そうじゃ。まだ昼間じゃが酒でも持って来させて飲むとするか」
「駄目です。比叡さんたちが側にいない時は金剛さんにお酒を飲ませないようになっています」
金剛にメッとするような衣笠の顔。
「せっかく提督が来られたので夕刻まで柱島泊地をあちこちご案内しましょう。それも空から」
わたしは衣笠に聞いた
「空から?…それはどういうことなんだい?」
衣笠はちょっと得意そうに
「帝国海軍で航空機用のカタパルトを搭載したのはわたし衣笠が最初。そして古鷹・青葉型は偵察巡洋艦として作られましたから、飛行機の扱いは慣れているんです。水偵を使って水上地上の目標を撮影する訓練は何度もやったわ」
「つまり、泊地上空を水上機で飛ぶということかい?」
「はい提督。滑走路の無い島でも入江や湾内に機体を着陸させられますから便利ですよ」
わたしは昔見たことのある映画、水上機のパイロットを主人公にした『その男はアカの豚』
を思い出した。
風光明媚なアドリア海を水上機が疾走する映像はとても素敵だった。
ここは瀬戸内だがアドリア海と同じく気候温暖で風光明媚。あの時の感動を実体験できるとは……
「それは面白そうだね」
「では、決まりじゃな」
と金剛。
金剛は店のおかみに言いつけて海苔巻きとお茶、ラムネを用意させる。その間に衣笠は隣にある扶桑の駄菓子屋へ行ってキャラメルや芋羊羹、ニッキ水といった甘味を買い入れてくる。
かなり頼んだのでご機嫌なおかみの
「またおいでなはれ」
の声を背にしてわたしたちは重巡衣笠が係留されているポイントへ内火艇で向かった。
目の前の小島を越えると重巡衣笠の艦影が見えてきた。前部には背負い式になった連装砲塔二基、後檣の基部には台形になった水上機の格納庫、格納庫と三番砲塔の間には例のカタパルトがある。
衣笠は内火艇を操縦しながらわたしに向かって
「あそこに射出機があるのが見えますか? あれは最近になって再開発した九五式カタパルトです。着水した水偵をデリックで吊り上げる作業がいらないから便利ですよ」
「ほう、試験的に北極探険船北斗丸に搭載されたきりになっておったが、よく復元できたの」
「大変だったんですよ。海軍の資料は廃棄されたので平田晋策先生の『新戦艦高千穂』でしか見つけられなかったんです。小説を読んで設計図を引くなんて平賀譲先生が聞いたらどう思われるかしら」
「平田晋策殿か。あのご仁は海軍の偉いさんと仲が良かったが、ちょくちょく機密の兵器を小説に登場させておったの。自動車事故で早世されたのは残念じゃった」
内火艇は重巡衣笠に近づいて行く。
衣笠はわたしたちを振り返ると
「わたしの水偵は現在春鳥号と夏鳥号を搭載しています。金剛さんは航空機の操縦が出来ましたよね? 二機で分乗しましょう」
「うむ。わしのフネも水偵を搭載しているからの。もちろん操縦もできるぞ。せっかくじゃから提督は衣笠と一緒の機体に乗るがよい。わしは雪風やジャーヴィスを乗せていく。三名で94式の定員ちょうどじゃ」
内火艇からラッタルを登って重巡衣笠の甲板に上がったわたし。
カタパルトの上の水上機「春鳥号」にひらりと飛び乗った…はずだが
平田晋策の小説に出てくる少年飛行士のようにはいかず、足を踏み外して危うく落っこちそうに…
あわや事故になるところだったが先に操縦席にいた衣笠が手を掴んで抱き上げてくれた。
下を見たら金剛はやれやれという顔をしている。雪風は「大変!」と口元を両手でおさえて叫んだ。
「ストゥーピッド!! 心配かけさせないで!!」
と大声で叫ぶのはジャーヴィス。
わたしはすまんすまんとばかりに手を振る。
操縦席に入ると衣笠から渡されたパラシュート内臓のライフジャケットをつける。
発動機が動き出す。「よしッ」とパイロットの衣笠が号令をかける。
カタパルトに押されて春鳥号は勢いよく飛び出した。
一旦は自重で沈んだ春鳥号は波の上をかすめたが、風を読んだ衣笠が上げ舵を取るとそのまま上昇して果てしない青空の深みのなかへ…
窓から見下ろすと金剛の操縦する夏鳥号がついてきている。
夏鳥号の背後には大小の島々が集まっている柱島泊地が見える。
「今は艦隊のほとんどは水雷戦の訓練で外洋に出ています。でも、いつもはね。あの内海のあちこちに艦が投錨しています。ここからは見えないけど海に係留用のブイが浮かべてあるの」
連合艦隊が集結している時の眺めは見事なものですよと衣笠はわたしに説明する。
柱島泊地の向こうには、永井路子の小説の言葉を借りればその山すそを山霧が這っているであろう中国山地。
そしてさらに向こうには神々のいます奥出雲の山々が見える。この異界はわたしが生きていた世界と合わせ鏡なのだ。
日本史の重要な舞台となった瀬戸内から奥出雲。天空から眺めているうちに、わたしはこの異界で自分が日本人だということを強く意識した。
わたしが柱島泊地の向こう岸を見ているのに気づいた衣笠は
「では、少し陸地のほうにも飛んでいきましょうか」
そう言うと後続の金剛機にバンクを振って合図すると対岸に向かう。
異界における帝国海軍の根拠地である柱島泊地
衣笠「提督、下に見えるのが柱島泊地です。柱島と倉橋島の間にある柱島水道に各艦が投錨していました…ですが」
金剛「うむ。わしらがもといた時代と全く同じには再現できなんだ。神話の力といってもご都合主義的に何でもできるとはいかぬのじゃ」
衣笠「わたしたちの時代だと柱島には港もお店もありませんでしたね」
金剛「まあ一休みするのにいちいち呉の町まで行くのは面倒じゃろう。ほら、人間どもの空港にスカイタウンとやらがあるじゃろ?あれにヒントをもらって柱島に店やラウンジを作ったのじゃ。出航のちょっと前に皆にくつろいでもらおうと思ってな」
雪風「ジャーヴィス、お土産屋さんもあるよ。後で案内してあげるね」
ジャーヴィス「ほんとう? じゃあ帰りにロイヤルネイビーのみんなに何か買っていこうかしら。エキゾチックなスーベニアがいいわね」
金剛「土産物店は霧島の担当じゃったの。並べられているのは柱島饅頭、軍艦煎餅、港おこし、海兵団子、ご当地キャラの水兵人形……外国艦はあれで喜ぶのかのう」
広島の上空まで来ると衣笠は少し高度を下げる。
すると雲間から見えるのは、戦後生まれのわたしは写真でしか知らない広島県産業奨励館…
さらに春鳥号は北の方に向かう。今のイオンモール広島祇園がある場所には田んぼが広がっている
そして家畜小屋を備えた農家。その庭を走るおかっぱ頭の女の子と洗濯物を干す母親の姿…ここは戦前の日本なのか。
そんな景色を窓から見たわたしは衣笠を振り返る。
衣笠は表情を改めて
「はい。提督がお考えになったように雲の下に見えるのは昭和20年以前の日本です。そこはわたしたちと共に沈んだ乗組員の故郷です。あの人たちの魂もこの異界に生まれ変わって家族のもとに帰ったのですよ」
再びさっきの家を見下ろすと、走っているうちに転んだ女の子を抱き起こす母親。母親が女の子の膝を撫でていると、家の門にザックを背負った父親らしき若い男が現れ、気がついた二人は帰ってきた父親に駆け寄っていく…
「あそこの家の父親はわたしのフネの下士官です。機銃掃射で重傷を負って退艦できずにわたしと運命を共にしました。最後まで残された家族を案じながら。でもこの異界では二度とあの親子が引き裂かれることはないわ」
わたしは不意に涙が出てきた。衣笠は自分のハンカチを取り出すとわたしの涙をそっと拭ってくれた。
衣笠「さあ、柱島に戻りましょうか」
「さあ、柱島に戻りましょうか」
衣笠は優しくわたしの涙を拭ってくれた後で自らの手を操縦桿に戻そうとした。
戻す前にわたしは彼女の手を取って優しく握りしめる。
わたしに手を握られた衣笠は顔を真っ赤にして下を向いたが払いのけようとはしなかった。二人だけの止まったような時間が流れていく...ずっとその時間は続くように思えたが...
「提督...今は水偵を操縦していますから...」
衣笠はわたしの手をそっと外すと再び飛行機の操縦に集中しはじめた。(続く)
後書き
雪風「今回から新しく重巡の衣笠さんが登場しました。では衣笠さん、自己紹介をお願いします」
衣笠「はい、軍艦の衣笠です。よろしくお願いします。一等巡洋艦や重巡洋艦と呼ばれることが多いのですが、帝国海軍内部での正式な名乗りは『軍艦』の衣笠です。ここは試験に出そうかな」
ジャーヴィス「パラパラ…えーと…インペリアル・ジャパニーズ・ネイビーでは軍艦に分類されるのは戦艦と巡洋戦艦と巡洋艦と空母、一時期は海防艦と砲艦…ただし駆逐艦と潜水艦は含まれず…雪風、あんたウォーシップじゃなかったんだ?」
雪風「がーん!! そうなの…雪風は駆逐艦雪風としか名乗れないの…クスン」
衣笠「よしよし…泣かない泣かない。ジャーヴィス、帝国海軍では戦闘艦を全て含める場合は艦艇って呼んでいたの。駆逐艦と潜水艦の艦種については大艦巨砲時代の古い区分があの戦争まで残っていたと言えるわね」
雪風「では気を取り直して…衣笠さんは青葉型重巡洋艦。古鷹型と青葉型は造船の神様と呼ばれた平賀譲博士が心血を注いだ設計と言われていますが」
衣笠「はい、そうです…とも言いきれないのだけど。軽巡の夕張、重巡の妙高ともども平賀先生が日本独自の巡洋艦を目指して設計なさったデザインよ。ただ、わたしと青葉の設計について軍令部は不満だったようで平賀先生が外遊している間に……ゴニョゴニョ」
雪風「えーっ!! 無理やり豊胸手術を受けさせられた!!……違った主砲を単装から連装砲塔に取り替えた!?」
衣笠「ちょっと! 声が大きいわ雪風」
雪風「あっ…すみません。ジャーヴィス、今のはオフレコだから」
ジャーヴィス「心配なく。ちゃんとマイクのスイッチは切ったわよ」
衣笠「でも執刀した美容外科医…じゃなかった設計官だった藤本喜久雄造船少将も平賀先生と並び称される天才技術者。わたしの体型を崩さないようにしてくれたのは感謝しているの」
雪風「高雄さんや最上さんを設計された方でしたよね。友鶴事件で失脚して早く亡くなられたのは残念でした」
ジャーヴィス「海軍のエンジニアでは、キクオ・フジモトとユズラズ・ヒラガで権力争いをしていたんでしょ? あんたんところって揉め事ばかりね、雪風」
雪風「んー。ユズル・ヒラガだよ、ジャーヴィス。たぶん知ってて言ってるのだと思うけど『平賀譲らず』は自分の信念を曲げない平賀博士に周囲の人間が言った悪口だからね」
衣笠「軍政と軍令、連合艦隊で意見が対立すると押さえが効かなくなるの。指揮系統では同格なのでみんなお山の大将ばかり。陸軍海軍の統帥は陛下の専権事項と言われていて、議会が軍に介入できなかったのも大きいのかしら」
ジャーヴィス「へー。ロイヤルネイビーのように議会の監査や委員会への説明をいつも気にしていたのとは違いますね。そういえば我が国のチャーチルやステイツのルーズベルトのような指導力のある政治家ってあの時代の日本にはいませんね」
衣笠「今にして思えば、大東亜の戦いで負けたのもそれが原因なのかな? でもあの時の政友会や民政党に統帥を預けろと言われてもね。ちょっと考えちゃうな、わたし。どうせ与野党の政争で海軍の予算を削られるだけだもの」
雪風「雪風が生まれる前の話ですけど、代議士さん以外にはどーでもいい話で内輪もめばかりしていたと聞きました。いつの時代も変わりませんね。ということで、 そろそろ時間ですっ!」
衣笠・雪風・ジャーヴィス「「「みなさま最後までご清聴頂きありがとうございました~それではまた次回でお会いしましょう!!」」」




