表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
虚言の堕天使  作者: みさこんどりあ
第二部 亡霊少女の異世界放浪旅
87/91

フェルミオン

クレアはぎこちない動作で杖を前方に構え、それをマホミルは両手を軽く添えて支えてやる。


「そう、そうやって魔力を込めて…」

「こう?」

「そうそう。じゃあ、放ってみて」


クレアは手に汗握りながらも、全身の魔力を杖に集中させる。爆発しそうな魔力を、思いっきり一気に前に突き放つ。


「えい!!」


特に何も起こらなかった。


「…あれ?また不発…」


クレアは肩を落とし、がっくりとうなだれた。


「はぁ…また失敗しちゃった…」

「こういうのは場数だからね」

「わたし才能ないのかなぁ…」

「別に泣くことじゃないでしょ」


別に杖自体は、魔力量を選ばず、比較的少ない魔力でも発動するよう調整してある。何か思うところがあったのか、マホミルは手をぽすっとクレアの頭に置き、静かに手袋越しに頭を撫でた。


「最初はみんなそんなものよ」


「ししょーもそうだったの??」


マホミルは一瞬考える素振りを見せるが、やがて開き直って、何食わぬ顔で言った。


「いや私は最初からできてたけど」


珍しく早口だった。


「じゃあさっきのは何?!」



次の瞬間、誰かの声が聞こえてきた。声の主を探すと、そこには、この間ダンジョン内に置き去りにされたはずのイアデルがいた。何故か頭に特大サイズのたんこぶができている。


「いやー、なんとか帰ってこられたぜ!さっき極太ビームに巻き込まれたときは、どうなることかと…」

「チッ、自力で帰って来やがったか…(小声)」

「お前今 舌打ちしたよな?」

「えー、なんことぉ?」


急に営業スマイルを浮かべ、合わせた手をあざとく胸の前で組む。耳を垂れ下げておねだりムードを醸し出したマホミルは、胡散臭い笑みを浮かべ誤魔化すようにそう言った。


師匠って、都合の悪い時だけぶりっ子みたいになるんだよなぁ…


そういえば、こんなやり取り前もしたような気が……まぁ…いっか!


この件については、今後考えないようにしよう。過去のことを気にしてもしょうがないと、クレアは割り切った。きっと自分の気のせいに違いない。


マホミルは今度は急に眉をひそめ、イアデルを冷たくあしらうようにして言った。


「そろそろおうちに帰ったらどうだよ、クソザコヒトデ◯ン」

「俺を常に罵倒していなければ、死に至る奇病に罹っているのならまだ分かるが…それ以外のお前は何だ?微塵も面白くないものを、ただ意味も無く擦り続けているのか?そりゃはっきり言って異常と言わざるを得ないな」

「は?」「あ゙?」

「ちょ、二人ともストップ〜!!」


クレアが仲裁に入ったことで、マホミルとイアデルの喧嘩はすんなりと終わった。この二人なら、下手したら国一つ滅ぼしかねないとクレアは思った。


「…あれ?」


ふと疑問に思ったクレアは、さっきまで二人が喧嘩していたにも関わらず、イアデルに問うた。


「イアデルに家ってあるの??」


そう、さっきのマホミルの言い分からして、イアデルには別に家があることになる。対してマホミルも「どうせ闇の物質の一族だから、親玉がいて、拠点があるんだろ」ぐらいの認識だった。


イアデルは急に黙り込み、しばらく考える素振りを見せるが、古い記憶の扉を開けると、やがて開き直って口を開いた。


「俺も彼の地を離れてから随分と経つ。今ではどうなっているのやら…」


イアデルは追憶に浸り、昔慣れ親しんだ場所や人を思い出すや、懐かしむような調子で言っていたが、徐々にこわばった表情へと移り変わっていった。


「あそこではな、全ての命が一人の手から創られ、その一人のためだけに死んでいくんだ。行動・思想・姿形…誰もが誰も、見分けのつかないよう育てられる世界。全ての生き物どもは、一人の独裁者のためだけに存在していると言っても過言ではない。自らの命さえ、なんの躊躇もなく放り出すような、つまらない連中ばかり。面白味も何もない世界だ」

「……わたし、難しい話はよくわかんないけど、帰れるお家がまだあるのに、どうして帰らないんだろうな……って」


その話に少しマホミルが反応するが、すぐさままた黙り込んだ。


「わたしならちょっと見に行きたいかも」


イアデルは一瞬考える素振りを見せるが、やがて口を開いた。


「…なるほど。故郷があるうちに、か」



「…今度帰ってやってみるか」





おまけ


イアデル:買い置きしてあったドーナツを特に悪気なく食べ尽くしたせいで、歌いながらウキウキして箱を開けたクレアが「ドー♪はドーナツーの、ど、どうして…」と床に崩れ落ちた日以来クレアと顔を合わせづらい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ