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虚言の堕天使  作者: みさこんどりあ
第二部 亡霊少女の異世界放浪旅
81/91

依代

クレアは印刀を手元に出す。足音はどんどん近づいているが、一向に姿が見えない。クレアは額に汗を浮かべた。辺りを警戒しながらも、その事を訝しんでいると、虚空から一直線に光線が飛んできた。


「!」


クレアは直撃するギリギリのところで回避した。攻撃が肩を掠め、血が滲む。





それは先程まであった出来事まで遡る。

マホミルとクレアは遺跡を探索していたが、急にダンジョンの雰囲気が変わったのに二人は気がついた。石造りで重苦しい雰囲気の遺跡だったのが、急に神殿のような開放的で蒼古の白が際立つ空間へと変化した。朽ち果て人のいなくなった神殿の中を、しばらく二人は進んでいくと、開けた場所へとたどり着いた。ボス部屋だ。そこにはひょろりとした男の亡霊がいた。陰鬱そうな外見をしており、水色の癖の強いうねり毛が片目を隠していた。青白く生気を感じさせない顔をしていたが、その佇まいには一点の隙もない。だが、マホミルが一番気になっていたのは、腰に携えている抜き身の剣だ。魔力の反応からして、魔法使いなのは間違いないのだが、魔法使いが戦闘で剣や槍といった類の武器を持ち歩くのは珍しい。ということは、考えられるとしたら魔法と斬撃の二刀流か。随分と珍しいものだな、とマホミルは思いつつ言った。


「戦闘はクレアに任せるわ」

「え、なんで?」

「私の弟子になりたいんでしょ?それならこのぐらいの敵 倒してみせなさいよ」


マホミルは「別に問題はないわよ。勝てる相手だから」と言って何処かに消えてしまった。


もうなんでこんな重要な時にぃ〜〜!店主さんのバカ〜!!





そして今に至る訳だが……


—やっぱり、やりづらいな。

近接では剣、離れれば魔法と言ったように、亡霊は攻撃手段を使い分けていた。さらに、姿を消しているので、攻撃の軌道が読みづらい。相当な手練だ。


また、亡霊は姿を消す。

魔法で姿を消しているのだと分かれば、大して問題ではない。気配でおおよその位置は割り出せる。特に、他の冒険者と比べ、クレアの視覚は極めて優れている。相手が動く際に生じる、宙を揺らぐ砂ぼこりの僅かな軌道の乱れで、相手を捕捉した。


ただそれでも、全てを把握できるわけじゃない。


「っ!」


正面からの光線。ギリギリのところで防御したが、それでも強度が足らず後ろにふっ飛ばされる。壁に衝突し、肺の空気が押し出された。みぞおちを深く殴られたような苦痛がクレアを襲った。


亡霊は姿を現した。神殿内に注ぐぼんやりとした白い光を背に、ゆっくりと近づいてくる。


一体どうすれば……

店主さんは勝てる相手だと言っていた。もし、こんな時、店主さんならどうする?



『もしダメそうだったら、その怪異にとって‘一番思い入れがある物’を壊しなさい』


ふと、店主さんが言った言葉がフラッシュバックのように蘇った。

店主さんはその怪異にとって一番思い入れのある物を壊せと言っていた。

あの亡霊にとって一番思い入れのある物ってなんだ?

…今までの言動に何かヒントが……




『お美しいでしょう?』


この部屋に入ってきた時、亡霊は確かそう言っていた。一体何か美しかったんだ?その時、部屋の中央には天使像が置いてあった。もしかしてあの天使像のことか?




クレアは立ち上がって、軽く腕を回し、肩の様子を確かめる。骨に異常はなさそうだ。


動ける。


亡霊が姿を消す。

クレアは手汗でぬめる印刀を握り直し、意識を研ぎ澄ませた。無駄に動いても、体力を消耗するだけだ。一瞬でケリをつける。外せばこちらが死ぬだろうが、それはそれで仕方ない。


足音が近づいてきた。


風穴が吹き、傾いた光が天使像の稜線に触れる。白い光が神殿内に突き刺さり、亡霊の顔を照らす。


刹那の間、亡霊に衝撃が走る。クレアは天使像の方向に走った。

クレアは亡霊の警護魂に火をつけた。彼にしてみれば、クレアの一直線の動作は読みやすかったことだろう。動きを読まれてはならない。そのために無軌道に徹するのだ。クレアは黒い風になって、亡霊を翻弄した。ランスが描く幾筋もの軌跡を、ひょいひょいと器用に避けて、一気に駆ける。亡霊は激怒した。クレアの行路を割くべく、天使像へと先回りする。亡霊が近づいてくる。亡霊は怒りの青い炎を全身から噴き出した。亡霊はランスを掲げて、一気に、クレアに向けて振り下ろした。刹那、クレアが石を削る道具、石ノミを、抜いた。彼女の石ノミさばきは隔世を超えて、まさに神業。ありとあらゆる素材を美しい立体造形物に生まれ変わらせる。振り下ろされた一筋は、一瞬にして、白銀の美しい一輪の花に化けた。


「そんなことがあってたまるか!!」


そうは言っても、実際に剣は削れたのである。


亡霊が狼狽えているうちに、クレアは天使像の目の前へとたどり着いた。そうして走る勢いのままに、左足を前に踏み込んで、体重を乗せた最強の一撃を放つ。


「はああぁ!!」


クレアの印刀は天使像の顔面にめり込んだ。やがて、ばきばきと石に亀裂が入り、バラバラに砕け散った。









おまけ


イアデル「いいか、お前が今銅貨6枚持っていて、マホミルに銅貨2枚くれと頼んだら、お前は今銅貨何枚持っていることになる?」

クレア「6枚だね」

イアデル「うむ…お前は足し算のことをよく理解していないようだな」

クレア「イアデルは店主さんのことをよく理解していないようだね」

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