陰火
二人はその後何回か魔物に遭遇して戦闘に陥ったはものの、別になんてことなく討伐し、しばらくそのまま荒野の中を歩き進んでいた(マホミルはドロップ品が向こうからやってきたと喜んでいた)。突如マホミルが歩む足を止める。勿論、この辺り一面は大荒野で、砂以外他にない。一体どうしたんだろう、とクレアもつられて立ち止まる。
マホミルは一瞬考える素振りを見せたが、やがて開き直り口を開いた。
「クレア、ちょっとマップ見せてくれる?」
「? いいよ」
クレアはその言葉の意図までは分からなかったが、別に断る理由もないし、疑問に思いながらも持っていた地図をマホミルに受け渡した。きっと、店主さんのことなら、自分が見落とした何かに気づいたのかもしれない。
マホミルはマップとにらめっこを始めて、しばらく黙り込むが、急に何かに気づいたかのように口を開いた。
「やっぱり、ここに隠し部屋がある」
「こんな砂以外なんにもないような所に?」
「構造的に絶対あるのよ。多分この辺にスイッチ的な何かが…」
そう言ってマホミルは、丁度自分達が立っている地面に敷かれているタイルを探る。何枚目かのタイルを探っていたとき、ふと他のタイルと叩いた時と、音が微妙に違うのに気づいた。こっちの方が音が僅かに高い。マホミルはそのタイルを引き剥がそうとすると、案の定そのタイルは地面から剥がれた。中が少し凹んでいて、そこには双葉型のネジがあった。ネジを回すと、ゴゴゴゴゴ、と地響きのような音が辺りに響き渡り、隠しダンジョンへと続く階段が現れた。
「ほら、言ったでしょう?」
二人は遺跡の中へと進んでいった。
石造りで重苦しい雰囲気の遺跡内。
マホミルは魔術で辺りを明るく照らしながら、クレアは足音を響かせ、暗い遺跡を探索していた。
「やっと暗くなったぜー!」
どうやら、外の日差しが遮られ、辺りが暗くなったことで、さっきまでクレアの影に隠れていたイアデルが、影から顔を出したようだ。
「どうせ3人になったなら手分けして探索しましょ。私達はあっちの方を調べるから、イアデルはそっちの方調べてて」
3人は一旦二手に別れて辺りを探索することとなった。
ずっと同じ模様の石壁だったが、イアデルはその中に少し色合いが違う模様を見つけた。
「ん?」
近付いた瞬間、ガタン、と音がしたと思うと、天井がイアデルをぺしゃんこに押し潰した。
「店主さん、さっきイアデルの悲鳴聞こえなかった?」
「んー、気のせいじゃないの?」
しばらく歩いていくと、急にダンジョンの雰囲気が変わったのに気がついた。石造りで重苦しい雰囲気の遺跡だったのが、急に神殿のような開放的で蒼古の白が際立つ空間へと変化した。朽ち果て人のいなくなった神殿の中を、二人は進んでいく。遺跡の中は足場が悪く、辺りに崩れ落ちた建物の石の破片が散乱していた。久しぶりに人が入ったことで、ほこりを含む白い砂ぼこりが舞う。白い倒れた柱に手を置いてバランスをとりつつ、二人は限られた足場の中を進んでいく。
しばらく歩いていると、少し開けた場所に出た。
「恐らくボス部屋よ。クレア、気をつけて」
その部屋の中央には、天使の石像が一つ、置かれていた。穴が空いた天井から光が差し込み、ほこりに反射してキラキラと光る。大きな翼に、頭には天使の輪っかが。台座を含めればかなり大きいが、天使自体は自分より少し大きいくらいで、あまり変わらないように感じられるそれ。忘れ去られた神殿に残されたそれは、神秘的な空気を纏っていた。
「お美しいでしょう」
突然、後ろから声が聞こえた。ふと振り返ると、そこには一人の男がいた。話しかけられる直前まで、魔力も気配も全く感じなかった。足が無い。コイツも亡霊なのか。体が透け、ローブは決まった形を持たずゆらゆらと揺らいでいる。…随分と若いな。紺色のローブを身に纏った、水色の髪をした騎士。左目が常に髪で隠れている。肌は青白くて彩度が低く、顔色が悪い—というか怪異だから既に死んでるのか、とマホミルは一人で思った。上衣とスカート部分が繋がった黒い服を着ており、腰の灰色の包帯にランスが刺さっていた。
マホミル:昔 午後ティー買おうとしたら、自動販売機の前に妹が立ってて「どうしたの?」って聞いたらお姉サマにコーラをあげたいって。小さな手に80円。めっちゃ感動した。足りないお金入れてあげた。すっごい笑顔で「アリガトー」って言ってコーラあけて飲んでた。パニックが止まらない。




