亡者の大荒野
その後、二人は持ち前の腕前で第一階層を難なく突破し、第二階層へと進んでいた。
第二階層は一面見渡す限り砂だった。第一階層の優しい春の和やかな日差しとはうって変わって、ぢりぢりと暑い光が皮膚を焼きつけていた。
第二階層に入って早々汗だくになって、うんざりしてきたマホミルは暑さで揺らぐ遠くの景色を睨みつけた。早くも滝のように汗が流れ、向こうで陽炎が揺れるのが見える。
「日差しが暑いというより痛い…イアデルの気持ちがちょっとわかるわね…」
けれど、それを超える特級暑がりがここにいた。前回 急遽旅に加わった某ヒトデだ。第二階層に到着するやいなや、「日差しが強すぎる。ちと‘影’を貸してくれ」と言って、クレアの影の中に潜り込んでいった。
なお、まだ被害がないからいいものも、少しでもクレアに危害を与えようとすれば、セコ厶 (マホミル) が文字通り飛んで来て嬲り殺しされるというシステムだ。がんばれイアデル。
しばらく特にこれといった事件もおきず、着々と平和に進んでいると、突如 断崖絶壁にぶち当たった。下を見ると底が分からないぐらいの高所で、クレアは少し足がすくんだ。
「おかしいわねぇ。マップにはこんな場所ないんだけど…」
「店主さん!あれ見て!」
クレアが指差す方を目で追うと、そこには縄と木で作られた橋が渓谷にかかっていた。比較的新しい物らしく、強度に心配はなさそうだ。橋を渡ろうとしたその時、ふと、橋の前に木の看板が立てられていたのに気付いた。何か注意書きだろうか。板に書かれた文字を読み上げてみる。
「この橋わたるべからず…って。何よ、これ」
「まぁ、見ての通りなんじゃない?」
二人は、橋の向こう岸から二人の伺っている人物に気がついていなかった。
「くふふふ…なぞなぞを解かないとその橋は通れないぞ。というよりトンチだが…。さてさて、お手並み拝見…」
マホミルは一瞬考える素振りを見せたが、やがて開き直り口を開いた。
「飛んでいけば問題ないわね。クレア、掴まってて」
そう言って、クレアの両手をしっかりと掴み上げ、浮遊魔法で橋を使わずに飛んで渡って見せた。
「謎解けよ!!」
その人物はすかさずキレの良いツッコミを入れるが、それと同時に隠れてたところをうっかり出てきてしまっていた。
マホミルとクレアは初めてその姿を目撃する。古代エジプトの民族衣装のようなものを着た、菫青の髪と瞳を持った少女だった。年頃は、クレアより上でマホミルより幼いぐらいだろうか。ここにいる時点で、ただのそこら辺にいる少女ではないだろうが。
「あんた誰?」
「妾はこの砂漠を守りし者!王国が滅びし後も幽鬼と化し、この地を荒らさんとする者に天罰を与えるのd…「クレア、先行こ」
「無視すんなよ!!」
セリフをキャンセルされた挙句、そのままスルーして先に進もうとする二人に、「ちょっと待て!」と、先回りして必死に通せんぼする。まるで癇癪を起こして、意地を張ったガキみたいだとマホミルは思った。実際に子供なのだが。
「ここから先を通りたければ謎を解いていけ!」
「え、めんど……」
「第1問!」
「強制的なの」
「朝は4本、昼は2本、夜は3本足になる生き物は??」
「…これまた典型的な……答えは人間なのね」
怪訝そうにマホミルが答えると、その幽鬼は自信満々に言った。
「ブッブー、答えはそういう怪異でしたー。残念でしたー。死ねい!」
クレアは「それはちょっとどうなのかな…?」と思った。できれば、あの性格イマイチな幽鬼をなんとかしたいなと思った。クレアはなぞなぞとかはあんまり…なタイプ。クレアは芸術一本で食ってくのはきついから、冒険者やってる感じの人だった。絵筆とか触ってみたり、魔物とわちゃわちゃして暮らしてきた。けれども「ん?」って思ったことに関しては、割と気になっちゃう方の人かも。
幽鬼が二人に勝負を仕掛けてきた。しかし幽鬼の攻撃が届くより先に、幽鬼は目にも止まらぬ速さで、勢いよく空中に投げ飛ばされていった。恐らく飛ばされていった本人も何が起こったか分かっていないだろう。一瞬の出来事すきて何が起きたかよく分からなかったが、多分店主さんが物理的になんとかしてくれたのだろう、とクレアは思った。最後はキラリン、と輝く星になった。
「店主さん、あれなんだったんだろう?」
「さあ?」
突如、とっくに星になったはずの幽鬼の声がどこからか聞こえてきた。
「グゥッ…この妾を倒したといえどいい気になるなよー!この世に闇がある限りいずれ第2、第3の‘妾’が現れるだろうー!!」
「店主さん、あれどういう意味?」
「ラーメン屋の跡地にまたラーメン屋が出来るのとおなじ」
「そっかぁー」




