実力派な店主ⅰ
亡霊少女は店を開くことにした。
理由は簡単。お金がないからだ。
死んでから魔力さえあれば何も食べずに済む体質なったものの、だからって何も食べないででいるのも気が狂いそうだ。何より、他の生活に必要な物資がない。術式を開発するための紙もない。チョコもない。スイーツもない。何から何までない。
…というのが今の現状だ。
結局、どう考えても最終的にお金が必要になってくるのだ。幸い、私が生前に使っていた個人空間にいくつか物が残っていたが、それでも残っていたのは気に入ってる魔導書が数冊と、魔導具が何個か。売れば多少収益は得られるだろうけど、それでも一時的な収入だし、自分が気に入ってる物だけのことはあり、やはり手放すのが惜しい。
—ならどうするんだって?クフフ、自分で稼ぐのよ!
魔導具を売るのが嫌なら、自分で魔導具を作ってしまえばいい。幸い私には魔法薬学の知識もあったから、ポーションとかも作ろうと思えば作れるし、元々何か物をつくるのは好きなほうだったし…中々好都合なんじゃない。この年じゃどこの雇ってくれないし、あとなんか冒険者とかもあったけど戦うの嫌いだし。これなら私でもできそう。
そういうことで始めた店の経営。蓋をあけてみたら大繁盛も、超☆大繁盛!!
港町の一角にブースを作って置かせてもらって、販売したところ販売開始1時間もせずに完売になってしまい、販売数を増やしてくれとクレームが殺到した。
すぐに売れてしまうというレア感が出たのか、開店1時間前には長蛇の列が出来きてしまうという事態に陥った。
偶然、近くにあったのが平均より文明レベルが低い場所で本当によかった。まだ騎馬戦とかで戦ってる感じだもの。それも定期的に魔物が湧くっぽいから冒険者も沢山いるため需要が多いせいか、魔導具にポーションに装備に…売れるわ売れるわ……
他に魔導士もいないようだから、他にこういうの作れる人がほとんどいないのね。
そして今現在、一人で必死に商品作ってる。ほんとに猫の手も借りたい。
思い切って借金して起業してみて本当によかった。このごろは収入もかなり安定して、はじめの頃よりは忙しくなくなった。お店として大成功だ。
「店主さん、この装備もっと安くできませんか??」
困り顔の幼女に見つめられ、問い詰めるように発せられた言葉に、マホミルはスパッと言い切った。
「ちょっと厳しいわねぇ。この価格でも結構頑張ってるほうなのよ」
「むむむ…足りない……」
「クエストでも行ってくれば?最近魔物が多いって言うし」
「そしたら特売セール終わっちゃうよ〜」
クエストが終わると同時、ちょうど新しい装備が入ったとの噂を耳に挟んでよろず屋を訪れたはいいが、銅貨があと数枚足りない。
こんなことなら昨日画材買いすぎるんじゃなかった、クレアは肩を落とす。マホミルはこんなことで値切ってくれるような性格をしていない。
「…んもぉ〜、仕方ないわね。セール1時間だけ延長してあげる」
「ほんと?!」
「今回だけ特別ね」
訂正する。どうも押しには弱いらしい。
「ま、利益は十分に出るし…」と、よろず屋を後にしたクレアを、呆れた表情でマホミルは横目で眺めていた。
ぽかぽか天気、のんびり日和。「ふわあ」と、誰かが大きく欠伸した。
「そういえば、クエストには行かなくていいの?」
いつまでもクエストに行こうとする様子がないクレアを見て、疑問に思ったマホミルは尋ねた。
「うん。今日はもう3つ終わらせてきたよ。さっきたおした魔物今ギルドで解体してもらってるから、それが終わるの待ってるの」
「今はどの冒険者もクエストで出払ってるわ。ここまで魔物が多いのは珍しいわね」
「だいじょーぶ!わたしが全部たおしちゃうから!」
「あはは、頼もしいわね」
満面の笑みで言うクレアを見て、マホミルは苦笑した。私の記憶にあるウチの妹も、丁度このぐらいだったな。純白の髪に月色の瞳を持つその姿こそ可愛いが、実際のところかなりの量と質の魔物を倒しているのだから恐ろしい。クレアっていえば、この辺りで1番勢いがある冒険者で、異例の早さでグングンとランクをあげている、ある意味話題の幼女だ。輝くような真っ白のストーレートの長髪が、闘う最中もキラキラと美しくなびき、私が知っている中で最も強い冒険者でもある。今ではとっくにウチの常連さんだ。
けれど、クレアは顔を不安そうにぎゅっとすぼめる。
「でも、さっきのはちょっと強かった」
「だからわたしの火力が低いなって思ったんだ」
どうやら、今日になって魔物が急増していることと、その攻略難易度が上がっていることについては相関が認められるらしい。今日になってーー正しくは3つ目のクエストから帰ってきた後、急に装備を欲しがったのにはそんな理由がある。
「そんなことなら細工棒や印刀じゃなくて、投げナイフ使えばいいじゃない」
「わたし刃物見るとこわくなっちゃうからやだ」
駄々っ子か。
否、実際に子供だった。
んー、クレアって名前、どこかで聞き覚えが……




