なまえのりゆう
亡霊少女は街に向かった。
その街は治安が良さそうだった。商店街が建ち並んでいるところで、少女は衣食住の食と住を探した。ちょっとそこのベンチに座ってる、優しそうなお姉さんに話しかけた。
「すみません、近くに宿屋ってありますか?」
「あの角を左に曲がって右側にあるわよ…そういえば、君、見ない顔だね」
「…うん、えーっと…私 旅人なの。もうどこかわからないくらい、遠い星から来たの」
「旅人なのね。同伴者はいる?親とか」
親なんてもういない。
そんなことが言えるはずもなく、頭をフル回転させてこの状態を逃れられる言葉を探した。
「…私ひとり旅なの」
「へぇ、すごいわね!こんなに幼い子が一人で旅なんて…時代も変わったものね…」
「うん!あ、そうだね!あっ、私もう行かないと!ありがとお姉さん!」
少女は逃げるように宿屋に向かった。
その宿屋にはっきり言ってオンボロだが、年季が入って雰囲気のある店だった。少女はカウンターに背が届かなかったため、ぴょんぴょん跳ねながら宿主に話しかけた。
「すみませーん!」
「ん?あぁ…きみ、どうしたんだい?」
「あの、お店のお手伝いするので泊めてくれませんか」
「そもそもお連れさんはどうしたんだい?ひとり?」
「うん、私一人旅なの…」
「そうなのか?じゃあだめだ」
「……私、さっき通りでお金盗まれちゃったみたいで…他に行くあてもないんです!お願いします!ここに泊めさせてください!」
「…」
「皿洗いでも洗濯でもなんでもします!」
「…よし、わかった」
「本当ですか?!ありがとうございます!」
「今日の宿代はタダでいい。その代わり、掃除の手伝いをしてくれないか?」
「はい、わかりました!」
少女は宿の掃除を始めた。彼女は細かな作業が得意なためですぐに終わった。魔術を使ってはいけないということが不便だったが。
「お〜!もう終わったのか!」
「あと、ついでに暖房と扇風機 壊れてたから直しておいたわ」
「ほ、ほんとだ…直ってる」
「まだ他にやることはありますか?」
「いや、もう十分だ」
宿主はそう言い終わると、少女に名簿表を渡した。
「ここに名前を書いたらもう泊まっていいぞ」
(な、名前…)
もう前の名前は使えない。咄嗟にいい名前が思いつかず、少女は戸惑った。
「ほら、遠慮はいらないよ」
「…」
ふと、過去に自分が言った言葉がフラッシュバックのように蘇った。
『そんな嘘ツキは‘マフォ’っていうのよ!』
確か、マフォは魔術派の言葉だったから現在で知っている人はほとんどいないはず。たまたま魔術派の末裔やハルカドラボの考古学にあってバレる可能性も捨てきれないため、万が一のことに備えて流石にスペルは変えておこう。…けれど、マフォだけじゃ短すぎる気がするな。そうだ、自身のミドルネームから取ろう。それならバレにくいしいいかもしれない。
[マホミル]
少女は名簿にその名前を書いた。
「マホミルか。いい名前だな」




