高慢あるいは徒花【ⅩⅩⅩⅩⅦ】〜さよなら、絶望的なハッピーエンドⅷ〜
ちょっとグロいかも
異界の間
「クックック!パチーカ!なんてザマなんダィ!?」
「…んっ…くぅ」
黄金の腕輪を手にしたルマは、絶大な力を手に入れた。
なんと、パチーカが、あのパチーカが自分相手に苦戦しているではないか。
それは何にも換え難い喜びで、自身の心の奥底から恍惚とした楽しさが湧き出ているのを感じた。
含み笑いをすれば、その浮遊した足元には、傷だらけになって地面に手をついた、汚れたトモダチの姿。
息も絶え絶えで、突けばその部分がぐちゃりと潰れてしまいそうなほど。
「ミンナのヒーローが聞いて呆れるヨォ。ボクってソンナに強いかなぁ?」
「……っ!」
キル・ニードルを一本地面から生やし、彼を貫けば悲鳴を抑えるような呻き声が上がった。
ルマは満足そうに目を細め、ニードルで地面から浮遊した身体を、細い指でなぞる。
「ドンナ顔してるんダィ? 見せてくれヨォ」
指先でパチーカを回転させようとすれば、突き刺さったニードルに体を抉られて短い悲鳴が上がる。
深い紅赤がニードルを伝う。傷ついた姿は妙に加虐心をそそらせた。
「かわいいヨォ、パチーカ。そんな顔されたらもっといじめたくなっちゃうじゃないカ」
「ルマ…うぅ」
勢いよくニードルを抜くと心地よい悲鳴が聞こえた。突き刺された柔らかな傷跡はぽっかり穴が開いて、ぽたぽたと鮮烈な赤がこぼれ落ちた。
面白いな、と思い放り投げた。
「ぅあああっ!」
甲高い悲鳴。
上下左右、体のあらゆる場所を、針かと錯覚するぐらい細く鋭いニードルで突き刺し、空中に固定する。
体中を紫色の針に貫通され、標本のように身動き取れないままピクピクと痙攣し、呼吸もままならない。
完全勝利だ。
ルマは磔にされたパチーカの周りをとびまわったあと、笑い顔で彼の前に詰め寄った。そして針を壊し、肉体的にも精神的にもすり減り、疲れきってなすがままに貫かれるパチーカを開放して白い手に落とす。敵の手のひらの上で死にそうに咳き込みながら、焦点も合わずに四肢を投げ出す姿。
その小さな口に指先を軽く当てがってみる。
ゴムのようによく伸びる皮膚は、指先の動きに合わせてグニグニと広がった。
奥の方まで無理やりねじ込むと、しっとりと舌が感じられて、感触を楽しんでしまう。
「ホ〜ントよく伸びるネェ、面白いナァ。 ア、そうだ折角だからプレゼントダヨォ」
「っ……待って……」
異空間から小さな短剣を取り出す。ルマはそれを無理やりパチーカの口の中にねじ込んだ。
「好き嫌いはよくないよぉ」
「そん、なの、食べれな…んっ」
少ない体力で絞り出した声もかき消され、棘はパチーカの内側の柔らかいところを抉っていった。
えずいて吐き出そうと試みても、上から押し付ける細い指がそうさせてくれない。
体内の奥深くに傷をつけながら押し込められ、ついには、飲み込む。
本来受け付けないものを摂取した代償に、体のいたるところが軋む。
飲み込んでしまったものはどうにもならない、けれど内側から突き刺され、異物の不快感に、寝返りを何度も打ってのたうち回るしかない。
自分の手のひらでコロコロと苦しむ宿敵に、ルマは慈悲深そうに声がけた。
「アァ……痛いよねぇ、苦しいよねぇ。 ゴメンネパチーカ、でも今のキミ、イッチバンすてきダヨォ!」
「………うぅ」
「ラスボスが目の前にいるのに、お昼寝ナンカしちゃっていいのカィ? ホ〜ラ、恨み言のヒトツでも言ってみなヨォ!」
ケラケラと笑って、小さな魔法球を当て続ける。
その度に衝撃に跳ねて、傷がついていく。
「パチーカ、パチーカ! クックク……ボクのトモダチ!」
もはやぴくりとも動かない体の、フードを片手で摘み上げ吊るす。顔の前に持ってくれば、ダメージにただ耐える彼は人形のように思えた。
強敵を薙ぎ倒し、新たな力を手にして、自由気ままな呑気な彼が、己の思うようにただ打ちひしがれている。
ルマはそんな彼が愛しくて仕方がなかった。
まるで自分の手にした腕輪の力が、このためにあったかのようにも思える。
「パチーカ、今のキミ、サイッコウダヨ。 どうしようかなぁ、次は…」
「…………」
「また串刺しにして、ドリームランドに飾っちゃう? それともキミが望むナラ、ボクのテシタにしてあげてもイイヨォ!」
「…………」
「足の腱を切って、動けナイようにして、一生ボクのペットにナル? 全宇宙の支配者ノ隣に居られるなんて、スッゴ〜ク光栄でしょ!」
「…………」
「ドウスル?パチーカはトモダチだから、トクベツに選ばせてあげるヨォ! クシザシ? テシタ?」
「…ねぇ、ルマ」
「なぁに?」
呼吸音かと違えるような呟きに、ルマは耳を傾ける。
パチーカが素直に選ぶなんて思いはしないが、なんでもいい。
暴言でも、服従の言葉でも、命乞いでも、傷ついた彼の反応はなんでも楽しめる自信がある。
パチーカは体をだらんと下げて、息絶え絶えに、ルマに告げた。




