高慢あるいは徒花【ⅩⅩⅩⅩⅣ】〜さよなら、絶望的なハッピーエンドⅳ〜
キマツテスト…ウッ、アタマガ……
ルマは嬉しそうな笑みのまま、表情一切変えずに精神操作魔術を放った。パチーカは咄嗟に避けるがそれより驚きが勝った。
「ルマ!…ど…どうして!?」
やっと説得できたと思ったのに、何故。パチーカは、ルマが何故まだ攻撃を続けるのか分からなかった。
しかも、こんなに嬉しそうに。
「?……ナンデ逃げるの?大丈夫、キミのことはボクがちゃーんと支配してアゲル。その力も、その体も、その心も、何もかも支配してボクのものにしてアゲルよ!」
「…何言ってるの…?」
「アァ、今までなんで気づかなかったんだろう!こんなに側にいたのに!こんなにも心奪われてるのに!こんなにも支配したくて堪らないのに!」
攻撃を続けるルマに、パチーカはすかさず斬撃を一つ食らわせた。パチーカの斬撃を受けて、ルマはよろめき傷口を手で押さえる。
傷口が熱い。痛い。寒い。
元々真っ黒のゴスロリに、少しずつどす黒い赤が広がっていく。空間 攻撃魔術系特化の魔力質を持つルマは回復魔術を扱うことができないため、自身の傷を癒す手段はなかった。
「せっかく支配してあげようとしてるのに、ドウシテ逃げるんだよ!」
見開いたルマの目が、怒りの赤に染まった。
「どうしてって、ルマこそなんでわかってくれないんだよ!?まだこんなこと続ける気なの!?」
「トモダチだからだよ!」
ルマは叫ぶ。
それは、嘘偽りない彼女の心の叫びだった。
「ずっと、ずっと、ずーっと、ボクはトモダチが欲しかったんだ!なのに、誰もボクとトモダチになってクレナカッタ!いつも裏切られて、拒絶されて、最後はボクの側から誰もいなくなるんだ!トモダチが欲しいのに誰も信じられないんだ!また裏切られるかもしれない、また居なくなるかもしれないって、不安で仕方ないんだ……!ケド、支配しちゃえばもうそんな心配しなくていいんダヨ?安心して、ずっとトモダチでいられるダヨ!だからボクに支配されてよ!だからボクの物になってよ!!ネ、パチーカ……」
ルマの瞳が赤から紫に戻る。何も取り繕ってない彼女の瞳は、酷く悲しいものであった。
「ルマ……」
—知らなかった。きみの心が、もうこんなに壊れていたなんて。
ルマは片手で傷を抑え、もう片方の手に魔法陣を浮かび上がらせた。
「パチーカ……ボクとずっとトモダチでいてくれるんだよね…?」
—ずっと友達でいて…か。ぼくはずうっと、きみに願ってたんだよ。けど、いつも手を振り離すのはきみの方だったじゃないか。
「やめてよ。そんなことしなくったって、ぼくどこにも行かないし、もうどこにも行けないよ。ぼくたちはずっと友達だ」
ルマはパチーカの言葉を最後まで聞かず、指先から魔術を放つ。しかし、パチーカに片手剣で防がれた。
ルマは不満そうに叫んだ。
「ドウシテ拒むの!?」
「そんなことわざわざする必要がないからだよ。きみのためなら、そんなのいくらだってかかってあげる。だからさ…もう、消えないで……」
パチーカは、繰り返しによって自身が抱えるもの全てと、最後まで言えなかった言葉を今度こそ口にする。しかし、ルマはそれを否定するように頭を左右に振って叫ぶ。
「支配しないと、支配してこそ、ずっと‘トモダチ’でいられるんだよ!!キミも、支配しないと、きっとボクの前から居なくなる!そしたらボクはまた独りぼっちじゃないか!そんなのもうイヤダ!なのになんで拒むんだよ!ボクに支配されてくれないんだよ!?」
「ただボクは…キミとずっとトモダチでいたいだけなのに…」
ルマの悲痛な叫びに、パチーカは悲しげに顔を歪ませる。
ルマは本気だった。
支配しなければ、ずっとトモダチでいられないと本気で思い込んでいた。
だからこそ胸が苦しかった。
「ルマは……ぼくのことが信じられない?」
「……」




