高慢あるいは徒花【ⅩⅩⅩⅧ】〜その瞳には何も映らない〜
最近更新が遅い理由:主人公が嫌いだから
いつか彼女が話してくれた。以前から「パチーカ」を知っていたと。「あとでサインでも貰っちゃおうかな?」と茶化して。
「え…エ!?パチーカ!?あの!?」
ぼくの名前を聞いてルマは大げさに飛び上がって驚いた。そして、急にチャンネルを切り替えたように愛想良く笑った。
「ソッカ、ここ ドリームランドなんだね。そうなんだ、キミがパチーカなんだネェ!」
ルマは両の手でぼくの手を取って握手してきた。偶然有名人に出くわしたミーハーなファンのようにはしゃいでいる。これまでの「繰り返し」と違う反応なのは、そもそもの状況が異なるからだろうか。
「キミみたいなユーメージンがボクのこと知ってたなんて驚きだよぉ。そういえば、ドコでボクのこと知ったのかなぁ?」
自然な演技で嬉しそうに笑って、それでいてさりげなくぼくの情報源を探ろうとしている。いつの間にか、完全に会話の主導権を握られていた。
特に珍しいことではない。いつも彼は話し上手だった。たくさんおしゃべりをしたのに、本当に聞きたいことはいつも煙に巻かれてばかりだった。
――ぼくは一体、きみの何を知っているというのだろう。きみが好きなもの、嫌いなもの、得意なこと、苦手なこと。「友達」なのに、ぼくはきみの何も知らない。
きみのことを知りたい。しかし、今のぼくに、彼を知る権利はない。なぜならぼくは、きみとたった今出会ったばかり・・・・・・・・・・・なのだから。
「は……ははは……あはははは!」
ぼくはついに、乾いた笑い声をあげた。
ああそうか。きみと友達になったのは、ぼくではないんだ。きみと友達になったのは、きみと初めて出会い、そして別れた、あの日のぼくだったのだ。
きみが居る未来が欲しかったのに、間違っていたのはその望みそのものだった。
辺りが焦りと疑問、謎の緊迫感に包まれる。ルマはいよいよ困り果ててしまい、助けを求めるように周囲に顔を向けた。その意を汲んだ大王がぼくの左肩を掴んだ。
「おい、パチーカ、急にどうしたんだよ!さっきからおかしいぞ!」
持ち上げられた拍子に、ぼくの目からぽろりと涙がこぼれた。ぼくを見上げるきみの頬に、涙がぽたぽた落ちる。
ぼくはとっくの昔に見失ってしまっていたのだ。旧友達を大切に思う心も、きみを好きになった理由も、明日から目をそらさない強さも、全て。
かろうじて一つだけ残った言葉を、口にした。
「すきだよ、ルマ」




