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虚言の堕天使  作者: みさこんどりあ
虚言の堕天使 一部 虚言〜そして虚構
56/62

高慢あるいは徒花【ⅩⅩⅩⅧ】〜その瞳には何も映らない〜

最近更新が遅い理由:主人公が嫌いだから





いつか彼女が話してくれた。以前から「パチーカ」を知っていたと。「あとでサインでも貰っちゃおうかな?」と茶化して。


「え…エ!?パチーカ!?あの!?」


ぼくの名前を聞いてルマは大げさに飛び上がって驚いた。そして、急にチャンネルを切り替えたように愛想良く笑った。


「ソッカ、ここ ドリームランドなんだね。そうなんだ、キミがパチーカなんだネェ!」


ルマは両の手でぼくの手を取って握手してきた。偶然有名人に出くわしたミーハーなファンのようにはしゃいでいる。これまでの「繰り返し」と違う反応なのは、そもそもの状況が異なるからだろうか。


「キミみたいなユーメージンがボクのこと知ってたなんて驚きだよぉ。そういえば、ドコでボクのこと知ったのかなぁ?」


自然な演技で嬉しそうに笑って、それでいてさりげなくぼくの情報源を探ろうとしている。いつの間にか、完全に会話の主導権を握られていた。


特に珍しいことではない。いつも彼は話し上手だった。たくさんおしゃべりをしたのに、本当に聞きたいことはいつも煙に巻かれてばかりだった。


 ――ぼくは一体、きみの何を知っているというのだろう。きみが好きなもの、嫌いなもの、得意なこと、苦手なこと。「友達」なのに、ぼくはきみの何も知らない。


きみのことを知りたい。しかし、今のぼくに、彼を知る権利はない。なぜならぼくは、きみとたった今出会ったばかり・・・・・・・・・・・なのだから。


「は……ははは……あはははは!」


 ぼくはついに、乾いた笑い声をあげた。

 ああそうか。きみと友達になったのは、ぼくではないんだ。きみと友達になったのは、きみと初めて出会い、そして別れた、あの日のぼくだったのだ。


きみが居る未来が欲しかったのに、間違っていたのはその望みそのものだった。 



辺りが焦りと疑問、謎の緊迫感に包まれる。ルマはいよいよ困り果ててしまい、助けを求めるように周囲に顔を向けた。その意を汲んだ大王がぼくの左肩を掴んだ。


「おい、パチーカ、急にどうしたんだよ!さっきからおかしいぞ!」


持ち上げられた拍子に、ぼくの目からぽろりと涙がこぼれた。ぼくを見上げるきみの頬に、涙がぽたぽた落ちる。


ぼくはとっくの昔に見失ってしまっていたのだ。旧友達を大切に思う心も、きみを好きになった理由も、明日から目をそらさない強さも、全て。



かろうじて一つだけ残った言葉を、口にした。


「すきだよ、ルマ」

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