高慢あるいは徒花【ⅩⅩⅩⅤ】〜n回目の旅路Ⅵ〜
エアライ◯ーが楽しくて遅れた、ごめん
旅路の終末を話そうとしても、口は引き結ばれたかのように動かない。その不思議さに頭をかしげていると、この間ルマが言っていた言葉を思い出した。
この出会いはきっと神サマの贈り物、だと。
彼女はぼくたちとの出会いをそう例えていた。もしも本当に神様がいるのなら、ぼくたちとの出会いを最初からやり直させてくれたのかもしれない。ならば、今度こそ、今度こそ違う結末があるかもしれない。その思いを胸に込めて、ぼくたちは再び旅路へと向かった。
—しかし、結末が変わることはなかった。
空に浮かぶ星型の穴へと消えゆくノアとグランティアに、みんなで手を振り見送った。空は変わらず爽やかな青の色をして、風も変わらず心地良くて。彼女がここに滞在したことを示すのは、ノアが墜落時に削れた土の痕跡だった。
道中が以前より険しくなったとはいえ、どうしてぼくは同じ旅を2回も繰り返したのだろう。
明くる日
起き抜けにケーキ屋さんに足を運んだ。期間限定かつ個数限定販売の特大ショートケーキを買った。カロンとシルビアに出くわした。走って逃げた。追いかけられた。――船が、現れた。
「ねぇルマ、お願いがあるんだ」
「エ?どうしたの、パチーカ」
「ぼくが冒険の最中に、困ったとき…助けてほしいんだ」
何か違うことをしなくては。そう思ったぼくがどうにかして、なんとかひねり出した策だった。
「もっちろん、トモダチの頼みだもんね!ボクに任せてよ」
ルマは愛想良くよく笑う。しかし、物語を何回も繰り返しぼくの中でルマとの付き合いが長くなるにつれて、彼女が裏で隠している本心がうっすらわかるようになってきた。わざとらしい感謝の言葉。端々に散らばる不適切な言葉遣い。洗練された教科書どおりの完成品のような、機械的で淡々とした笑顔。やがて、ルマは無害で純朴な人柄を演じているだけだとぼくは勘づいた。よく見ればぼくみたいな能天気でも気付けるような綻びだらけの猫被りの仮面で、騙せた気になっている彼女が無性に愛らしく思えた。今は、曇らせたくないという思いがもう既に、ぼくの胸の中で強く渦巻いていた。
かつてのルマは、船内に引きこもりがちだった。だから今回は少しでも多く思い出を作ろう。そうすれば、彼女の手をとめる何かになるかもしれない。




