高慢あるいは徒花【ⅩⅩⅩⅣ】〜n回目の旅路Ⅴ〜
「…え…、え…!」
ま、まさか…、帰ってきたのか、!? あの子が!?けれど仮に戻ってきてたとしても、どのような経路で帰ってきたのか想像もつかない。だって彼女は—
そうこうしているうちに、船は轟音の悲痛な呼叫を立てて地面に突っ込んだ。あの時と同じように、まるで誘われるように扉が開いた。中に踏み入れれば、あの日と同じように彼女が——ルマが横たわっていた
「大丈夫!?」
シルビアが慌ててルマに駆け寄り、安否を確認するように肩を揺さぶった。
「不時着した衝撃で頭をぶつけたっぽい?」
「シルビア、頭を揺らさぬようにな。まずは呼吸を確認せねば…」
シルビアは元は優しくてしっかりしてるから、あんな事があったあとでもなんだかんだで心配しそう。クレイも……まぁそんな感じだろう。けれどいつの間にかそこにいたカロンまでもがなんも確執もないのは、流石に違和感を覚えた。深紅色の瞳には風のない湖の水面みたいに落ち着いていて、殺気も怒りも感じられない。あの中で一番ルマの凶行に一番憤っていたのにも関わらず。今の彼からは彼女への怒りは一向に感じられないのだ。
「うぅん…、ココは…アッ!?ノア!」
ルマが目を覚ました。あの日の全く変わらない同じ動作で、ノアのモニターを一心不乱で確認している。
「ウソ………、ゴメンネ、ノア…、ボクのせいで……」
モニターにはパーツが全部失われたことが表示され、ルマはガックリと項垂れ猫耳が下に垂れ下がる。恐る恐る肩を叩くと、びっくり仰天、といわんばかりに体が飛び上がらせた。
「キミは…誰?」
ぼくを見る月色の目は、見知らぬ物に向ける、それと全く同じ瞳だった。




