高慢あるいは徒花【ⅩⅩⅣ】〜お化け屋敷攻略〜
果てしなく続くはしごを登り切ると、たどり着いたのは屋上だった。屋上といってもそこは限りなく宇宙に近く、空に向かってめいいっぱい手を伸ばせば、宝石のように輝く星々を掴めてしまいそうなほど。
タイミングの良いことに、カロン、ガラン、アテナもぞろぞろと屋上に上がってきた。ルマは彼等の姿を確認した途端、またぶわあっと涙が溢れ出し、彼等に飛びついた。
「カロン〜、大王サマ〜、アテナクン〜!!ミンナごめんよぉ〜〜〜〜〜〜!!!」
「な、なんだどうした!!?」
「実はぼくからも謝りたいことがあるんだよね」
「どうしたんだよ二人揃って!まさか二人で洒落にならないレベルのイタズラ仕掛けたとかそういうんじゃないだろうな!!?」
「いや、そうじゃなくて…」
「「??」」
「カロンとこの冷蔵庫に入ってたアフォガード食べたのぼく」
「やはり貴様かあ゙あ゙あ゙あ゙あ゙ぁ゙!!!!」
「おやおや随分と騒がしいですねぇ〜」
間の延びた独特のイントネーションの、誰かの声が聞こえた。いや、‘誰かの声’にしては聞き覚えがありすぎる。ボクはこの感じを知ってる!ルマは半反射的に声が聞こえた方へ振り返った。星空以外は殺風景のだだっ広い屋外を見渡すと、丁度白いローブの人物がが佇んでいた。正絹の祭服、神官長の金帯!!
「ハァ、イィ、リィ、ンンンン!!!
でえぇ、かっッッ、ぱなあぁあァ!!!!」
「あ〜ら、相変わらず屋外でも良く響く声ですねぇ〜」
そこにいたのは、長いマゼンタピンクの髪に、薄い山吹色の角を覗かせた女性だった。白いローブに身を包み、口元は口布で、手は長い袖で隠れており、どこか不気味な印象を受ける。ルマと同じ琥珀色の瞳をしているが、ハイリンのほうが色が濃く、身長においても向こうのほうが断然上で大王と同じぐらいあった。
「あ、ハイリンー!!」
「よう、ハイリン久しぶりだな!」
パチーカ達はなんの警戒心も持たずにぽてぽてと彼女の元へ近づいていく。
「あらぁ〜、久しぶりですねぇ〜」
「ハイリンさん、ルマさんと仲悪いんですか?」
「まぁ〜、昔色々とありましてぇ〜」
「彼女とワタシは同じ魔術派でしてぇ〜、一族の間で少々〜」
こう見えて元魔術派のエリートであるハイリン。約束の地の名家・ハルダ家の御子であり、元々高貴な身である。その実力もかなりのもので、一級魔導士の資格の持ち主。かつては科学派に裏切られたことをきっかけに復讐に焦がれ、復讐を達成するための大いなる力を得ようと自らが崇める神を復活させるが、邪神が復活してすぐのところをパチーカ達に討たれたことがある。
「さぁて、茶番はそこまでですぅ」
彼女がいる場所には簡易的な祭壇が設けられ、その近くにはリルラに非常に似た人物が二人、祭壇の上に乗って座って。そこに、さっきまでいなかったはずのリルラが、嬉しそうに走っていった。
「みんな〜!!」
「「あ!おかえり〜」」
「どこいってたの?」
「ぼうけんしてた!」
「「いいな〜」」
「もうはぐれないでね」
「うん!」
同じ顔の人物が三人も集まられると、もう誰が誰だかよくわからなくなる。初めてリルラにあったとき、パチーカが名前を間違えていた理由がよくわかった。あの時は、パチーカだからそういうものなんだと思っていたが、確かにこれは違いがわからない。多少髪型や服の色が違うのだが、初見ではわかるわけもなく、本人達がきゃっきゃきゃっきゃはしゃぎまわっているうちにどれがリルラだか見失った。
…ん?よくよく見てみると、台座の上には見覚えのあるアイテムが置かれている。ノアのマストじゃないか!
「みなさんの旅のラスボスに、ワタシなどがしゃしゃり出るのも野蛮というものぉ…ならばふさわしい相手を用意してあげましょう!」
「「「ていうことで、今回の相手はわたしたちリルラ姉妹だ〜!!!」」」
「「ええーー!!?」」




