高慢あるいは徒花【ⅩⅣ】〜お化け屋敷攻略〜
「しっかし、このエリアはあついもんだなぁ〜。もう少し炎の量減らしてくれてもいいのによぉ」
第二階層に入って早々汗だくになって、うんざりしてきた大王は揺らぐ火柱を睨みつけた。早くも滝のように汗が流れ、向こうで陽炎が揺れるのが見える。けれど、それを超える特級暑がりがここにいた。
「…ヤダ、アツスギル゛…。ボクもう帰りたい…」
「ル、ルマさんが溶けてますー!?」
あまりの耐性のなさに皆から驚かれるルマ。しかし、ルマは元々暑いのが超絶苦手なわけじゃなかった。勿論、普段から冷房の効いたノアの部屋の中で過ごしているのもあるが、きっかけは長いこと火山区域のハルカドラボに滞在していたことだった。ハルカドラボの激しい暑さから逃れるため、冷却魔術に改良を重ね、快適な作業環境を手に入れた。しかし、暑いと感じるごとにすぐ冷却魔術に頼るようになり、結果 元々暑がりでインドア派だったのもあり、暑さへの耐性が極端に欠乏した体質になってしまった。世の中ラクをするとろくなことがないとは、まさにこのことである。
まぁそんなことはさておき、暑さに耐え忍びながらしばらく歩いていくと、部屋の中央に赤紫に燃え光る魔法陣が敷かれた部屋にたどり着いた。魔術師のルマが見るに、あの術式は…。
「あ、でん◯ろう先生のやつだ〜!」
「ハ?でんじ◯う先生のヤツ??って空気砲じゃん!?」
一瞬耳を疑ったが、リルラが目の色変えて突進してく先には、確かに空気砲があった。なんでこんなところに…?そして、リルラが空気砲を手に取ろうとした瞬間。
「リルラ!!アカンそれ ストップ!!」
ぴかーっ!
「わにゃー、魔法陣が光りましたよ!?」
「多分アレはオバケの召喚用魔法陣なんダヨ!!マダ撃退アイテムも見つけられてないのにマズイって!」
ルマの警告も虚しく、リルラは好奇心にかられ空気砲を手にしてしまった。ちなみにリルラの精神年齢は幼稚園~小学校低学年なので、仕方がないと言えば仕方がないのだが…。まぁリルラが手にしなかったにしろ、最終的に好奇心にかられてパチーカが取っただろうが。
「空気砲だー、うぇい〜!」
「こんなコトやってる場合カ!!」
しどろもどろにそこらじゅうを探したが、アイテムらしきものは一つも見つからなかった。そして時間切れか、魔法陣の光がより一段と眩しくなり、目が開けられなくなる。しばらくしてそれが収まったと思うと、紫色の炎の中に見覚えのあるシルエットが。ルマよりも一回り小さいほどの背丈に、2本の角…いや、あれは先が2つに分かれた二又の帽子?そして、どんな生き物にも似つかない不思議な羽。イヤこのシルエット見覚えがありすぎて怖いんダケド…。
その瞬間、ずばっと炎の中からシルエットの正体が現れ、ルマの心配は確信へと変わった。一同はその名前を同時に叫んだ。
「「「「「キランだーーーーー!!!!!」」」」」
「おっほっほっほっほー!これから楽しいお料理の始まりなのさー!!」




