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虚言の堕天使  作者: みさこんどりあ
虚言の堕天使 一部 虚言〜そして虚構
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高慢かあるいは徒花【Ⅷ】〜主人公敗北if〜

いつの間にか旅は終盤へと差し掛かっていた。それはノアのパーツを殆ど取り戻し、おそらくドリームランド最後になるであろう冒険への準備へ向けて着々と準備を進めていたカロンにとって寝耳に水な出来事であった。


「最後のパーツの在処がわからない?」


突如予想外な事実を告げるルマに向かって珍しく素っ頓狂気味な声をあげた。


「イヤわからないわけでもないんだけど…とにかくモニターを見てよぉ」


モニターにドリームランドの地図が表示される。赤い点がパーツの位置を表す印だ。なんだ、ちゃんとわかっているじゃないか。


いや、よくよく見てみると、少しずつ赤い点が移動している。そもそもの話、赤い‘点群’でないこと自体が異常だ。パーツが全て同じ場所にあるということになる。僅かだが、右上にあった点が徐々に左下に向かって、少しずつその位置を変換させていく。少しずつと言っても地図上なので、実際のところかなりのスピードで移動しているはずだ。勿論、パーツに足はついてない為自力で動くことはない。つまり、誰かがパーツを一箇所に集め運んでいる?


「何者かによってパーツが一箇所に集められ、何処かに向かって運ばれている?」

「マァ何にせよ、油断は禁物か。今回は少し急いだほうがよさそうダネ。今回で、最後のノアのパーツを探す旅だもんね。…もう最後カァ………」


もう少しでパーツが全て集まる。喜ばしいことのはずなのに、ルマは悲観的なため息をついた。


「今回の冒険が終わっても、また新たな冒険に出ればいい。其方は旅人なのだろう?ノアが直れば何処でも好きな場所に行けるではないか」


きっとこのメンバーで、一つの目的に向かって旅をする事はもう…。だってルマの野望は。


それでも、冒険の日は否応なしにやってくる。パーツが集まるたびに辛くなった。この友情ごっこは終わってしまうのだ。いつか来る別れの時は分かりきってたことで…



ゴロゴロゴロ……ピッカーン!!


「ギャ、雷が落ちてきたよ」


黒く灰色の雲に轟く雷鳴、来訪者を歓迎しているとは思い難い天気だ。バチバチと電流を帯びるくらいに帯電した雲に触れようなら、丸焦げになってしまいそうだ。


「そういえばシルビアとクレイが見当たらないね」

「それなら置き手紙置いてありましたよ。帰郷だって」

「帰郷…?あーそういうことね。ドロセラのとこ」

(ドロセラ…ってモウセンゴケの学名だよね何いってんノ??)

「というか今そんなこと気にしてる場合!?コレじゃノアから降りるのも危険ダヨォ。今日のトコは引き返そ…」


と、その時。ぎゅいいいんとノアが猛加速した。引き下がるほうじゃなくて前進するほうに。


「ウワァア゙アァ゙ア!?チョットチョットチョットどーなってるの!?なんで前に進むんだよ!?」


「なんでだろうノアが勝手に動いてる!」


ピカーン!!ピカーン!!ピカーン!!


雷が意図的に一連を狙ったように、次々と連なって落ちてくる。ノアはそれをジグザグと器用に避けながら、スピードを落とすどころか更に上げて、何処かを目指して前進していく。


やがて、その目的地らしきものが見えてきた。ここがすでに空に限りなく近い場所なのに、それをもっと超えるかのように、まだてっぺんが見えないくらいに天高く高く待ち伏せる大きな塔の影。その目指して突っ切っていった。

ノアは砦の入り口部から中に侵入し、そこで動きを止め停船した。


「なるほど、室内なら雷も避けられるということか。良い判断だ」


しかし、屋外なお一行の冒険は難ずる事がわかった。建物の中に光が取り込めるのは、特に激しい雷が落ちた時だけ。外のゴロゴロと五月蝿いのとは対照的な、物静かで不気味な薄暗い建物の中。


その時突如、暗い室内の中にどこからか何者かの声が聞こえてきた。


『それは昔のお話。とある宇宙の片隅の星で、信じていた仲間に裏切られた魔導士がいたそうだ』


「ヒエッ、なんか変なアナウンス聞こえてくるんだけど…」


一連は辺りを警戒し、身構えた。


『その魔導士は、かつて友であった者への復讐を志すようになった。来る日も来る日も、自らが崇める神に祈りを捧げたが、復讐は叶うことなく、年月だけが過ぎていった』


「誰が喋ってんだ!?隠れてないで出てこいよ!」


『その時耳にしたのが、天に届くほど高く高くそびえる塔の噂。そこで祈りを捧げれば、神にも届き、復讐のための絶対的な力が手を授けてくださるのではないか。魔導士はかすれた笑い声をあげ、塔へと登っていった』


「天にも届く塔…ということは、ここのことか」


『しかし、その魔導士が塔から戻ってくることはなかった。塔を登る途中で力尽きたか、はたまた天罰で塔の頂上で雷に打たれ死んだのか。しばらくしてその塔には、新たな噂がたった。あの塔には魔導士の霊が出る、と』


「ユ、ユーレイ!?…はにゃわにゃわ………」


『目撃されたのは魔導士の霊だけではない。亡き少女の姿をした神器の付喪神、異形の怪物、そして見た者の瓜二つの姿をした‘何か’。あの魔導士の怨念が、怪異的な何かを引き寄せているのだろうか。塔に臨む冒険者たちよ。気をつけろ。塔に巣食うこの世ならざる者たちが、汝らを亡き者にしようと待ち構えているだろう』


そのでナレーションは途切れた。そして、奥の方から何者かがこちらに近づいてくる気配があった。ま、まさか、魔導士のオバケ!?


「何者だ!こちらに危害を加えるつもりなら容赦しない!」


カロンが鞘に手を伸ばし、それでも相手は歩みを止めない。とうとう気配は間近まで迫ってきていた。


「はわ……にゃ…わにゃ………ワニャワニャワニャワニャワニャワニャワニャワニャワニャ(半角)」


目の前に来たところで何者かは歩みを止めた。そして次の瞬間、稲津により辺りが黄色に照らされ気配の正体が顕になる。同時に、その人物は大声で叫んだ。ルマ達も、あんぐり口を開けて大声で絶叫した。


「というわけで、ようこそ!ホーンテ◯ドタワーへ!」


「ギャーーーーーアアアアア!!!!」

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