高慢かあるいは徒花【Ⅵ】〜主人公敗北if〜
高慢あるいは徒花終わったらマホミル過去編高慢あるいは徒花終わったらマホミル過去編…って思いながら書きました(?)全然終わりそうにない…
ルマは咄嗟にイメージした新しい魔術を、ディメンションホールに重ねるように発動させた。上空に渦巻くような気流が生まれ、ありとあらゆるものを吹き飛ばす。否、一点に吸い込む豪風がノア周囲に吹き乱れた。
「ホールがキャリオンクローを吸い込んでますー!ってわにゃわにゃわにゃぼくも吸い込まれる〜!!」
「危ねぇ、ほら、しっかり捕まっとけ」
「わにゃぁ……助かりました大王さま…」
アテナはガランのナイスヘルプにより事なきを得た。キャリオンクローは掃除機に吸い込まれるゴミどものように、ディメンションホールへと吸い込まれていく。ハッ、ザマァミロ。
空に飛んでいたキャリオンクローはあらかた片付き、思いのほか必死にノアの外壁にへばりついてるヤツラも、パチーカ達の見事なプレイにより順調にその数を減らしてきている。後は、ボクの魔力が尽きるかどうかの問題だ。正直、さっきから体は悲鳴をあげっぱなし。かつてないほどの倦怠感が意識を奪おうと早々脳内に侵略してきてるが、ここまで来て、絶対に負けてたまるものか。体中の細胞の全てに至るまでもの生命エネルギーを魔力に変えてでも、この戦い、絶対に勝利してみせる…!
突如、足元から温かく優しい魔力がぶわっと込み上げてきて、ルマは少し楽になった。…コレナラ…!ルマは更にホールの魔法陣に魔力をつぎ込んでブラックホールを拡大。威力・吸引力をアップさせた。船体になんとかしがみついていたキャリオンクローが、その強大な吸引力に耐えきれず、みるみるうちにディメンションホールに吸い込まれていく。あと5匹、3匹、あと…1匹……そしてついに…
最後の一匹がすぽんと吸い込まれるとともに、ブラックホールの魔術が解け、あれほど激しかった風が嘘のようにピタリとやんだ。
「…ルマ!お前さんとんでもねぇ力持ってんじゃねぇか!スゲーなオイ!」
「最後の見せ場を取られてしまったな。だが、美しく素晴らしい戦いだったぞ」
「ア、ハハハ……やりきッタ、ヨォ」
ルマは全速力で疾走した後のような脱力感とともに、息も絶え絶えになって甲板に倒れ込んだ。
全身が汗だくで全ての感覚がぼんやりとしている。まるで体が自分の体じゃないみたい。もう本当にこれ以上動けない、もう何もする気にならない。気力が、本当に皆無だ。多分、今体重測ったら5キロぐらい減ってるんじゃないかな。でも、これで少しは強くなれたかなぁ。
「ハハ、随分お疲れのようだな。ノアん中でちょっと休m…」
突如ガランがルマを、否正確にはルマの向こう側を見てあんぐり口を開けてそのままフリーズした。とても嫌な予感かしてルマもなけなしの力を振り絞ってそちらに目を向ける。
「ケケッ!!」
今まで何処に隠れていたのやら、これまでのキャリオンクローよりも何まわりも大きい巨大な金色の個体がいて、自身とそれほど変わらない大きさの豪火球を吐き、もうすでにルマの前まで迫ってきていた。魔力切れの状態でそんなのを食らったらどうなるか。しかし突然避けられるはずもなく、ルマの視界は真っ赤に燃える赭色で埋め尽くされ、あまりの眩しさに目を閉じた。
「…………アレ…?」
目を開くと、真っ直ぐに自分めがけて飛んできたはずの火球が、あさっての方向に飛んで弾けて消えた。なんで?何があった?誰が…?
「……パチーカ…」
ルマを庇うようにして目の前に立ち金色のキャリオンクローに対峙するパチーカのその後ろ姿は、勇ましく頼もしくもあり、ルマの目に強く強く焼き付いた。
(…ソッカ、他の5人も凄いケド、ヤッパリ一番のヒーローはパチーカダナァ……)
本当に、妬ましいコトこの上ナイ
豪火球が防がれた事がわかるとキャリオンクローは次の攻撃の動作へと移ろうとしたその時、パチーカもまた飛んだ。そして苦ともせず剣を全力で振り下ろし、そのまま薙ぎ払った。
「ッ!?」
金色のキャリオンクローはディメンションホールへと吹っ飛ばされ、そのまま一直線。しかし、魔法陣への魔力供給がなくなり再びホールが縮小し始めていた事もあり、ヤツのデカい図体は、なんと、ホールを通り抜ける事なくすっぽりはまってしまった。
でもその心配も杞憂だった
「はあああああ!!」
パロディによって繰り出されるトドメの一撃。金色のキャリオンクローの悲鳴とともに、無理やり向こう側に押し込まれた。
直後、役目を終えたディメンションホールは潰れるようにして消えててゆき、最後に僅かな淡い青色の光へと生まれ変わり、周囲に散っていったのであった。




