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虚言の堕天使  作者: みさこんどりあ
虚言の堕天使
15/35

リンゴ酒と蛇の影

やっとルマちゃの過去編に入りました〜。全てはここから始まった!

マホミルがゆっくりと此方に歩み寄ってくる。まずい、このままじゃ本当に負けてしまう。必死に立ち上がろうとするが、躰が上手く動かない。







「うおぉおおお!!」


突如、何者かが叫び声を上げ何かを振り下ろす。そしてそのままマホミルの肩に直撃した。マホミルは突然の攻撃に驚き、魔力球は砕け散っだ。


(…()()場所増えちゃった。面倒くさい…)


「パチーカ!お前ちょっと見ねぇうちにだいぶやられちまったなあ!」



「ガラン…?」


パチーカを助けたのは今まで傲慢で我儘だったガランだった。カナエルのバクによって存在が歪み、性格が大幅に変わってしまってたが、以前(旧世界)の、元々の人格を既に取り戻していたのだった。


「うるさいよ…、きみだってこないだ操られてたくせに…」

「う、うるせぇ!それより、とっととアイツを止めるぞ!」


ガランはパチーカに手を差し伸べる。


「…ありがと、ガラン」


パチーカはガランの手を取り立ち上がる。剣を取り戦闘態勢に入る。


「へっ、何言ってんだ。それよりマホミル!お前の相手はこの俺だからな!」


マホミルは立ち上がると、二人を睨みつける。その鋭く冷淡な眼光は、見る者全てを恐怖に落とし入れる一族保有の琥珀色の眼差し。だかガランは一歩も引かない。パチーカもそんなガランを見て勇気が出るのを感じた。


「今更 雑魚二人合わさったところで……私に敵うワケないでしょ!!」


マホミルの背後に魔法陣が現れ、6つの剣が召喚される。それを前方に向かって飛ばす。それらは加速しながら空を切り裂き耳元を通り抜けた。マホミルの力は先程より強くなっている。


「これ、ツルギが使ってた技!」


「確かに私は剣術は使えなくいけど…」




「剣を使わないとは言ってないわ!」


真後ろから聞こえた声に戦慄し、大きく目を見開いて振り向くと、両手いっぱいに魔力球を溜めたマホミルの姿があった。


「!!マホミル」


「もう遅いわ!」


魔力が溜まった状態で右手を振り被り、パチーカに襲いかかる。

やられる!!

頭では分かっていても躰が動けなかった。



「ソードビーム!」


その時、敵意を含んだ光が風を切り裂く。目にも止まらぬ速さで空を切ったそれは、マホミルの頭の方に飛んでいった。直撃する寸前に半ば反射的に回避し冷めた表情でそちらを振り向いた。


「……な〜んだ、生きてたんだ」



「左様」


突如、どっと地面を叩いたような鈍い音と同時に目の前に一本の竜巻が現れ、轟々とうねりをあげる。強風に煽られ、マホミルは吹き飛ばされないように踏ん張る(と言っても昔転んでしまったトラウマの影響で普段から地面に足はついてないのだが)。その竜巻の中から3本の彫刻刀が空を切り、マホミルに飛びかかる。


「…小賢しい」


右手でマジックバリアを発動し、彫刻刀をなぎ払う。マホミルは眉間にシワを寄せた。


一気に風が四方に分散し、その中心からカロンとクレイが姿を現した。


「マホミル、もう一度考え直せ」



「そうよ!」


突如、シルビアの声が上空から聞こえた。その声に反射的に反応し空を見上げると、シルビアが絵筆を振り下ろしながら急降下してくる。


「カラフル・ハートフル!!」


手に魔力を集め、マジックバリアを出現させる。シルビアの絵筆とマホミルの手に発現したマジックバリアが激しくかち合った。結局、決着はつかず体制を直すため、両者後方へ下がる。



「ダークバウンドマインド」

「拡散・ダークレーザー!」


声がした方を振り向くと、そこにはツルギときなこの姿があった。上空から放たれたその攻撃は周囲を巻き込みながらバウンドし、追尾してくる。それと同時に、黒い稲妻が四方八方に飛び散り、闇が生じた所からは強烈な電撃が発生した。マホミルは後天性ながらのその機動力を生かし、一部マジックバリアを張りながら僅かな攻撃の隙を掻い潜るようにして避ける。


「パチーカ、今だ!!」


半ば反射的に空を見上げると、先程まで姿が見えなかったパチーカが遥か上空から剣を振り下ろし、急降下してくる。


(クッソ…!)


分かっていても身体が動かなかった。


振りかざされた一筋の剣は、加速しながら剣が唸り牙を剥ぐ。剣が空を切る音が耳につく。次にあるであろう衝撃に、ゆっくりと瞳を閉じた。


「…っ……!!」



次に聞こえたのは左耳元、どっと壁を叩いた様な鈍い音だった。顔に微やかな風が吹き、次いで荒い呼吸音が聞こえた。痛覚を切っている為痛みはないが、恐らく損傷はない。恐る恐る瞳を開ける。


「…何してんのよ」





其処にはやるせない色を浮かべるパチーカがいた。振り下ろされた剣はマホミルの顔の前の左側の地面に突き刺さっていた。明確な意思を持って避けられたのが伺える。先程とは違う、ネイビーブルーの瞳に私を映したソイツは、くしゃりと顔を歪ませた。両手に握りこぶしを作り、体を震わせパチーカは涙を浮かべていた。それは明らかな戦闘放棄だった。


「ぼくには君を…倒せない」





……バカだ


知ってる

アンタが私を倒せない事ぐらい





(…けどもし……あの時、止めていなかったら…?)


叶いもしない‘もしも’を考えた。そんな所で何も変わらないのに。けど、私はバカだ。ありもしない‘もしも’を何回も考え、それをずっと望んでいる。そうしなかったアイツを逆恨みする。


要するに、これはただの八つ当たりだ


あの子をあんな目に合わせたアイツが憎い。あの時助けられなかった私が憎い。無慈悲な運命が憎い。私から全てを奪った世界が憎い。



見開いた薄黄色の瞳が怒りの赤に変わり、頬にツーっと静かに涙が伝った。



「…アンタがあの時止めなければ…アンタがもっと強かったら、あの子は…あんな思いしなくて済んだのに!!」



「魔力球!!」




怒りにまかせ魔力球を放とうとしたその時、間髪入れずにカロンがマホミルのみぞに力いっぱい平手した。全てがスローモーションの中、マホミルは吐血しバタンっと倒れ込みその場で失神した。長い沈黙が続く。


「? くふっ……」



「……カロン…?」


「何やってんだ。早く手当てするぞ」


「…え……なんで……」


パチーカは咄嗟に口を開く。手当てする事になんでと聞きたかった訳じゃない。いつも合理的なカロンが、わざわざ裏切った者の手当てをする意図が分からなかった。


「何故って…敵の情報を吐かせる為だ」


その発言以前に、一同は突然の事にポカーンと固まっていた。


「ほら早く」


「お、おう」


取り敢えず別の場所に運ぼうとシルビアがマホミルの肩を支え、持ち上げようとすると、さっきの戦いで肩の部分のケープコートが切れたことで、不意にその下が顕になった。


「ん?これは…」


そこには痛々しい傷の数々、刻み込まれた複雑な術式が幾つかと、首筋には番号があった。






目の前が段々明るくなり、最初はぼやけていた視界が徐々に鮮明になっていった。無機質の柱の冷たさと縛り付けられた縄のきつい感覚に完全に目を覚ました。






そうだ…


負けたのか、私は







「親玉の目的を言え」


「……」



「カロン、何してるの!?」


「見ての通り敵側の情報を吐かせようとしている。それだけのことだ」


手が縛られている為魔術が使えない。まぁ、使えてたとしても使わないし、勝つつもりなんて最初(ハナ)からなかったけれど。それにしても、気絶と言えど寝たのは何年ぶりだろう。カロンは私の首元の真隣に剣を突き刺した。…脅しか。シルビアが一瞬反論に入っていた。いつもよりずっと声は低く、普段の様子からは全く想像つかないような力強い殺気に満ち満ちている。そのまま剣を横に振れば、私の首などいとも簡単に切れてまうだろう。私はその割には冷淡で無表情な顔をしていたと思う。そんなの想定範囲内だし、その程度で私は死なない…いや、この肉体が使い物にならなくなる事なんてないけれど。



「…覇王様はこの星を…いや、()()全宇宙を支配しようとしているのよ。そして私は偵察としてこの国に送り込まれたってわけ。…覇王様は今回、とても慎重に動いている。魔物は、実力を測って、それに応じた計画を練るために送り込まれたものよ」


「…随分すんなり話すんだな」


「まあ、最初から忠誠なんてあってなかったようなものよ。惜しむ理由もないわ。…それに、遅かれ早かれいずれこうするつもりだったし…」 


「それはどういうことだ?」


「そのままの意味よ。あなた達を裏切り、敗れ、捕まり、そして、こうして全てを話すことは…全部、最初から決まきっていたこと。ただそれだけことよ。こんなに早くなるのは想定外だったけれど…」



「何故だ?貴様が負けて敵側の情報を話したって、なんのメリットもないじゃないか」

















「…私は覇王様の…マジルテの実の姉なのよ」
















確かまだマジルテが7歳で、私は10歳のときだったかしら。


「コラッ!マジルテ!またお父様の書斎に勝手に入ったでしょ!!」


姉らしき人物が、もう一人の子供にガミガミ怒っている。その姿はとても典型的な姉とも言える。水色の髪に、空色の服。背はマホミルと同じくらいだろうか。けれど背中にはピンク色の翼が生えていて、目は前髪に隠れておらず、薄黄色の瞳を覗かせていた。一方妹らしき人物は肩につくかつかないかの茶色い髪に、琥珀色の瞳。白いフードを着ていた。


「ボク、ソンナコトしてないヨ!」

「防犯カメラと監視魔術、両方に引っかかってますけど?」

「…ウワッ……プライバシーの欠片もないのかヨォ(小声)」

「なんか言った?」

「イヤ、ナンデモナイヨ(汗)」

「だったら、ほら!ちゃんとあやまりなさい!」

「ハイハーイ。ゴメンナサーイ」

「ハイは1回!」

「ハーイ」

「コラッ、伸ばさないの!」

「…メンドクサイナー…」

「マジルテ!ちゃんと反省しないとお父様に言いつけますからね!」

「ゴメンッ、ゴメンッってば!お姉サマ!お父サマに言うのはヤメテヨォ!」


ウィーンとトビラが開く音がした。


「二人ともどうしたのですか」


白い髪と白い瞳、シャツを着た女性が入って来た。


「あっ、お母様!マジルテったらね、また勝手にお父様の部屋に入ってたの!」

「…それはいけませんね、マジルテ」

「ゴメンナサイ、お母サマ。チャント反省していマス」

「まぁーた嘘ついた!マジルテ、さっきから全然反省していないじゃない!」


「お母様もなんか言ってよ!」


「…そうね、お父様の部屋の中には危険な物も沢山あるのですよ。お母様は、あなたが触って怪我をしたり、呪われたりしないか心配なんです。…解ってくれますか?」

「…ウン」

「ねぇマジルテ、危険なことしないって約束できる?」

「…ウン」

「もーお母様ったらマジルテに甘いんだから!いつもこうやって約束破ってるのよ!なのになんで…「私、そろそろ行きますね」


ウィーン


優しそうな女性は部屋から出ていってしまった。



「…ちゃんと反省してるの?」

「一難去ってマタ一難♪」


「全然反省してないじゃない!そんな嘘ツキは‘マフォ’っていうのよ!」


「…ウソツキに‘嘘’って、そのまんまダネ」

「もういいわ!お父様に言いつけてやる!」

「ゴメンッテバ、お姉サマ。今度から気をつけるカラ…」

「知らない!」


そうやって何気ない日常が過ぎていった。











ビービー


サイレンが五月蝿く鳴って、今までにないくらいのアツサでボクは飛び起きた。

窓の外を見渡すと、辺り一面真っ赤な炎の海になっていた。


「マジルテ!大丈夫ですか!?」



お母サマがボクの部屋に慌てて入って来た。ボクは衝撃のあまり、回らなくなった舌で言った。


「お母サマ…?コレは…火事なの…?お父サマが魔術式の開発に失敗して…」

「喋らないで!…マジルテ、お母様が話すことをよく聞いてくださいね。科学派の残党の攻撃です。お父様とお母様で科学派の人を止めます。なのでマジルテ達は早く逃げて。この炎は魔力を燃やします。だからむやみに近づきすぎず、あまり長居しないように。…解りましたか?」

「…お父サマとお母サマは…?一緒に逃げないノ?…ボクも一緒にいるヨォ!」


「…いいですか?マジルテ、科学派の人達の狙いは、色々なデータと、あなた達です!」


「…ナンデボクなんかが…?」


「私達は普通に接してきましたが、あなたは‘約束の地の血を強く引く魔術派と、ヒューマノイドのハーフ’です!科学者にとって、これほどにもあなた達(質のよいデータ)は喉から手が出るほど欲しい物なの…!」


「…」


「だから早くお姉さんと一緒に逃げなさい!私達もすぐ追いつくから」


「…ワカッタヨ。必ずまた会おうネ…」

「…えぇ、必ず…早く裏口から逃げなさい…!」


ボクはお姉サマの部屋に走った。


「お姉サマー!!大丈夫!?」

「マジルテ…!よかった無事で…。お母様から話は聞いてるわ。早く逃げましょう!」


ボク達は必死に逃げた。


裏口から外に出て、森に抜けた。

闇夜の中、手を繋いで走ってゆく。

月明かりさえもない夜の森をただひたすら走った。



少し遠くから足音が聞こえる。ここで捕まれば、二度と太陽の光の元に出ることは出来ないだろう。






「キャッ…!」


手を強く引かれる感覚がした。

よからぬ予感がして、即座に後ろに振り返る。

暗闇で足元が見えず、お姉サマが木の根っこに躓いて転んでしまっていたのだ。


アイツラの人型アンドロイドがお姉サマを網で捕えた。


「お姉サマ…!!?」


『二体ノウチ一体ノ魔法生命体ヲ確保。一体の魔法生命体カラ強イ魔力ヲ検知。ハルカドラボノ魔力波長と一部一致。ターゲットノ可能性小。捕獲二失敗シタ魔法生命体カラ弱イ魔力ヲ検知。ハルカドラボノ魔力波長とホボ一致。ターゲットノ可能性大。』


[『よし連れて帰れ』]


「私はいいから…!マジルテは早く逃げて!!」

「デ…デモ…」

「いいから早く!!!」


「ッ…!…ウン!」


ボクは一瞬戸惑ったが走り続けた。


『ターゲットの魔法生命体ガ逃亡。追跡モードに入リマス。』


[『絶対に捕らえろ』]


ボクはとにかく真っ直ぐ走った。

後ろを振り返らずにひたすら走った。




しばらく走っていたら、親戚のオバサンの家に着いた。その頃には、足音が聞こえないくらいには、襲撃者からもかなり巻けてきていた。


「オバサン!!」


「誰がおばさんだ。マジルテ」


「お姉さんだ」オバサンはそう言い直した。ちなみに、オバサンと呼んでいるが本当は叔母ではなく、正確には祖父の姉である。丁度オバサンは外で宇宙船の点検をしていた。本当に‘オバサン’とは思えないような顔立ちに、赤毛の真っ直ぐな髪と黒い瞳。鈍い深緑のズボンと、白いシャツを腕まくりをし、右手には器具を持っていた。


「チョットこの船借りるネ!」


ボクはオバサンを完全に無視して、オバサンの隣にあった宇宙船に乗り込み、そのまま出航した。


「おい!ちょっと待て!…おい!?

……あちゃー、これは返してもらえそうにないな…」


オバサンは頭を掻きながら、少し困った顔で苦笑した。



「…まあ、こっちはこっちで片付けないとなぁ」


そう言って追手の方を向き、冷たい目で睨めつけた。



お母サマがつけた宇宙空間ワープ機能を起動させた。沢山の追手が宇宙空間から放たれていたが、ボクの船に追いつくことはなかった。










何かが切れる音がした








朱を纏いサファイアの瞳を持った小さな竜人が4人、紅く狂った空をヒラヒラと飛んでいた。怒り狂った船から逃げ回っていたのだ。優しい空色をした船は、空を優雅に飛び回る。その神秘的な美しさとは裏腹に、4人のドラゴン…特に金色の腕輪をした一人をしつこく追い回して。




「ソンナに逃げたって無駄ダヨ。ボクはドコまでもキミを追い続けるカラ。…サァ、腕輪をコッチに渡してもらおうカ」


船から船首らしき者の、深く沈みきった威圧的な声が、赤い空に不気味に響いた。


有無を言わせない口調。

力でねじ伏せようとする荒々しい攻撃。


それは彼女が一族の血筋を引くからなのだろうか。

あまりのオーラに皆平伏してしまいそうだ。


それでもドラゴンは、その美しいガラス細工の様な瞳が、サファイアからルビーに変わってしまうのではないかというほど、その船を睨みつけた。


『お前なぞに渡してたまるものか』


そんな、反抗の意をありありと浮かべて。


「…キミまでボクに反抗するノカ…。ガッカリダヨ…」


手元のパネルを素早く操作しながら、無意識的に目を細める。全く、あのドラゴンは何故ボクの邪魔をするのだろう。コイツはボクの計画を妨げる反逆者。



全くもって

―目障りダ



「悪いケド消えてもらうヨ」


目にも止まらぬ速さでタイピングし、最後に荒々しくパネルを叩くと、船から星型弾が放たれ、腕輪をしたドラゴンを襲った。


「バイバイ、グランティア」


チェックメイト、とばかり言い放った。



その時




ドゴォォオオォン



「!?」


耳まで破損してしまいそうな爆音。ゆらゆらと大きく揺れる船内。マストから発射される星型弾から目標が外れ、ドラゴンもそれを見逃す訳もなくひゅるりと射程内から逃れる。


一体何が起こったのだ 


モニターに目を向けると、朱色の塊が画面に映り込んでいた。


「チッ…子賢いドラゴンめ……」


他の…腕輪を着けていないドラゴンが船に体当たりしてきたのである。


ドゴォオオ


船内にけたたましいサイレンが響く。

2人目のドラゴンが息次ぐ隙もなく、身体を回転させながら鋭い角を剥き出しにして、船に体当たりを食らわす。捨て身の大技。相手も本気、ということか。

頭上で赤いランプがチカチカと鳴り出し、画面に真っ赤な文字が沢山映し出される。意識して頭を働かせる。焦りは禁物。ここで無理して戦っても損害が増えるだけだ。ここは一旦引くのが最適。勝機がない今一度撤退してまた出直すのが適策だろう。


しかし、悲しいながらに指一本動かない。頭ではそう分かっていても身体は石のように固まって、ボクのいうことを聞こうだにしなかった。

背中に生ぬるい嫌な汗が伝い、落ちていく。

視覚だけはしっかりと機能し、ただ赤いモニターを見つめてるんだから皮肉なものだ。


突進してくるドラゴンが映し出される。



ふと、脳裏を巡った


『呆れるほど平和な国、そこに住むヒお人好しなヒーロー』

『デ?その国とヒーローの名前ハ?』

『ドリームランド、パチーカ』

『ソレで?どんな顔?特徴ハ?』



『すぐ分かる。呆れるほど平和(マヌケ)なヤツさ』




「ノア!!ドリームランドに行かせテ!ボクをパチーカに会わセテ!!」


そしてそのまま、ゴッという鈍い音と共に、目の前が真っ白になり、ボクは意識を手放した。



船は空間に穴を開き、そこに突っ込んでいった。







昔星々に願ったその願い

誰も叶えてくれなかった願い

どれだけ願った?

どれだけ祈った?

何度、『もしも』を考えた?

夜空の星々に願おうが、儚く消えていく流れ星に願おうが、神に願おうが、それは叶うことはなかった

ミンナ結局ボクの事なんてどうでもいいのか?

ボクがどれだけ泣こうが、喚こうが結局の所見て見ぬ振りをするのか?

ミンナ本当は弱くて恐怖で怯えている癖に、それを隠そうと他人を傷つける。この連鎖は終わらない

この世界は綺麗事(本心)だけじゃ生きていけない


ボクが裏切られない世界が欲しかった

ボクは、ボクが絶対に裏切られない世界を作りたかった

本当にそれだけなんだ

バカ正直に人の事を信じれば、騙される、利用される

信じたら裏切られる

そんなのもうイヤだった。独りぼっちはイヤだったんだ


アイツラはいつも四人組で愛想良く微笑っていた。ボクは昔の友達の事を思い出す。


『ねぇ、お願いがあるんだ〜。僕らチョー忙しいんだよね。この調べ物代わりに頼めない?え?いいの?わーありがとう。じゃあ明日までに全部お願いね〜』


『ちょっと探してきてほしい物があるんだ。これなんだけど…。え?一人じゃ危ない?あっそう、いいから行ってきてねー。君にはほんと感謝してるよ〜』


『え?僕達と遊びたい?ごめんね~、予定が合わないや〜。また今度ね〜。それよりやってほしいことが…』


『ねぇねぇちょっとお願いがー…え?体調が悪いから無理?君の体調とか知らないよ。友達のお願いが聞けないっていうの?』


今思えば全然友達じゃない。明様に、ただいいように使われてただけ。相手の気持ちなんてこれっぽっちも考えてはしない。けど当時のボクは気付けなかった。

「嘘ツキ」になる前のボクは純粋に嘘や悪意に鈍感だった


友達ができたと思って、嬉しくてお願いを聞いても段々お願いが増えていってボクだけじゃ無理だってなった途端、友達はミンナ敵になった。ミンナイジメられたくないから、 ボクをイジメるヤツラに同調して、ボクをイジメ出す。文字通り袋叩きだ。ちょっと前まで友達だと思ってた相手に酷い事されるのは本当に辛かった。「ヤメテ」と言っても誰もやめてくれなかった。誰も助けてくれなかった。すごく悲しかった。すごく寂しかった。


その後も、裏切られ、また別のを信じてみようとしても、また結局は裏切られて、結局それの繰り返しで…

…バッカミタイ

それ以来ボクは自分の本当の気持ちを話すことが…怖くて出来なくなっていた。本心を愛想笑いで隠して、本心が話せないから自然と嘘を吐き、嘘で身を守るようになった。嘘を吐くたびに自分の中の何かが溢れて失われていく気がしたが、それでも嘘を吐き続けた。嘘が止められなくなっていた。

そして気付いた頃には、嘘を混ぜなければ人と話せなくなっていた。もう友達が欲しいなんて思わなくなっていた。






そういえばこの頃だったか?胸に妙な苦しさを感じるようになったのは。いや、正確には前から感じていたが、この時から凄く強く感じるようになった気がする。今も感じているこの苦しさはなんだろう。よく分からないけどずっと苦しい。結局、その苦しさの正体が分かる事はなかった。





蛇に騙され禁断の果実を口にした二人は、楽園から追放されたらしい





・5話の‘この世界は創られた世界なんだ’と言っていたのはガラン。

・1話でお姉サマと呼ばれている人物、5話のロリっ子の第二補佐官、11話で話されていた未だに魂が未回収の没案、12話の目線となる人物、そしてマナとマホミルは全て同一人物である。

・2話ではなく3話でプロフィールを出したのは、役者が揃いきっていなかったから。この異変の正式な主人公はマホミルである。また、‘この設定集はあくまで今現在の物語で分かっているやつです。物語が進むにつれて『?』のところがわかったり、あとから変化したりします!’というのもこの為。


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