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変わらぬ運命なら操ればいい?
「やはり一つ足りぬ」
気を抜けば飲まれてしまいそうな闇の中、朱を強調している黒い着物と鎧を着た人影が一つ。真剣な表情で、何か考え事をしていた。
「フレイア、どうしたの?」
その人物は声がした方に目線を向けると、その声の主は此処に歩み寄り闇の中から姿を現す。
「久しぶりだな■■■。魂が一つ足たんくてのぉ、困っていたんじゃ」
「?別に一つぐらい足りなくてもよくない?そもそも、数が足りてるとか足りてないとか分かるの?」
「貴様、事の重大さが分からんのか!?…アヤツは没案なんじゃ。二十年前の12月5日に死亡予定のはずが、未だ回収出来ておらぬ」
「…へー。没案ねぇ…」
―没案。生まれながらにして、表舞台に立つことなく死の運命を背寄った者の総称。この没案だけは、どの世界でも必ず死んでいる。
「面白い事になりそうだね…」
「それもそうだな…」
無愛想な笑みを浮かべた。