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血まみれメイド喫茶

作者: 神崎玄

大阪・日本橋のメイド喫茶の話です。

 大阪・日本橋には、いろいろなコンセブト・カフェがある。

 今では正統派のメイド喫茶は少なくなったが、昔はガールズバー的なノリの店はなく、コンセブトを持ったカフェとしてはどこもメイド喫茶、変わり種としては宇宙人喫茶があったくらいだ。どの店も、コンセプトに沿ったメニューや内装、制服を工夫し、コンセプトを極めることで勝負していた。

 そして、コンセブト・カフェ風のガールズバーが広まり始めたころ、あだ花のように咲いたのがメンヘラ・メイド喫茶だった。

 そこでは、腕にカミソリの傷を何本もつけた本物のメンヘラちゃんが採用され、コンセプトに沿った制服で接客していた。

 しかし、そこはメンヘラちゃんの集まり、遅刻や無断欠勤はあたりまえ。自傷行為をする女の子が好き、あるいは理解がある、という客も少なく、経営者は大変だったと思う。

 その一軒に、「メンヘラ学園」という店があった。

 他の店に比べて値段が安かったこと、昼間からあいていることもあり、私は普通の喫茶店としてちょくちょく利用していた。

 

 ある日、メンヘラ学園に「登校」すると、なじみのメイドさんが不穏なことを言い出した。

「今日はトイレは使えません」

「え? 故障したの?」

「いえ。昨日のシフトの子が、やっちゃったんです」

 手首を切るゼスチャーをして見せる。

「トイレの中が血まみれなんです。けっこうグロいので、見ない方がいいと思います」

 嘘や冗談ではなさそうだ。

 奥では別のメンヘラちゃんが電話をかけていた。

「私達はそんなことのために雇われたんじゃありません。血なんですよ。もし、危険な病気に感染でもしたらどうしてくれるんですか。オーナーの方で何とかしてください」

 どうやら、オーナーから「お前らで掃除しておけ」と言われたらしい。断固拒否の構えである。

「今日は帰った方がよさそうだね」

「そうしていただけると助かります」

 メンヘラちゃんはすまなさそうにお辞儀をして送り出してくれた。


 そのあとしばらくして「メンヘラ学園」はつぶれた。




店名、登場人物は全て架空の物です。


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