9話 コロンブス撃退 改
ハイペリアン乗組員
坂本リョウマ 日系アジア人 28歳 男性 中佐 戦略参謀 陸海の軍事作戦担当 副司令
西郷たかお 日系アジア人 28歳 男性 中佐 内政参謀 内政全般担当
大久保トシオ 日系アジア人 28歳 男性 中佐 外務参謀 外交担当
勝りん太郎 日系アジア人 25歳 男性 少佐 海軍参謀
乾タイスケ 日系アジア人 25歳 男性 少佐 陸軍参謀
福沢ゆー吉 日系アジア人 25歳 男性 少佐 財務参謀 財政全般
ヘレン ダルク フランス人 25歳 女性 少佐 医療参謀 医療技術向上、
服部ハンゾウ 日系アジア人 25歳 男性 少佐 警察参謀 公安、情報捜査、隠密捜査
杉原 ねね 日系アジア人 20歳 女性 大尉 医療副参謀 教育全般
1492年 10月
北アメリカ西海岸沖に展開する潜水艦より、コロンブスが
バハマ諸島のサンサルバドル島付近まで接近の報告を受けた、
総司令の橘幸太郎は、ハイペリオン号をサンサルバドル島上空に移動させた。
すると
コロンブスが乗るサンタ・マリア号の船団が見えてきた。
船団の模様
旗艦 サンタ・マリア号
スペイン製のキャラック船と呼ばれる型の帆船、全長23.5m、全幅7.29m。
2番艦 ニーニャ号 3番艦 ピンタ号
スペイン製の3本のマストを持つ小型の帆船 縦帆を有するキャラベル船
総乗組員数は約90人
「発射――っ!」
無音の深海から、二筋の流線が放たれる。
すでに待機していた潜水艦から放たれた無弾頭魚雷が、
海中を滑るように進む。
標的は――
コロンブスの旗艦「サンタ・マリア号」、
そして補助艦「ニーニャ号」!
ズドォォォンッ!!
船底に衝撃が走り、瞬時に裂ける。
木造船には到底耐えきれない破壊力だった。
両艦ともに――轟沈。
海に投げ出されたコロンブス一行は、かろうじて残った
「ピンタ号」**へと逃げ込み、全速で退却していった。
蝦夷国の潜水艦について
たいげい型潜水艦 名称は、はくげい
海上自衛隊で2022年竣工した潜水艦で、ハイペリオンの武器工場で
建造したコピー品である
主要装備
非大気依存推進(AIP)潜水艦
内燃機関(ディーゼル機関)の作動に必要な大気中の酸素を取り込むために
浮上もしくはシュノーケル航走をせずに潜水艦
を潜航させることを可能にする技術。
主機
ディーゼル機関×2基
推進器スクリュープロペラ×1軸
出力6,000馬力 速力約20ノット
兵装
魚雷発射管
18式 魚雷
対艦ミサイル
潜水艦の配備は、
シベリアから日本海沿岸 1,2号
アメリカ沿岸に 3号から10号
ハワイ沿岸に、11号12号
琉球から台湾 13,14号
オーストラリア大陸周辺 15,16,17、18号
フィリピン海峡、からインド方面 19,20号の順である。
コロンブスの艦隊を退けた数時間後。
ハイペリアン司令室では、巨大モニターに広がる
カリブ海の映像を見ながら、幸太郎が口を開いた。
「よし……これで、ヨーロッパ諸国が“アメリカ大陸”を
発見するのは、しばらく先になりそうだな」
彼は背もたれに寄りかかり、ホッと息をつく。
「……でも、油断はできない。史実ではコロンブス、
もう一回来るからな」
そして、モニター横のホログラムに映るクララに指示を出す。
「念のため、アメリカ沿岸の偵察は続行だ。潜水艦の配備、頼むよ」
クララの声はいつも通り、冷静かつ的確だった。
「了解。アメリカ大陸沿岸に1000キロごと、
計8隻の潜水艦を配置します」
11月 ハイペリアン会議室
ドアが開き、資料を抱えた福沢ユー吉少佐(財務参謀)が入室してくる。
「では、蝦夷国の財政について報告いたします」
ホログラフに次々とグラフと表が表示される。
「現在、ハイペリオン製の絹織物、昆布、干物、塩、
パイナップル、サトウキビなどを敦賀経由で畿内の
諸大名へ販売し、好調な利益を上げております。
さらに、琉球を経由して西欧および明国との交易も拡大中。
こちらでは絹、塩、刀剣、鉄鉱石が人気商品です」
「ただ……」
福沢が表情を引き締める。
「ハイペリオン船内の生産設備だけでは、もう限界です。
現状、収入源の9割以上がこの内部生産に依存しており、
早急に小樽、そしてハワイへの生産分業体制の構築が必要です」
幸太郎はうなずきながら、短く応じる。
「……了解だ。すぐに手を打とう」
次に、椅子から立ち上がったのは、
白衣姿の杉原ねね大尉(医療副参謀・教育担当)だった。
「では、ハワイの進捗をご報告いたします」
「占領当初、文盲率は100%でした。
しかし現在は10%台まで低下しています。
とくに学校の設立が大きな成果を上げました。
もっとも、高齢者層は通学を拒んでおり、
ここは自由参加としています。
ゆえに残りの10%は高齢層です」
「農業は、パイナップルの増産に成功し、
すでに琉球経由で清国や西欧への輸出が始まっています」
「漁業については、小樽から配備したガレオン船による
操縦指導および延縄漁の技術提供により、マグロやカツオの
漁獲量が急増中。現在、シーチキンの缶詰工場と
鰹節の加工工場を建設中で、年内稼働予定です」
報告を聞き終えた幸太郎は、ほくそ笑んだ。
「……つまり、新鮮なマグロの刺身と鰹のタタキが
食べられるってことだな?」
ねね大尉もにっこり。
「はい、そう仰ると思って……会議後に舟盛りをご用意しております」
「おおおおっ!」
会議室内は、まるで宴の始まりのような笑い声で包まれた。
ねね大尉は、最後にもうひとつ報告を加えた。
「小樽港についてですが――徳島衆の船大工たちのおかげで、
ガレオン船の建造が本格的に可能になってきました」
「すでに木造船の建造技術は習得段階に入り、
来年には鋼鉄船の建造ラインにも進める見込みです」
その言葉に、幸太郎は大きくうなずいた。
「……これで、海軍力と交易力の両輪が整うな」
「現在、ガレオン船は月一隻のペースで建造しておりますが――」
杉原ねね大尉が資料をモニターに投影しながら続けた。
「来年には月二隻の建造体制が整います。
また、蒸気機関の開発もほぼ完了しておりますが……
大量生産の段階になると、職人の手が全く足りません。
つきましては、本州からの人材調達を具申いたします」
幸太郎は深く頷いた。
「なるほど……了解したよ。服部中佐、早速、職人たちの募集を頼むね」
「承知いたしました!」
服部中佐はすでに予定していたかのように、
背筋をピンと伸ばして答えた。
「まずは、和泉堺の包丁鍛冶、播磨三木の大工道具鍛冶、
越後三条と越前武生の鎌鍛冶、そして近江甲賀や
土佐山田の木挽鋸の鍛冶職人たちに密偵を派遣し、動向を探らせます」
「さすが、抜かりないね」
幸太郎は満足そうに笑うと、パンと手を打った。
「よし!本日の会議はここまで!舟盛りの時間だ!!」
――その一言で、会議室の空気は一気に和やかになった。
数日後、小樽港にて
服部中佐の迅速な手配により、各地の鍛冶町から
職人たちが家族と共に続々と移住してきた。
その数、実に六百名以上。地方からの大量移民に
港は一時騒然となるが、すでに準備万端の蝦夷国は落ち着いて対応した。
彼らに与えられた報酬は、現地相場の十倍の給金。
さらに、住居の無償提供、家族全員の身分保障、
子どもには自由な学問の機会。
もちろん、教育費はすべて無料である。
彼ら職人は、小樽港に設けられた蒸気機関製造工場へと配属された。
工場では、極秘保持のため、製造工程を部品ごとに分割し、
それぞれの職人に担当を分けていた。
こうすることで、誰も全貌を知らない。
だが、彼らの手で作られた部品は、札幌城の城内にある
中央組立工場へと運ばれ――
そこにて、ガレオン船用蒸気機関、機関車用機関、
小型多用途エンジンが次々に完成していった。
ただし、すべての工程に必要な熟練職人を育てるには、
まだまだ時間がかかる。
蝦夷国内で育成された専門学校卒の
人材だけではまったく足りなかった。
12月
「……やっぱり、人手が足りないな」
会議室で報告を受けた幸太郎は、静かに言った。
「勝少佐、君はガレオン船が寄港する各港で、
人材募集を頼む」
「服部中佐は、畿内周辺に散らばる戦争孤児たちを探し、
保護して蝦夷へ連れてきてくれ」
「はっ!」
両名はすぐに行動を開始した。
その年の末、日本全土は、応仁の乱の余波で荒れ果てていた。
村が焼かれ、城が落ち、民は行き場を失っていた――
蝦夷国が手を差し伸べた結果、
集まった孤児の数は三千人を超え、加えて、
五百人の未亡人たちも保護対象となった。
新天地・小樽の暮らし
小樽に到着した彼らは、すぐに医療検査と登録手続きを
受けたのち、それぞれの新たな暮らしを始めた。
孤児たちは孤児院へと入居し、
朝は学校で読み書きや基礎教育を学び、
午後は農場での労働体験を行った。
未亡人たちは母子寮に収容され、子どもたちと同じように
午前中は学校で勉強し、午後は農作業などに従事した。
それは単なる保護ではない。自立と未来をつかむ学び舎だった。
史実との誤差は、空想小説なので、お許し下さい。




