第37話 九州戦国時代 大友氏
登場人物
大友家第19代当主、大友親治
年齢は三十代半ば。
堂々たる体躯と鋭い眼差し、そして政略における冷徹さと、
民心を読む柔軟さを兼ね備えた、九州随一の名将と目される存在である。
筆頭家老・吉弘 氏直
宿老の臼杵 長景
重臣戸次 親家
宗像大宮司:宗像氏貞
1496年4月
九州列島――風雲急を告げる
かつての大内氏の拠点・太宰府は今、
濃い黒煙の下にあった。
博多攻略戦での大内水軍壊滅の報を受けて
間髪を入れず動いたのが、
豊後・大友家第19代当主、
大友親治であった。
彼は新政府や蝦夷国の情勢には一切関心を示さず、
ひたすら「九州統一」への野心を燃やしていた。
すでに新政府とは最小限の不戦条約を結んでいるのみで、
技術交流や外交使節の受け入れは一切拒絶している。
豊後・大友館にて軍議、夕刻。
大広間に家臣らが集い、軍議が始まる。
主君・大友親治が立ち上がる。
「大内はすでに滅びたも同然。
今こそ太宰府を奪い、筑前を我が物とする時だ」
この言葉に最初に応じたのは、
筆頭家老・吉弘 氏直であった。
「殿、今こそ動くべきかと存じます。
敵は混乱しており、我が軍勢が攻め入れば、
太宰府など三日で落ちましょう」
「うむ、氏直よ。お主の言葉、我が心を後押ししてくれる」
これに異を唱える者もいた。
宿老の臼杵 長景が静かに口を開いた。
「親治様、あまりに早急に事を進めては、領内に不安が生まれますぞ。
南蛮貿易から得た富をまず軍備の整備に充てるのが先と考えますが――」
しかし、重臣戸次 親家は声を強めた。
「長景殿、殿のお考えに賛同いたします。
我らはこの機を逃せば、再び中央に大名家が
返り咲くことにもなりかねぬ。
ここは兵を挙げ、勢いのままに九州全土を平定すべきと存じます!」
臼杵は一瞬言葉を止めたが、
やがて観念したようにうなずいた。
「……ならば、軍資と武器の確保は早急に進めましょう。
南蛮貿易の収益から――火縄銃三百丁、大砲十門を購入済みです。
すでに日向の鉄砲鍛冶が豊後に入り、量産体制に入っております」
大友親治は満足げに腕を組むと、言い放った。
「よし、太宰府は我がものとする。
その後は筑前、筑後、肥前……九州の地を我が軍門に下す!」
軍議はそのまま戦術会議へと移り、
参戦部隊の選定が進められた。
先鋒は戸次隊、続いて吉弘隊、殿は臼杵隊。
火縄銃兵は主に臼杵隊から選抜された
新編成の鉄砲足軽隊がこれを担う。
◇ 太宰府への侵攻
軍議の三日後、大友軍は3万の兵を動員し、筑前へ進軍を開始。
迎え撃つ大内方の残党はわずか五千、
もはや戦局は火を見るより明らかだった。
火縄銃の一斉斉射と砲撃による威圧戦術により、
太宰府は数日のうちに陥落。
大内氏は九州から完全に駆逐された。
技術水準は史実より50年は早いとされ、
タイムワープによって狂った歴史の副作用か?
― 火の国へ、割れる軍議と隠された策 ―
1496年4月・太宰府本陣
春の気配が漂う太宰府の本陣。その奥の間では、
九州を揺るがす大軍議が静かに始まろうとしていた。
部屋の中央に陣取るのは、
大友家第19代当主、大友親治。
その周囲には家老・宿老のほか、
地元の有力豪族や同盟者たちの影が集っていた。
参席するのは以下の面々:
家老:吉弘氏直
宿老:臼杵長景
策士:戸次親家
宗像大宮司:宗像氏貞
正装に身を包んだ親治が、静かに口を開いた。
「太宰府は我が手中に落ちた。
次なる一手、そなたらの意見を聞こう」
■ 吉弘と臼杵の意見分裂
家老・吉弘氏直が、まず言葉を切った。
「殿、肥後の阿蘇氏、かの一族は山岳の要地を押さえておりまする。
いずれ我らの進軍を阻む壁となるやもしれませぬ。
今こそ、打ち滅ぼす時と存じます」
だが、臼杵長景が慎重な口調で反論した。
「――しかし、肥前に控える龍造寺家、
松浦水軍の動きも無視できませぬ。また、背後の伊東氏
を固めずして、進軍は危険と心得ます」
「ふむ……確かに両面作戦は兵力が分かれる」
親治は顎に手を当て、思案を深めた。
■ 宗像氏貞の冷静な意見
その時、宗像の装束を纏った宗像氏貞が静かに口を開いた。
「――その件、拙者より報告がございます」
親治が目を向けると、氏貞は懐から一通の巻物を差し出した。
「すでに、相良氏とは秘密裏に書面を交わしております。
彼らは島津との対立により、我らとの共闘を望んでおります」
ざわっ、と周囲がどよめいた。
「さらに、隣接する伊東氏とは不戦条約を締結済み。
こちらは商人を通じての確認が取れております」
親治の目が細くなる。
「……つまり、南の背後を、すでに抑えたと?」
「はっ。その上で、阿蘇氏への軍事圧力を高めれば、
孤立は決定的にございます」
策士・戸次親家も、にやりと笑った。
「宗像殿の工作、お見事にございます。
ならば、阿蘇侵攻はもはや“安全策”ですな。
もし龍造寺家、松浦家が動けば、
そのまま押し込んで筑前、筑後国も平定しましょう。」
吉弘氏直が声を張った。
「殿、阿蘇惟憲は山岳に籠る知将。誇り高き一族ゆえ、
降伏せぬなら火攻めも辞さず覚悟のほどを」
臼杵長景も渋い顔ながら、頷いた。
「……これほど状況が整っておれば、攻めざるは愚にございます」
親治はゆっくりと立ち上がった。
「背後を封じ、盟を結び、南を押さえた今、
もはや我が九州に敵はなし」
金の扇をパチンと開き、厳かに言い放つ。
「火の国、阿蘇を撃つ。我らが覇道は、止まらぬぞ」
軍議の間に、どこか熱気のようなものが立ち昇っていくのを、
誰もが感じていた。
この決断が、のちの「肥後征伐」として語り継がれる事になる。
九州勢力図




