35話 博多攻略 蝦夷国サイド
ハイペリアン乗組員
坂本リョウマ 日系アジア人 28歳 男性 中佐 戦略参謀
西郷たかお 日系アジア人 28歳 男性 中佐 内政参謀 内政担当
大久保トシオ 日系アジア人 28歳 男性 中佐 外務参謀 外交担当
勝りん太郎 日系アジア人 25歳 男性 少佐 海軍参謀
乾タイスケ 日系アジア人 25歳 男性 少佐 陸軍参謀
福沢ゆー吉 日系アジア人 25歳 男性 少佐 財務参謀 財政全般
ヘレン ダルク フランス人 25歳 女性 少佐 医療参謀 医療技術
服部ハンゾウ 日系アジア人 25歳 男性 少佐 警察参謀 情報捜査
杉原 ねね 日系アジア人 20歳 女性 少佐 教育参謀 教育全般
新政府
104代後柏原天皇
総裁 持明院基規 正三位、権中納言
議定 西郷タカオ、蝦夷國からの出向
参与
持明院 基規 正三位、権中納言
勧修寺 政顕 従二位、権中納言
長尾 能景 越後国の大名
安東 忠季 出羽の大名
朝倉 貞景越前国の大名
有馬 晴純 肥前国の大名
足利 義稙 第10代足利家当主
1495年5月。
南米・ブエノスアイレス。
大西洋に面したこの地に、勝りん太郎少佐は軍港を建設した。
……だが、その後の運用は、アンドロイドたちに
すべて“丸投げ”である。
そして今、1番護衛艦は時空転送によって、
再び日本――蝦夷の小樽港に戻ってきていた。
「はあ……せっかくカリブの海で、のんびりしてたのになぁ」
艦橋のソファにだらりと体を預けながら、
海軍参謀・勝りん太郎少佐は独り言を言った。
飄々とした態度に見えるが、その視線は
海図の上の潮流を正確に読み取っている。
「まったく、人使いが荒いよ。オレの休暇、返してほしいね」
そのとき、クララの連絡が入った。
「総司令からの命令です」
「はいはい、また無茶なやつでしょ?」
「これより、三笠型蒸気船艦3隻を率いて、九州・博多への
攻撃作戦を開始してください」
「……また急だな。オレ、まだコーヒーすら飲んでないんだけど」
「目的は、日明貿易を独占する大内家の影響力を排除すること。
旗艦はこの1番護衛艦。
なお、旗艦は戦闘には参加せず、
後方からの指揮に徹するように、とのことです」
「えっ、戦わないの? つまらないなあ……。」
クララは勝少佐の愚痴に一切反応せず、事務的に続けた。
「今回の航海は、三笠型蒸気船艦の遠洋訓練と軍事演習も
兼ねています」
「……つまり、“ついで”ってことか」
「はい。蒸気エンジンの耐久試験、新型砲の操作訓練、
蝦夷国および新政府の諸大名から集めた水兵たちへの実地教育。
任務内容は多岐に渡ります」
「いろいろ詰め込みすぎだよ。まあ、やるけどさ」
「航路上で、各地から技術者・兵員が合流します。
小樽港からは、技術将校として朝倉家から派遣される朝倉宗滴が乗艦。
さらに途中、土崎港で安藤家水軍の下士官、
柏崎港で長尾家水軍の下士官を乗せる予定です」
「えーと、それって……寄港のたびに調整が必要ってことだよね。
面倒だけど、仕方ないか」
「佐渡沖で新型砲の実射訓練を実施。
その後、博多港まで航海技術の訓練を行います」
「佐渡のあたりなら潮も穏やかだ。訓練にはちょうどいいな」
クララは一拍置いて、最後の情報を伝えた。
「なお、博多沖で、長崎から出港した有馬水軍の下士官を
乗せたガレオン船1隻と合流します。
加えて――この任務には琉球国王が観戦武官として乗艦されます」
「……琉球の王様まで?
本当にお偉いさんが好きだな、うちの総司令は」
勝は肩をすくめると、ようやく立ち上がった。
そして、艦橋の窓から港に広がる青い海を見つめる。
「さて……寄港スケジュールも戦術も、全部頭に入れないとね。
楽じゃないけど、こういうのも悪くない」
彼の口元には、どこか楽しげな笑みが浮かんでいた。
1495年5月下旬・佐渡沖
日本海を南下する3隻の蒸気戦艦。
先頭を航行するのは、第一護衛艦。
その艦橋では――。
新たに着任した、
秘書官オトハ(アンドロイド・女性型・外見年齢20歳)
「訓練海域に到達しました。風向、潮流ともに安定しています。
砲撃訓練の開始が可能です」
勝りん太郎少佐は、海図を睨みながら頷いた。
「よし、各艦に伝えろ。12インチ(305mm)
連装砲 の射撃試験を開始する」
やや眠たげな顔つきながらも、
その声には揺るぎない指揮官の風格があった。
ズドン――!
第一護衛艦の隣を航行する三笠型蒸気船艦から、
轟音とともに火柱が上がる。
模擬標的に命中した瞬間、海面が白く泡立った。
オトハ:
「命中率87%。圧力バルブ正常。砲尾熱量、許容範囲内です」
勝少佐:
「ふむ、上出来だな。
宗滴殿、この短時間に蒸気機関の操作方法をマスターするとは
大したものですよ。」
朝倉宗滴:
「いえいえ、蝦夷国の技術者の方の教え方が
解りやすかったからですよ」
さすが、総司令がスカウトした人物だなと勝は、
思うのであった。
勝少佐:
「予測航路に標的を設定しろ」
彼の目は、次の潮流の変化を読み取るように
海図上を静かになぞる。
数日後・日本海航行中
甲板では、水兵候補生たちの訓練が続いていた。
朝倉家、安藤家、長尾家から集まった若者たちが、
ロープや蒸気バルブの扱いに悪戦苦闘している。
オトハ(艦橋で報告):
「本日の作業習熟度は昨日比+11%。航海日誌への記録、
完了しました」
勝少佐:
「うん、慣れてきたな。しばらくしたら連中にも
甲板任せられそうだな。」
オトハ(やや微笑むような口調で):
「少佐、彼らの士気向上には、
適度な休憩と甘味の支給が効果的です」
勝少佐:
「甘味ね? では、小豆羊羹でも用意してくれ。
あいつら甘党多そうだしな。」
翌日・博多沖合にて
オトハ:
「敵艦を確認。安宅船10隻、関船20隻,小早舟50隻。
港湾防衛配置のようです」
勝少佐:
「つまり、大内家は本気で迎え撃つ気か……
丁度よい練習相手だな」
1495年5月下旬・博多沖合
日本海を南下する蝦夷国の三笠型蒸気船艦。
先頭を行くのは第一護衛艦。
艦橋では、勝りん太郎少佐が航路と潮流の確認を
終えたところだった。
そのとき、通信士が声を上げる。
「艦隊後方より接近する味方ガレオン船1隻を確認。
有馬家所有のガレオン船、琉球国王・尚真陛下が
便乗されています!」
オトハも素早く情報を確認する。
「尚真陛下は、蝦夷国からの正式招待を受けた“観戦武官”として
便乗されています。
視察目的は、“新造、三笠型蒸気船艦隊の実戦運用の確認”。」
勝少佐は頷いた。
「なるほど、琉球も独自の防衛力を考え始めてるってことか。
うちの装備を参考にしたいんだな」
「はい。艦内での非公式ブリーフィングも
希望されているとのことです」
「了解。出迎えの準備を。礼儀を欠かぬようにしよう」
数十分後・三笠型蒸気船艦,艦橋応接室
扉が静かに開き、鮮やかな民族衣装に
身を包んだ尚真王が入室した。
堂々とした姿ながら、目の奥には鋭い知性が光る。
随行の武官と有馬家の士官が控える中、勝が丁重に迎える。
勝少佐:
「ようこそお越しくださいました、尚真陛下。
三笠型蒸気船艦へようこそ。
蝦夷国海軍を代表して歓迎申し上げます」
尚真王は軽く会釈をしながら、視線を艦内の構造に滑らせた。
尚真王:
「これほどの艦が、実際に動いているとは……
まさに目を見張るばかりですな。
視察を許されたことに感謝します。
我が琉球もまた、時代の波に取り残されぬよう、
国防と海運の未来を真剣に考えねばならぬ時期に来ております」
勝少佐:
「陛下のお言葉、まさにその通りです。
今回の演習では、艦砲の精密射撃、蒸気機関の実動試験、
そして航海システムの運用も含まれています。
ご希望があれば、機関室、砲塔、測距室も随時ご案内いたします」
尚真王は微笑み、頷いた。
尚真王:
「ぜひお願いします。視察のすべてが、
我が国の未来の糧となるでしょう」
勝少佐の目が静かに光る。




