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2話 蠣崎氏   改

フィクションですので、年代などは、史実と異なる事がありますので、ご了解ください。

 1492年 4月 蝦夷地


【道南・徳山館】


 道南十二館の一つ、徳山館の主である蠣崎義広は,

 弟の高広から耳を疑うような報告を受けていた。


 蠣崎義広

「アイヌとの交易が途絶えているだと? 

 一体、何が起きておる!」


 蠣崎高広

「はい、兄上……年明け、小樽港に突如南蛮船が到着し、

 そこを拠点に町を開拓。

 見たこともないような巨大な城まで建てて、

 アイヌ人を次々と呼び寄せております。」


「しかもその町、住居や商店が整備されており、

 村ごとアイヌが移住しているとのこと。

 連中は、海産物を驚くほど高値で買い取っているそうです。

 このままでは……我が蠣崎家は潰れます!」


 義広は眉をひそめた。


 蠣崎義広

「南蛮船……何者だ? どこの国の連中だ?」


 蠣崎高広

「情報によれば、日本語を話しますが、

 西洋人や東南アジア系の者も混じっているようです。

 城主の名は橘幸太郎たちばな こうたろう

 ──見たところ、公家の末裔かと……。

 町は高い壁で囲まれ、関所を通れるのはアイヌ人のみとのこと。

 壁の上には、南蛮の“大筒”のような砲が並び……防御は万全です。」


 蠣崎義広は立ち上がった。


 蠣崎義広

「もう、俺が会いに行くしかあるまい!

 これはお家の存亡に関わる!」


 ⸻


【ハイペリアン・司令室】


 クララ(AI)

「総司令。小樽港にて、

 蠣崎義広という者が謁見を希望しております。

 対応は?」


 幸太郎

「蠣崎義広か……松前藩の祖だな。

 確か、算術に長けた豪族だったはず。使えそうなら、

 東北方面を任せても良いかもな」


 ⸻


【札幌城・大広間】


 天守閣の大広間、上座の中央に幸太郎。

 その左右には、大久保外務参謀と西郷内政参謀。

 壁際には戦闘用アンドロイドが20体、整然と並び、

 威風堂々たる空気が漂っていた。


 ⸻


【小樽町・関所前】


 義広は壁の巨大さに驚愕していた。


 蠣崎義広

「こ、これは……鉄か? こんなもの、

 我らには到底作れぬ……。しかもこの大筒、ヤバい。マジでヤバい……!」


 恐る恐る関所を通り、彼らが乗り込んだのは、蒸気自動車だった。

 ――小型の機関車にタイヤをつけたような乗り物である。


 舗装されたアスファルト道路。統一されたクリーム色の街並み。

 義広たちは、その近未来的光景に、言葉を失っていた。


 わずか数分で札幌城へ到着。城門前には、

 左右200人ずつのアンドロイド兵が整列。

 顔面蒼白になりながらも、義広は大広間へと案内される。


 ⸻


 案内役

「蠣崎殿、ご到着です」


 幸太郎(中から声)

「御通しせよ」


 戸が開き、義広は深々と頭を下げる。


 幸太郎

「苦しゅうない。頭を上げよ」


 蠣崎義広

「初めまして。蠣崎義広と申します。

 橘様にお目通り叶い、恐悦至極に存じます」


 幸太郎

「我は橘幸太郎。

 この地の国王だ。……して、用向きは?」


 蠣崎義広

「アイヌとの交易が断たれ、我が家はこのままでは滅びます。

 どうか、以前のように交易を

 許可していただけませんでしょうか?」


 幸太郎はゆっくりと立ち上がり、皮肉な笑みを浮かべた。


 幸太郎

「そなたらが、海産物を安値で買い叩いたのが原因ではないか?

 我々の責任ではないな。

 ……まあ、どうしてもというなら、

 取引してやってもいいぞ。売価は今までの――100倍だ」


 悪意を込めて、にやりと笑う。


 蠣崎義広

「ひゃ、100倍!?

 ご、御慈悲を……せめて、もう少しだけ……」


 幸太郎は大久保に目配せする。


 大久保(外務参謀)

「私は大久保、交易担当です。

 蠣崎殿とは、良い関係を築きたいと存じます。

 特別に、10倍の価格でお譲りしましょう。

 ただし、交渉は今後すべて蠣崎殿に一任。

 他の豪族たちとの取引も、そなたを通して行ってもらいます」


 蠣崎義広

「う……承知しました。

 いったん戻り、他の豪族と相談いたします」


 義広は徳山館へ戻り、道南十二館の豪族たちを招集。

 協議の末、しぶしぶ条件を受け入れることとなった。


 ⸻


 数日後、札幌城にて正式な取引証文が締結される。


 義広はさらに、主君、安東忠季あんどう ただすえ

 が治める檜山城へ赴き、事の次第を報告。


 安東忠季

「なるほど……これは我が家としても無視できぬ事態だな。

 むしろ橘殿と親交を結ぶほうが得策かもしれん」


 ⸻


【蝦夷地・函館村】


 村長のカムイが開いた会合では、

 和人商人の買い叩きに対する不満が爆発していた。


 そこに、若者が小樽港の噂を語り始める。


 若者

「苫小牧の親類の村では、米の支給を受けて

 賦役に参加してるって話です。

 しかも、三食付きで待遇が良いらしく、

 村ごと移住を決めたそうですよ。

 村長、交易の話をしてみませんか?」


 カムイ

「そうだな。セタナ村のタナサカシ村長にも声をかけ、

 小樽港へ行ってみよう」


 ⸻


【小樽港・橘屋敷】


 迎えたのは、内政担当アンドロイド――徳川秀忠。


 徳川秀忠

「よくお越しくださいました。

 私は小樽港長官、徳川秀忠です。ご用件は?」


 カムイ

「はい、松前との交易が年々厳しくなっておりまして……。

 ぜひこちらと公正な取引をさせていただきたく思います」


 徳川秀忠

「なるほど。では、和人との過去の取引記録を見せていただけますか?」


 提示された証文を見た秀忠は、即座に判断を下す。


 徳川秀忠

「これは酷い……。我々ならその10倍の価格で買い取りましょう」


 カムイとタナサカシは目を見開いたが、秀忠の説明に納得。


 交易証文が交わされ、翌週から正式な交易が開始された。

 さらに、両村から約1000人が賦役に参加、札幌城の建設を支援。


 その後、移住者は500人に達し、漁業者も多数含まれていた。

 彼らには、漁業用蒸気船の運転技術が教えられ、

 のちに漁獲量が劇的に増加することになる。


──それは、また別の話だ




挿絵(By みてみん)































読みづらい文章ですみません。分かりやすい文章を心がけて参りますので、よろしくお願いします。


誤字、脱字など、ご指摘頂ければ幸いです。

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