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むしょう提供。

ファルとコンビを組んでから数日が経った。


『よぅし出来た☆』


突貫してボロボロになってしまった装甲車がファルの手とアンドロイドの補助によって今は綺麗になっている。

窓ガラスは新しい強化ガラスに。剥がれた装甲はより頑丈な物に。内部は細部までメンテナンスされ。塗装を塗り直し。

そのおかげで装甲車はボロボロになる前よりも綺麗になった。


『休憩休憩☆』


改造白衣を脱ぎ作業着に着替えてもヘルメットは脱がなかったファルは修理を終えると近くにあった椅子に座り込み休憩する。ヘルメットを操作すると液晶画面の部分が蓋のように開き隙間が開く。ファルはその隙間からストローを通し用意しておいた水を飲む。


「やっぱり人間なんだね。」


ファルから少し離れた位置で椅子に座り携帯機でゲームをしていたベータは水を飲むファルを見て呟く。


『まだ疑ってたの☆』


ベータの声が聞こえたファルはヘルメットを閉じて空になった容器を近くのゴミ箱に捨てる。


『正真正銘ボクは血の通った人間だよ☆』


笑顔を表示するファルにベータは今だに疑いの眼差しを向ける。


『さてと☆ これ返しに行かないと☆ 30分後に出かけるから用意しておいてねベータクン☆』


そう言ってファルは着替えとシャワーを浴びに行こうとした。


『ん?』


その途中でファルは足を止める。


「何? どうしたの。」


足を止めて自分のウォッチを見ていたファルにベータは声をかける。


『…予定変更☆ ベータクン新しいお仕事が来たよ☆ 情報送るね☆』


そう言ってファルはウォッチを操作してベータの方へと情報を転送する。


「え? 何。」


送られてきたのはとある事件の資料だ。


「…行方不明?」


それは多数の行方不明者のリストだ。年齢性別などバラバラであり唯一の共通点は人間である事だけ。


「結構いるじゃん。」

『今からその事件の調査に向かいまっす☆』

「今から?!」


資料を見てかなり大きな事件だとベータでも分かる。大きな事件に介入し大活躍をして解決する事を夢見るベータだが、いきなりそんな事件に関わる事に興奮よりも困惑の感情が勝る。


「いやこれ、おれ達が関わっていいの?」


思わずそう言ってしまうほどベータは戸惑っている。


『もちろん☆ むしろボク達にはこういう事件がたまに来るんだよ☆』

「どういう事?」

『だってボクは異例案件部にも所属しているからね☆』

「何それ。聞いた事ないけど。」


以前ファルが言っていたがベータはすっかり忘れていた。


『そりゃあボクしか、いやあと君しか所属していないからね☆ 実質ボク達だけの部署だよ☆』

「えー何それ。何をするの?」

『こういうたらい回しにされた未解決事件を調査してあわよくば解決するのが仕事だよ☆』

「たらい回しって何?」

『色んなヒト達が解決しようとして出来なかった事件を押し付けられたって事☆』

「え。」


ファルの話にベータはまさかと思い行方不明者が失踪した日付を見る。


「一年前?!」

『そう☆ 行方不明者の家族に急かされているっぽいからそれっぽく調査しておけってさ☆』

「つまり面倒ごとを押し付けられたって事じゃん! やだー。」

『やだでもやるのがお仕事だよ☆ じゃあボクシャワー浴びてくるね☆ 30分後に出発だよ☆』



◆◇◆◇◆



「何も無し。」

『同じく〜☆』


その後、行方不明者の姿が最後に目撃された場所で書き込み調査を行なっていたが、新しい情報は何も得られなかった。


「やっぱり一年前の事件じゃ何も分からないよ。」

『でも調査しておかないとそれはそれでめんどいぞ☆』


ベンチに座り休憩している2人。


「もし。」


そんな2人に話しかけてきたのは1人のヒューマロイド。


「何?」

「もしや行方不明者を探している保安部の方ですかな?」

「そうだけど。」

「おぉ良かった。実は情報提供をしたくて。」

「え。本当?」

「はい。しかしここでは人目がつきます。あちらで話しても?」

「分かった。行こファル。」

『うん☆』


捜査が進展すると思ったベータは言われるがままにそのヒューマロイドの後をついて行き薄暗い路地裏に入った2人。


「それで情報って」


ベータが話を聞こうとした時、2人の後ろから数人のヒューマロイドが襲いかかって来た。


「え?」


接近に気がつくのが遅れ、ベータとファルは拘束される


『えい☆』


前にファルは小さな機械を作動させる。すると小さな機械から大量の灰色の煙のようなものが一気に放出し路地裏を一瞬で煙のようなもので埋め尽くす。


「あれ?」

「ぎゃ?!」

「何!?」


煙を浴びた瞬間にヒューマロイド達の動きが悪くなりそのまま地面に倒れる。


「こ、これって。」


ベータも例外なく倒れてしまった。


『前に君が飲まされたウイルスを改良したものを霧状に散布させたよ☆』

「は?!」

『ベータクンってばあんな見え見えな罠に引っかかるなんておまぬけさん☆』


人工の濃い霧に包まれた状態の為ベータからではファルのヘルメットすらよく見えない。

それを分かっているのかファルはベータによく見えるように屈む。表示されている表情は不機嫌そうなものだった。


『護衛としてダメダメだぞ☆ だからこれはおしおき☆ 改良版だからすぐに動けるようになるから安心してね☆』


そこまで言って笑顔の表情になる。

それを見てベータは悔しそうにファルを見上げた。


『あっもしも〜し☆ 今送った座標に応援ちょうだい☆ …襲われたからだよん☆』


ファルはその視線を感じながらウォッチで保安部のものに連絡をとっていた。



◆◇◆◇◆



その後。


ファルの言う通り前回よりも早く動けるようになったベータはベンチに座り事後処理を行っている保安部の者達の動きに見飽きて、ふと気になっていた事を試しに隣に座っているファルに聞いてみた。


「あいつら何なの?」


あいつらとはもちろん襲って来たヒューマロイド達の事だ。今は拘束されて連行の為に車に乗せられようとしている。


『さて誰でしょう☆』


ファルにも正体は分からないようだ。


『まぁ多分ボク狙いかな☆』


しかし目的は予想できていた。


「何で?」

『ボクってば色んな所から恨み辛みられてるんだ☆ だからこんな風に外に出ただけで襲われるから外に出る時は護衛が必須なの☆』

「なるほど。」


それを聞いてベータは納得した。ファルの言動ならば確かにあちこちに恨みを買われてもおかしくはないとベータは身を持って知っていた。


『さて☆ そろそろ休憩は終わりにして聴き込み再開しよ☆』

「えー。」

『文句は言わない☆ ある程度やらないと苦情が来るって言ったでしょ☆』


そう言ってファルが立ち上がった時、少し離れた場所にいた1人のヒューマロイドをじっと見た。男性の姿をしており見た目の年齢は中年代くらい。挙動不審であり保安部の者達から身を隠しながらもこちらの様子を伺っていた。そしてファル達を襲って来たヒューマロイド達が拘束されて保安部の車の中にいる姿を見ると慌てた様子でどこかへと走り去って行く。


『追いかけるよ。』


ファルはベータの返事を聞く前に走る。


「え? ちょっと待って!」


慌てたベータはベンチから立ち上がり足の速いファルを追いかける。

追いかけて来るファルに途中で気がついた男は逃げようとしたが、距離はどんどん詰められていき最終的にはファルに肩を掴まれて捕まってしまった。


『ぜぇ、ぜぇ。…はぁいこんにちは☆ 保安部を見て逃げるなんてまた何か悪いことでもしちゃったのかな?』


走った事で乱れた呼吸を整えたファルは口調を戻してそう簡単に逃げられないよう両手で男の両肩を掴む。


「えっ誰その人?」


追いついたベータは男とファルを交互に見る。


『前科ありの人だよ☆ 確か名前は、クロククン☆』


ファルが男ヒューマロイドの名前を言い当てた途端。


「助けてくれ!」


男ヒューマロイド、クロクは叫んだ。


「俺は利用されているだけで、運転をしていただけで、頼む殺さないでくれ!」


必死に懇願するクロクを見たベータは疑いの視線をファルに向ける。


「うっわ。」

『ちょっとベータクン何その目? まるでボクがヒト殺しのようじゃないか☆』

「やりそう。」

『やりそうって何?! 違うからね☆ 別に好き好んでやってるわけじゃないからね☆』

「…そういえば殺しをやったって言ってたね。」

『それはそうだけ』

「殺さないでくれぇぇぇぇ!!」

『うるさい☆ 君のせいでベータクンに変な誤解を与えちゃってるんだぞ!』


怯えて叫ぶクロク。

クロクの肩を掴んで逃がさないようにしているファル。

そのファルからじわじわと距離を離していくベータ。


それを遠目で見るだけで手助けなどをしない保安部職員達。

その理由は1つ。関わりたくないのだ。

騒ぐ3人を止めるヒトは居らずただ黙々と目の前の仕事に集中するようにしていた。

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