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ウェディング・バースト。

保安部本部の最上階にある会議室で5人集まっていた。正確にいえば実体の無いホログラムだがそれでもその5人は顔を合わせていた。

5人の共通点は保安部職員の制服の上にマントのようなものを身につけている事とヒューマロイドである事。

そして全員A9級の保安部職員だ。


「では本日の定例会議を行う。まず最初は最近出回っている部品についてだ。」


5人の前に立体映像が映される。何かしらの機械のようだ。


「これは人間の体内に組み込み外部からの命令で効果が発揮する。人間をアンドロイド同様に動かす事が出来るようだ。」

「へー。そうなのか。」

「覚えていないのかディヴァイディッドゥバイ。これの実例を見ただろう。」

「そうだっけ?」

「スーシ女学院の件でこれが使われたと報告があったぞ。」

「あぁ! ファルのやつか!」


ファル。

その名前が出た途端5人の内の1人が嫌そうな声を上げた。


「またファル。本当に嫌。」


声を上げたのは裏地に華やかな花柄の黒いマントを身につけている少女。


「プラス、ご不満か?」

「不満よ、マイナス。」


うんざりした様子の少女、プラスにちょっかいをかけてきたのはテンガロンハットをかぶりポンチョを身に着けている青年、マイナス。


「あいつのあのふざけた態度。思い出しただけで苛つく。」

「俺さんはファルの事好きだぞ。あいつのおかげでコレクションがまた増えた。それにお前はいつもイライラしてるだろ。」


図星なのかプラスはそっぽを向く。

プラスの反応にマイナスは慣れた様子で肩をすくめている。


「イコール殿。その機械の用途は大体分かりましたが、それが今回の議題に上がった理由は何ですかな?」


話を戻そうとふくよかな体型で片眼鏡とファーの付いたマントを着けた男性は5人の内のまとめ役の男、イコールに話を振った。


「この機械がゴウガシャ製品である事が判明した。」


イコールの発言によってふくよかな男性は目を見開く。


「それは確かなのですか?」

「あぁ。今までの物と類似する点が多い。間違いないだろう。」

「なぁタイムス。ゴウガシャってなんだ?」


イコールとふくよかな男性、タイムスの話に割り込んできたのはディヴァイディッドゥバイだ。


「ゴウガシャとは違法な武器やこういったヒトに有害な機械を作り出し販売する犯罪組織の名前だよ。」

「へー。そんなのがあったのか。」

「いや情報は共有されてるでしょ。確認しておきなさいよ。」


呑気なディヴァイディッドゥバイにプラスは呆れた様子で口を挟むがディヴァイディッドゥバイは気にする様子は一切無い。


「でさ。その、ゴウラシャがどうしたんだ?」

「ゴウガシャだ。最近出回っている数が多い。関わっている者を捕らえようとしても根本的な解決にはならない。至急新たな対策を練らねばならない。」

「???」

「危ないものを売ってるヒト達がなかなか捕まらなくて困ってるからみんなでどうにかする方法を考えようって事さ。」

「なるほど!」


イコールの話が理解できず首を傾げているディヴァイディッドゥバイにタイムスはディヴァイディッドゥバイでも分かるよう説明をし直した。


「警戒網は依然とS.C.S様が張っているが、他の犯罪を見逃すわけにもいかない。S.C.S様の負担を少しでも軽くする為に諸君、各々対策を考えてくれ。有効な手であればS.C.S様の許可を取り次第すぐに実行に移してくれ。」

「分かった!」

「了解。」


ディヴァイディッドゥバイとマイナスが返事をし、プラスとタイムスが頷いたのを見てイコールは次の議題に移る。


「次の話もかなり厄介なものだ。まず初めに、ファルとベータの参入を考えている事を伝えよう。」


イコールの話に3人は緊張を帯びた表情を見せた。


「おっ。ファルもいるのか。ベータは、あいつか!」


ディヴァイディッドゥバイはいつも通りだった。



◆◇◆◇◆



「なぁファル。人間ってどうして結婚するんだ?」

『あらやだ哲学?』


ソファにだらけて座っているベータとファルは暇そうにしていた。


「哲学ってのは知らないけどどうしてわざわざ面倒な準備をしてやるのかなって。」

『ん〜☆ ヒトによって違うだろうし、ボクこれまでの人生で恋人すらいなかったからあんまし的確な答えは出せないけど、強いて言うならそんな面倒な事をしてでも一緒になりたいヒトがいるって事でしょ☆』

「ふーん。」


2人が話している間、周囲は慌ただしく動いていた。

厳重な警備に不審人物及び不審物の有無の確認。念入りな準備を進めていた。

張り詰めた空気の中、ベータはいつもと変わらない様子で話を続ける。


「結婚の準備ってこんなに大変なんだね。」

『今回は特別なんだよ☆ だって初の人間とヒューマロイドの結婚式なんだから☆』


2人の今回の仕事は護衛。ナンバシティ初の人間とヒューマロイドの結婚式を誰にも邪魔されずに終わらせる事だ。


「それがなんで特別なんだ?」

『まずぅ、新郎はナユタコーポレーションの社長サン☆ そして新婦は社長サンを幼い頃から支えてきたお世話をしてきたヒューマロイド☆ この時点で話題沸騰だよ☆ きゃあ☆ 素敵☆ なんてロマンチック☆ 長年の恋が叶ったのね☆ ってさ☆』

「ふーん。」


聞いておいて興味無さそうな態度をとるベータに構わずファルは両頰辺りにそれぞれ手を当ててときめいているよう顔を表示して話を続ける。


『だけどさ☆ 結婚の発表をした時、ナユタコーポレーションにたくさんの脅迫状とか殺人予告、誹謗中傷のメールがわんさか届いたみたいだよ☆ ヒューマロイドと結婚するなんてナユタコーポレーションの社長は異常者だってさ☆』

「え?! なんで?」

『いつの時代でもみんなとは違う事をすれば目をつけられて攻撃されちゃうの☆ 同調圧力ってやつ☆』

「うへぇ。だからって悪い事をしたら駄目じゃん。」


ファルから聞かされる結婚式の裏側にベータはドン引きしている。


『その通りだよベータクン☆ そもそも許可を出したのはS.C.Sサマなんだから他のヒト達があれこれ文句を言う権利なんて無い無い☆ だからメールを送ったヒト達は全員特定されてそれ相応の罰を与えられている最中☆』


そこでファルは真剣な表情に切り替える。


『だけどいつの時代でもでっち上げた使命感に酔って暴走するアホはいるからね☆ だからこうしてナユタコーポレーションの社長サンの命令で厳重に警備をしてるんだよ☆』

「…え? どういう事。」

『ん? ボクおかしな事言ったかな☆』

「いや、なんで社長が保安部に命令出来るの?」

『あ〜そういう事☆ それはね、ナユタコーポレーションの社長サンがA7級だからだよ☆ 保安部でもそこそこ偉いヒトなの☆』

「えぇ?!」


新たな情報にベータは身を乗り出すくらい驚く。


「どういう事?! 社長なんでしょそのヒト!」

『…あのねベータクン☆ ナンバシティに住んでるヒト達の半分以上が保安部に所属している事も、ほとんどの企業とか職場が保安部の傘下だって事も、重要な役職に就くには保安部に所属するのが最低条件だって事も知らなかった?』

「そうなの?! 今知った。」

『マジかよベータクン☆ 君どんだけ偏った勉強をしてきたんだよぉ☆』


呆れた表情を映して額辺りに手を当てて上を見上げるファル。どうやらナンバシティでは初歩的なまでに常識的な事のようだ。


『ナユタコーポレーションの社長サンは製薬部に所属しているの☆ 社長としても保安部職員としてもちゃんと成果を出してるからこそこんな事が命令出来るくらい偉くなったんだよ☆』

「へー。」

『そんな社長サンとお嫁サンの結婚式を成功させる為にボク達もがんばらないとねベータクン☆』

「いつも通り悪い奴らを倒せばいいんだね。」

『そうそう☆』

「分かった!」


変わらずソファにだらけて座っている2人の会話を聞いていた保安部職員達は揃って心の中で思っていた。


じゃあ手伝え。と。


『ボク達、暴徒を鎮圧する係だから体力は温存しておかなきゃいけないの☆』


そんな心の声に対してファルは笑顔を表示して大声で返事をした。

内心の声に気づかれた事に気づいた保安部職員達は一斉に気まずそうに2人から視線を逸らした。

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